テーマ:本のある暮らし(3220)
カテゴリ:ミステリー
無駄な描写がない読みやすい文章のうえ、人間心理を深く描いています。 ![]() 初めて読む作家さんで、読み始めた時「うまいな~」と思いましたら、 京都府立大学で文学部文学科で「国文学・中国文学」を専攻した方で、 現在高校で国語教師をしているそうだから、そうか、と納得しました。 一見単純そうな筆運びなんですが~、どんどん違う方へと展開します。 そして、最後のどんでん返しに、「えっ?」と途方にくれました。 粗筋は… 10年前父親を殺され、母親も失踪、親戚に別々に引き取られた姉妹。 高校を卒業後、二人は親戚の家を出て、同じ街に住みながら、 安いファミリーレストランで年に数回会うだけだった。 二人とも派遣社員で待遇の悪い愚痴を言ったりするだけで、 お互いの深い暮らしには触れなかった。 姉は美桜(みお)、妹は妃奈(ひな)という名前だった。 妃奈は綺麗で優しく、美桜は歯並びが悪いことで劣等感の塊だった。 美桜は母方の祖母に引き取られたが、治療費は出してくれなかった。 妹の妃奈は保険外交員として働いていたが、派遣だから給与は安かった。 姉の美桜にしても大学の事務員だけど、やはり派遣だから同じようなもの。 二人ともいつ派遣を切られるか~びくびくしながら暮らしていた。 そんなある日、警察から妹が殺されたことを知らされた。 押しかける報道陣、美桜は父親が殺された時のことを想いだす。 「人を殺してみたかった…」犯人の高校生が言った言葉。 お父さんは、誰でもよかっただけで、殺されたの?美桜の心の底に潜む 激しい怒り、苦しさ、歯並びだって…父親が殺されて貧しくなったから。 そして、保険外交員だった妃奈にも「生前保険金殺人」の疑いがかけられる。 歯並びが悪いから、と中学生の頃から笑われていじめられていた美桜。 美貌の妹を羨ましいと思う気持ちはあったが、妹の潔白は信じていた。 すごくスピード感があって、ぐいぐい引っ張られるように読みました。 初めに無駄のない文章と書きましたが、もう少し無駄もあった方がいいかな? そんな物足りなさも感じた「レモンと殺人鬼」でしたが、レモンの意味は? と疑問に思う方は、ぜひ読んでみてください。 人の心に巣くう劣等感や優越感…悪気がない言葉にも人を傷つけること、 「いじめ」が多発する今の時代の教師だからこそ書いたのでしょうか? そんな素朴な疑問も感じた作品でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.05.17 05:42:55
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