東野圭吾『真夏の方程式』
シリーズ屈指の感動作らしいので読んでみましたがイマイチでした。ガリレオ湯川が苦手な少年との交流するシーンから始まり、舞台は海洋開発で揺れる海辺の小さな街、そしてそこで起こる元刑事のナゾの事故死と、冒頭から盛り上がるのですが、半ばで息切れ、あっけなく終わりを迎えます。ネタバレになっちゃいますが、この作品で起こる事件自体は大した事無いです。何のひねりもない、いまどき2時間ドラマ並みの事件です。ですから、謎解きや犯人当てといったミステリーの醍醐味はあまりありません。かといって小説として感動的なドラマを読ませてくれるわけでもありません。感動的ドラマに画くには人物描写が薄いので無理があります。そもそも、この作品は全体的な印象として荒削りで未加工なところが多いような気がします。これはテレビドラマ化か映画化をする事を前提に書かれたということなんでしょうね。設定を改変する余地を多めに残しておけば、テレビドラマ化映画化しやすいですからね。そういうところはさすがベストセラー作家、小説家としての才能だけでなく商売上手なビジネスマンとしても優秀でなければならないようです。ちなみに、本作は映画化されてこの夏公開されます。できることなら、せっかく残した改変の余地を有効活用して、感動作にしてもらいたいものです。