カテゴリ:美味しいお店
はじめて『大阪料理 浅井』をお読みになる方へ
『大阪料理 浅井』 episode1 が第一部となりますので、ご面倒ですがそちらからお読み頂く事をお勧めいたします。 『大阪料理 浅井』 episode1 『大阪料理 浅井』 episode2 『大阪料理 浅井』 episode3 『大阪料理 浅井』 episode4 『大阪料理 浅井』 episode 4の続きです。 五皿目がやってきた! 大将が静かに僕の前に皿を置く…。 「な・ナ………!」 か、固まった! [ Ctrl, Alt, Del ] みっつのキーを押してくれ!!! 混乱している…。 情けないが… 僕のメモリーに書き込まれていないものが、堂々と皿の上にのって「だぁははは…わかるまい?」と語りかけてくるようだ。 確かに、わからん。 メモリーにもハードディスクにも書き込まれてはいない。 残念なことに何処の引きだしにも入ってはいない。 皿の上に、何かが盛り付けてある。 そして、その上から白いソースみたいなものが、覆いかぶさるように綺麗にかかっている。 んんん~ 一番上にのっているは分かる。 青梗菜だ! 真っ青に茹でられた形の良いチンゲンサイが静かに横たわっている。 なんだ? この白いものは……??? 完全にフリーズしている僕を見て 大将が口を開く… 笑みであるが、これまでの笑みとは違う。 親近感を感じる笑みである。 包み込むような優しい笑顔でこう言ったのである。 「これは、豚の角煮を、お粥で炊いてあります。さっぱりしてると思いますので、どうぞ召し上がってください」 「お…お粥ですか?」 …と聞き返す。 微笑んで大きく頷くと僕の前から去っていった。 そうか!!! そうだったのか…。 この大将の心ある説明で、[ Ctrl, Alt, Del ] キーが押され… タスクマネージャが起動し、ツールバーのシャットダウンから、みごとに再起動できた。 再起動してリフレッシュしたせいか… もう、何も言うことなどない。 完敗である。 豚の角煮にお粥…!? なんと言う大胆な発想なのだ。 箸をとって真っ白なお粥がかかってる塊の左端に箸をつける。 柔らかい……。 箸が肉に軽くスーっと入り皿にあたる 小さめに切った肉をとるとホロホロっとした感じで肉が揺れる。 口に入れると、豚の三枚肉のとろける様な舌触りが口の中いっぱいに広がる。 肉には、しっかりとした味が染み込み… お粥のさっぱりとした風味が渾然一体となって調和する。 お粥と言っても、かなり重湯に近い状態だ。 ご飯粒は、かすかに感じる程度まで溶けている。 恐らく普通のお粥の炊き加減であるなら、米粒を舌で感じる分だけ邪魔になるに違いない。 塩は、ほんのかすかに感じるか感じないかと言う微妙な加減だ。 お粥が完璧なソースになっているのだ! 肉には、しっかりとした味が含まれている。 驚くことには… お粥には、肉を煮た醤油の色が全くといってよいほど出ていないのだ。 普通なら、肉から染み込んである味がでて、お粥に茶色の色が着くはずなのだが…。 それがない! 絶品である! 青梗菜の彩り良い。 シャキっとしたシャープな歯触りとサッパリ感が見事に調和している。 余分なものが一切ない… これぞ引き算の料理の真髄ではないか。 *-*-*-*-*-* ジョエル・ロビュションよ。 フェラン・アドリアよ。 世界の巨匠等とおだてられている場合ではない! 日本の肉料理は、ここまで来ているのだ! 考えてもみよ。 日本人の一般庶民が肉を食いだしたのは、明治になってからだぞ。 江戸時代まで肉らしい肉を食ったのは、ごく僅かな人間だ。 未だに真面目な坊さんは、肉なんか食ってはいない。 肉を食わない人間が肉料理など出来るわけがないのだ! 日本人が肉を食いだしてからの歴史なんぞ 西洋人が肉を食いまくっている歴史から比べれば ほんの瞬きをする位の一瞬でしかないだろう。 西洋人は、肉料理の先駆者なのだ。 それなのに それなのに…。 日本料理の肉料理は、もうここまで来ているのだ。 ヤバいぞ! ちょいヤバ! なんて言ってる場合ではない。 米でソースを作るとは… ジョエルもフェランも思いもつかないだろう。 ましてや… 日本料理にメイン料理無し…等と言ってる場合ではない。 ちょこちょこ食べていたら、食事が終わってたとか… いつになったら、メイン料理が来るのかと思ったら、いつのまにかご飯とお吸い物が出てきて終わっていました。 なーんて、いわれるような店も確かにあるだろう。 でも、違う。 しっかりとしたメイン料理を作る素晴らしい料理人もいるのだ。 *-*-*-*-*-* 柔らかな目線を感じる。 その方を何気にみると… 大将がこちらをみて満足そうに微笑んでいる。 それをみて、僕も自然と笑みがこぼれるのだ。 まるで… 花形満と星飛雄馬の戦い終わった後の友情が芽生えたような瞬間である。 実際、戦った訳ではない。 ず~~~と、オイラのやられっ放しってことなのだが… それにしても、美味い! 夢中になって食べてしまった。 大将がゆっくりと、歩みよってくる。 カウンターを一目見て、サービス係の若い衆に新しいお茶に取り替えるように静かに告げると… 「考えていた、お料理はここまでで、後はデザートになりますが、何か他に召し上がりたいものは、ございますか?」 …と静かに柔らかく僕に聞く。 「本当に美味しかったです。満足致しました。このままデザートをお願いいたします」 …と、感無量で答えていた。 この後、デザートを頂いたのだが…。 何を食べたか思い出すことが出来ない。 美味しかったことだけは、憶えているのだが…。 満足である。 なぜか関西の味が好きなのだ。 だしをふんだんに使い、しっかりしたベースの上に味がのる。 *-*-*-*-*-* 若い頃は、関西の”うどん”に感動して、食べたくなるとわざわざ新幹線にのって京都まで”うどん”を食べにいった。 京風や関西風の看板を出しているうどん屋は、首都圏にもある。 だが全く違う! 時間を作りお金をかけても、食べに来て良かった~! …と底知れぬ満足感に浸れるのだ。 新幹線等の交通費分で十分にフランス料理が食べられるにしても、一杯の関西のうどんの方が魅力的に感じる時がある。 *-*-*-*-*-* お会計をお願いする。 すると、大将がすーっとやってきて、9千いくらと言った。 えぇ~! 安い! アルコールを飲まなかったにしても… 思っていたよりも安かった。 このお料理を銀座界隈で食べたなら、もっとすると思うのだ。 1万円をおき、お礼を言って、入ってきた”のれん”を再びくぐり外へでる。 背中に大きな声が心地よく響くのだ。 「ありがとうございました」 嬉しい出会いが出来た。 こんな良い店と出会う事ができて幸せだ。 なぜか、大阪が好き! 活気がある。 バイタルだ。 生命力を感じる街。 あれだけの地震があっても、へこたれず! 優しさと大きさを持ち合わせている。 歴史もあり懐(ふところ)の深さを感じるのだ。 また、行こうと思う。 誰か自分の大切な人を連れて…。 あとがき エピソードが5部にもなってしまいました。 このエピソードを書くにあたって、ご協力頂いた皆様にお礼を申し上げます。 多大なるご協力を誠にありがとうございました。 食べ歩きやお料理がお好きな人がもし訪れたなら。 きっと、その味だけではなく、他の何か感じる事が出来るお店だと思います。 書いている途中に、私が行ったお店が支店であったことがわかりましたが、あれが支店なの??? …と思わずにいられない芯がしっかりと通ったお店です。 私が行ったお店の大将も凄さを感じたが、本店の大将とはどんな方なのか非常に興味が沸いてきた次第です。 是非、浅井氏本人と『お会いしてみたい…』と思う今日この頃。 最新情報によると、その大大将の浅井氏はすでに引退し、趣味で完全予約制の8席位のお店を開いているという。 そして、そのお店は、大阪で最も予約の取り難いお店だという。 『大阪料理 浅井 きがわ』にも是非、行ってみたいのだが…。 その大大将のおられるお店に行ってみたい。 そのお店の名前も住所も電話番号もわからないのだが…。 和食をやっている後輩が数人いるが、いつも薦めるお店である。 「大阪心斎橋に、『大阪料理 浅井』というお店があるから、大阪に寄れそうな時は、行ってみなさい…」 …と。 心の料理を志す者なら、必ず伝わるはずだと思う。 そして、それを感じる事が出来たなら、人生観までもが変わる可能性すらあると思う。 心無くして、あの料理は作れず…。 ネットで見ていたら、『大阪料理 浅井 きがわ』に行った感想が書かれているページを見つけたのでご紹介します。 豚の角煮をお粥で炊いた『豚の米煮』の写真ものっているので、ぜひ見てください! そして、センス良くお洒落な感じで『食べ歩きやお料理』をテーマにしたブログです。 ::美's Profile::さんの『大阪料理 浅井 きがわ』のページ 大阪料理 淺井 (今は、名前も少し変わって『 おおさか料理 淺井 東迎 』となっているそうです) 喜川 淺井 (本店) やっぱり、大大将のお店は、巷の情報には、出ていないようですね (^^ゞ
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