新聞の貧弱な批判精神を嘆いて、ジャーナリストの本多勝一氏は先月の「週刊金曜日」に次のように書いていました;
日本人の100%近くが天皇家や皇族の類を「ありがたい」とか「あらまほしい」とか考えているのだろうか。この日本最大の差別を。
そんな思いを抱かせたのが、今月(2月)8日の新聞各紙であった。私の見た日刊紙は『朝日』『毎日』『読売』『東京』および政党機関紙の『赤旗』だが、政党機関紙を別とすれば、日刊紙は一面トップに「紀子さまご懐妊」を五段抜きなど大活字で報じた。(テレビはほとんど見ない。見るひまもない。)
主要各紙が一斉に一面トップということは、もし新聞が読者の意識を正確に反映しているなら、日本人のほとんどすべてが皇族を「ありがたい」「あらまほしい」と考えていることに、論理的整合性としてはならざるをえまい。はたしてそうなのか。
ジャーナリズムとしての役割や使命からみるとき、少なくともこの10年前後で比較するかぎり、関東でいえば『東京』が一番ましだ。それでさえも、こんどの紀子さん妊娠は一面トップだった。「日本人の100%近くが・・・」と冒頭で疑ったのは、こういうマスメディア情況に危機感を抱いたからである。要するに日本人の意識以上にマスメディアの方が保守反動の側からリードしているのではないのか。
さすがに『赤旗』は、第二社会面でも一番左下の方にベタ記事でわずか6行の“お義理"報道だった。この問題は別としても、いま私にとって記事の切り抜きが最も多いのは『赤旗』である。かつては『朝日新聞』だったが、思えば奇妙なことだ。『赤旗』は政党の機関誌だから、時には政策関連が一面トップに出ることがあるのは当然としても、その他では『赤旗』のほうが一般紙よりもジャーナリズムをやっているなんて、これはもう日本のジャーナリズムの恥であろう。
日本軍(自衛隊)の海外派兵をはじめとする憲法第九条の破壊問題など、戦争と平和をめぐって戦後これほど事態が切迫したことはない。それは即ちジャーナリズムが最も奮起すべき秋に相当する。ところが実態はごらんのとおり。
やっぱり思う。「保守反動の側」とは逆の側から「リード」せよとまで言わずとも、せめて日本人の重層する意識内容をそのまま反映するていどの日刊紙(やインターネットを含めた新しい総合メディア)は創刊できないのか、と。
「週刊金曜日」2006年2月24日号 7ページ「風速計-ジャーナリズムが『赤旗』だけ?」から引用
確かに商業新聞は発行部数を維持して利益を出さなければ、経営上の問題が出てきますが、だからと言って大衆迎合の記事ばかり書いていたのでは、本来の使命を果たすことができません。各紙、創刊の初心に返ってジャーナリズムの使命を果たしてほしいと思います。