西之園萌絵にとって、その夜は特別なものになるはずだった。けれどちょっとした心理の綾から、誘拐事件の謎解きをする展開となり…(「いつ入れ替わった?」)。上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文同好会のリリおばさんが、奇妙な殺人事件を解決(「ゲームの国」)など軽やかに飛翔する、短編7作を収録。
先にノベルスで第5短編集「レタス・フライ」を読んだので順番的に前後しましたが、森博嗣さんの第4短編集「虚空の逆マトリクス」を文庫版で読みました。
今作は7編の短編が収録されていますが、やはり目玉は「S&M」シリーズである「いつ入れ替わった?」でしょうか。
初期の短編集ではシリーズの番外編的な短編を何編か収録されていたのが、最近はラスト1編だけと売り方があざとくなって来ましたねw
以下、特に気になった短編の感想です。
「トロイの木馬」
島田荘司さん編によるアンソロジー「21世紀本格」に収録された作品です。
とはいえ、先進的なネットワーク社会を舞台としたSF的で森博嗣作品らしい雰囲気が漂っており、一般的なミステリとは趣は大きく異なっております。
ただ、印象的に重なる作品が多いネタなので逆に目新しさや驚きは薄かったです。
「話好きのタクシードライバ」
何だかエッセイっぽい話ですが、ちゃんとオチも付いております。
タクシーに関する独白は森さんの本音なのでしょうか。
「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)」
「今夜はパラシュート博物館へ」に同名の短編があり、そちらはアナグラムで遊んでみた短編でしたが、こちらは回文で遊んでおります。
泡坂妻夫さんの「喜劇悲奇劇」とは違って真相に回文が繋がらないのが少し物足りないですが、コミカルさは中々良いのではと思います。
「いつ入れ替わった?」
人間関係に結構な進展がありましたが、おそらく今後の本編にはあまり反映しないのかな~と思っておりますw
相変わらず作中での犀川先生の言動は苦手ですねw
メインとなる誘拐事件での身代金消失の謎は今一つでした。
という訳で、それなりに楽しめた短編集ですが、シリーズ作品との兼ね合いを考えても初期の短編集の方が好きですね。
順番的には来年から「G」シリーズが文庫化されるので順次読んで行こうと思いますが、他の作品も読んでみたいです。
何にせよ作品数と刊行ペースが尋常じゃないだけに付き合うのには覚悟が必要ですがw