[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。 "
小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読み終わりました。
綿矢りささんの「インストール」同様に部数が出ているので入手し易かったので手に取ってみましたが、流石に本屋大賞を受賞した作品だけあって非常に読み易い作品でした。
数学を題材にこういう作品を書き上げるのは生半ではないですね。
最も気になっていた登場する数式は、思っていたよりも難しくなくて親しみが持てました。
大して数学の知識がない私でも知っている素数や完全数といった用語も登場しますし、知らない用語も丁寧な説明で理解で分かり易かったです。
無造作な数字から思いも掛けない関係を見つけ出す博士とその影響で数式に反応してしまう家政婦、その息子・ルートの心の交流を優しい雰囲気の中で描いています。
随所に登場する阪神タイガースの話も知っているシーズンの話なので登場するエピソードは懐かしかったですw
数式だけでなく、タイガースの話も絡ませる辺りが巧いです。
終盤に登場するある数式の使い方も絶妙で印象的なラストになっており、非常に読後感も良い作品になっていますね。
少し気になったのは、主要登場人物があまりにも純粋過ぎるのが気になりました。
何と言うか、それ以外の特に脇役達が異様に俗物に見えるのですが、捻くれた見方をすると逆に主要キャラが浮いてしまう様な感じもします。
印象的には加納朋子さんの作品に近い感じがします。
ともかく、いつか映画版も観てみようかと思います~。