武功11 礎
山越出兵にあたり、部隊の編成が行われた。「あの部隊はどうする?」孫策の問いに張昭が応える。「それなら、呂蒙が適任かと」「そなたが言うならそうするとしよう」会議後、周瑜が「呂蒙って、例の?」孫策がうなずくのを見て、続ける。「お前の人材発掘は確かだからな、間違いはねぇんだろ?」「美周郎が指導してくれればな」「そこまでのレベルに来たらな」「おー、おー、そりゃ楽しみだ」そういう経緯を経て、子明にも伝えられる。「呂蒙、別部司馬として部隊長に任命する」「謹んでお受けいたします!」それから山越との戦いにおいて陽動を命じられる。「頼むぞ、隊長」歓迎してくれる者がいる中で、その逆の者もいる。(なんで、あいつが・・・?)子明もそれを感じ取っていた。(今度の任務、失敗するわけにはいかねぇ!)「権、お前にはここ(本陣)を守ってもらう」「守備、ですか」孫権は少し不満そうな顔をするが、「前に進むためだ、しっかり頼むぞ。それと・・・」「それと?」「周泰を残しておく、念のためにな」周泰、寡黙ながらその武は孫策軍の中でもトップクラスを誇る。その周泰を残すことに孫権は疑問を感じる。「周泰?守りに不安があるのですか?」「相手が相手だ。何してくるか、わからねぇからな」(それだけ?他になんかある・・・)孫権が眉間にしわを寄せたままにしていると、孫策は困り顔で口を開いた。「まったく、策略だとお前に勝てねぇな。 ・・・周泰にはお前の護衛隊長として働いてもらう」「護衛?」「俺になんかあった時のためにな」「なんかあった時、って」「ねぇとは言わせねぇぞ、親父がそうだったんだからな」黙ったままの孫権を見ながら、孫策は続ける。「俺が死んだときは、お前が継げ」「あ、兄上っ!?」「安心しろ、ここ2,3年のうちって話だ」「でも家督なら息子に・・・」「いいか、こんな乱世に年端のいかねぇ子供に押し付けられるか」「それならしっかり補佐して・・・」「そんなことしてるうちに曹操にやられるぞ」「それは自分が継いでも同じ・・・」「権、もっと自分を信じろ。 これからはこの地を守る戦いになるんだ、 お前にはその才能がある」「兄上・・・・・」「お前がこの国の礎になるんだ」「兄上、それほどまでに・・・」「親父の想い、俺たちが叶えるぞ」「はっ、兄上」