|
テーマ:日々自然観察(9963)
カテゴリ:季節
5月15日(水) 早いものでもう5月半ば。 一年で最も過ごし易い初夏となりました。 日中の時間も長いので、いろいろな事ができますね。 日記は4月下旬の我孫子市某所の林の中のこと。 プラプラと鳥の姿を求めて遊歩道をお散歩していますと・・・。 林床の下生えの中に特異な形をしたお花を見つけました。 地エビネです。 夢でも見ているのかと目を擦りたくなりましたよ。 50年ほど前には、日本中の里山で普通に見られた日本産の蘭です。 エビネは古くから日本人に愛され、江戸時代には園芸品として栽培されていたそうです。 所謂、好事家、愛好家が静かに愛でていたというところでしょうか。 ところが1960年代以降の山野草ブームの中、 突然、自生の地エビネや黄エビネに注目が集まり始めます。 需要に供給が追い付かず、流通していたものはほとんどが山から採取されたもの。 瞬く間にエビネは日本中の山林から姿を消してしまったそうです。 地エビネは変異を起こしやすい植物で、 また交雑も起き易く、自然の状態でも様々な姿になるそうです。 この場所は10㎡でしたが、三種類のお花が認められました。 従って、見た目が麗しい株や珍品には大変な高値が付き・・・。 投機目的の俄か業者が山奥深く侵入し、盗掘を繰り返したのですね。 その結果いわゆるエビネの姿は、 栽培品以外滅多に見られないものとなってしまったのです。 エビネブームはあっという間に終焉します。 価格は暴落し、ウィルス感染という問題も起こり、ほとんどの業者は撤退していったとのこと。 しかし一度失われた資源が回復するには、 失うのに要した時間に比べ、途方もない年月がかかります。 現在では育種の技術も進み、 価格も落ち着いていますから、山奥深く分け入って盗掘する輩はいないのでしょう。 僅かながら回復傾向にあるようですが油断は禁物ですね。 この株はほぼ真っ白なお花を咲かせています。 ピンク色が強く出た株です。 花茎は長くならず、お花が密に咲くように見えます。 お花のサイズも大きいので、重みで頭を垂れてしまっています。 白地にピンク色が差した株。 萼片の色も三種の中では一番艶やかですね。 まさかとは思いますが、 ポツンポツンと生えていますから、自生ではなく誰かが植栽したものかもしれません。 そのうち見事な株立ちとなることを期待しましょう。 近くにはジュウニヒトエのお花も満開でした。 ここは薄暗い林床ではなく、やや開けた明るい場所です。 ジュウニヒトエは日本固有種で、本州と四国に分布する貴重な植物です。 環境の変化や盗掘により、全国でかなり生息地や個体数が減ってきているようです。 千葉県では絶滅危惧に相当する一般保護生物に指定されています。 シソ科キランソウ属の植物。 確かに花の形や産毛がいっぱい生えているところはキランソウと似ています。 お花の形はツクバキンモンソウとも似ています。 キランソウ属の学名は”Ajuga”。 ジュウニヒトエの学名は”Ajuga nipponensis”。 学名にも「日本の」とあります。 ジュウニヒトエとは変わったお名前ですが、 昔、宮中に暮らしたご婦人たちの衣装・十二単から来ています。 幾重にも重なり密生して咲く、このお花の姿を十二単に見立て名付けられたとか。 園芸店では、かなり似た姿形をしたセイヨウジュウニヒトエを、 ジュウニヒトエと表示して売っている場合があります。 確かに近縁種ではありますがね。 学名は”Ajuga reptans”。 お花の色は青ですし、よく見ると葉の付き方が異なりますね。 最近は花壇から脱走し野山でも見かけるのだとか。 さて、この場所ではジエビネとジュウニヒトエという、 今となっては特定の自生地でしか存在しない二種を観ることができました。 嘗て日本中の里山などで極めてありふれた存在であったのに・・・。 この環境が何時までも保全されることを祈りましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.05.16 04:45:17
|