天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか。
森博嗣さんの「V」シリーズも手持ち作品が尽きて一息付いたので、最近は未読だった東野圭吾さんを読んでいます。
本来なら昨日読み終わった「ゲームの名は誘拐」の感想を書こうと思っていたのですが、その前に先程読み終わった「容疑者Xの献身」について書こうと思います。
実は昨日古本屋で購入し、今日1日で読んでしまったのでしたw
直木賞受賞に昨年の各種ミステリ・ランキングで3冠と話題の作品でしたが、期待通りの完成度で最後の最後まで楽しめて大満足で読み終えました。
「探偵ガリレオ」シリーズの作品なので、湯川助教授がどういう役所になるかと思っていましたが、これまでのシリーズからは想像できない展開でした。
シリーズキャラである湯川や草薙以上に存在感を魅せる石神も然る事ながら、登場人物を最低限に抑えて視点等も含めて全体的にシンプルな構成にしているのが良かったと思います。
ただ、話的には色々と想像できる部分が多くて感想が多種多様になるのも納得ですね。
どうしてもネタバレなしで感想を書けそうにないので、以下からネタバレ注意とします。
(以下では「容疑者Xの献身」の真相やトリックに触れますので未読の方はご注意下さい)
ホームレスとの入れ替わりは途中で何度か挿入される公園を歩く描写で分かりましたが、日付の問題はお手上げでしたw
石神の工作だけでなく、叙述トリックも仕掛けられているとは凄過ぎです!
それでも殺されたホームレスこと技師は可哀想ですね・・・。
間違いなく、この作品で最もやり切れない人でしょう。
それだけに終盤に石神、湯川、草薙、靖子が様々な選択を迫られ、選び取るシーンは流石の描写ですね。
次々と明かされる石神の献身ぶりには関心仕切りですが、それだけに靖子の選択が引き起こすラストは物悲しく、恋愛ものとしても評価されるのも頷けます。
でも、ここに着地したのが少し意外だったりします。
なぜなら、悪い癖で中盤から深読みを重ね、もしかして石神が献身する相手は靖子ではなく美里なのではと想像していたからでしたw
と言うのも、中盤以降にあまりにも美里の登場回数が少ない事や、やたらと重要な場面で奥の部屋に篭るのが怪しく感じられたからです。
終盤で回想される石神が自殺しようとした所に訪ねて来た靖子と美里に対する石神の心情が「綺麗な目をした母娘」と対照がどちらにも取れる書き方だったのと、同じく終盤で美里が高校で自殺未遂をするのは石神の本心に気付いたからではと真面目に疑いしましたww
それは全て的外れだったのですが、こういう妄想も出来るの位に深みのある作品なのではと思います。
それに湯川が語る推理も想像で補っている場面が多い気がするので、このラストで全てが現実の解明かどうか未だに疑わしいですww
それでも名作と言える事に変わりはなく、素晴らしい作品でした。
でも、やはりこの作品で直木賞受賞は意外ですね。
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