昨今のIT技術の進歩は革命的であるが、精神科医の斎藤学氏はその驚きについて、次のように述べている;
国外にいる患者からの手紙に「先生が最近のワークショップでどんなことをおっしゃったか、どんな服装をしていたかまでわかるようになりました」と書いてあって驚いた。ツイツターなるものの威力らしい。
告白するが私は最近の情報革命から取り残された難民である。ある機種のワープロにしがみついて製造停止になるまで使っていた。その後もそのパソコン版を使い続け入力専門機としてきた。
難民化に気づいたのは最近のこと。ブルーレイ版の映画が見たくて壁掛けみたいに薄いパソコンを買った。画面の美しさに感激したのが崇(たた)って、かなりの時間をこの機械に費やしてしまった。久しぶりの徹夜までした、というか朝になってしまったことが何度かあった。おかげで、私はここ20年間ほどの通信技術の進化を1週間で駆け抜けたと思う。
確かに便利だが良いことばかりではない。冒頭の患者からの手紙が気になり、あるポータルサイトに自分の名を打ち込んでみたら、巨大な塊が出てきた。しかもそれは「斎藤学の暴言」などの章に分かれている。
読んでみると、パラノイア・モンスターたちの匿名悪口雑言集。ベテラン精神科医なら、彼らを船底の牡蠣(かき)のように抱えているもの。それはいいのだが、書かれた方が何年も気づかないとは気色悪い。やはり情報革命は恐ろしい。(精神科医)
2010年6月2日 東京新聞朝刊 11版 23ページ「本音のコラム-情報革命」から引用
なるほどね、パラノイアなわけだ。些細なことにめくじら立てて、根拠を示せとか言い出すからね。