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センスがあるとかセンスが良いとか言うことがあります。相手と勝負する場合にはセンスが良い方が有利です。相手と協力する場合にはお互いのセンス(感覚)が合うことが重要になります。
複雑なことや微妙なことのように伝えにくい内容を相手に理解させたいときに、両者の言語感覚のずれが大きいとなかなか理解してもらえません。言語感覚は個人の言語経験(出自、学歴、職歴、読書傾向、趣味など)で決まりますし、何かのコミュニティに属しているのであればそこ独特の言い回しが知らぬ間に染みついていることもあります。大事なことは、誰にでもわかる平易な表現を使うことと、一つのことをいくつもの言い方で言い換えるための語彙です。 リハビリのように身体の使い方が対象の場合、もうひとつ身体感覚が加わります。身体感覚は体内感覚(関節と筋肉の動きへの意識)と運動の捉え方(運動を細分化し、どの順番でどこを動かすかという意識)です。 体内感覚は自分の肉体で確認するしかありませんが、身体の使い方に興味のない者は気にしたこともありません。また、相手と話が通じるためには、両者の間で、関節の位置と可動域、筋肉の付き方と動かし方についての認識が一致する必要があります(解剖学的知識が正確である必要はありません)。頸髄損傷で乳首から下の感覚がゼロの私ですが、体内感覚はゼロではありません。お陰様で、筋肉と関節の痺れと痛みだけでなく動きも感じます。 運動の捉え方は何気なく動かしている人とより効率の良い動かし方を模索している人とでは精度が全く違います。 相手と感覚が合わないために話が通じないことはたくさんありました。 小学生の頃、毛筆習字の時間、先生が「字は、小手先でなく、身体全体で書きなさい」と言われました。意味がわかりませんでした。椅子から尻が浮くほど上体を回していました。今であれば、"腕は腰から生えていると思え、脚は肩から生えていると思え"という知恵もありますし、先生の言いたいことはわかります。背中をリラックスさせ肩胛骨の自由な動きを妨げることなく、肩肘手首のすべてを柔らかく使いながら筆を運べ、ということでしょう。 お手本を示さない先生とものを知らない生徒でした。 救急病院のベッドサイドから私のOTは始まりました。療法士が言います「次は手の回内です。今親指が上を向いた状態です。ここから掌を下に向けてください」。彼女は専門用語をわかりやすく言い換えてくれました。しかしここまででした。掌を下に向けるには、親指を内側に倒すのと小指を外側に引き上げるのと、二通りあります。どちらですかという私の問いを彼女は理解できませんでした。 想像力のない療法士と考えすぎの患者でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.08.16 10:19:01
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