「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。
昨日の「氷菓」に続いて米澤さんの「古典部」シリーズ第2弾「愚者のエンドロール」の感想です。
この作品は前作の直後の話なのですが、趣が少し異なります。
前作が大筋の「氷菓」の謎の他にも小さな日常の謎が登場したのに対し、今作では自主映画の結末を推理する過程が全編に渡って描かれているのです。
あとがきで米澤さん自身が語っている通り、我孫子武丸さんの「探偵映画」や古典的なミステリの傑作「毒入りチョコレート事件」を意識しているというのも納得の構成です。
映画を製作したクラスの生徒による推理の成否を巡る議論や古典部内での推理など、何度も推理を組み立てていく過程は凄く面白いですね。
終盤で「省エネ」が心情の奉太郎が積極的に推理するシーンとそれに対する古典部の面々の反応が印象的です。
やはり青春小説として大いに楽しめますね。
映画内の殺人事件とはいえ、日常の謎を扱った前作よりも本格ミステリ的で、特にホームズの作品を真相に繋ぐ手腕は見事です。
他にも映画内の屋敷の設計者の名前が「館」シリーズでお馴染みのあの人を匂わせたりするシーンはファンには堪らないです。
現に私は大喜びでしたよw
ラストシーンは、このシリーズとヒロインらしい終わり方で読後感は爽やかでした。
続編として「クドリャフカの順番―「十文字」事件」が先日、角川書店から単行本で刊行されたので古本で発見して読んでみたいですし、他にも東京創元社の「さよなら妖精」や「犬はどこだ」のように未読作品が多いので全部読みたいですね~。
かなり注目の作家さんの1人です。