『ある微笑』フランソワーズ・サガン
サガンです、世界的な超ベストセラー『悲しみよこんにちは』後の二作目。わずかに残っていた手持ちの、日焼けして活字印刷も薄い、古い古い文庫本。1952年前半初版、翻訳も朝吹登美子さんで1956年。そうですね、わたしの思い込みかもわかりませんが島本理生さんの作品からの連想ですね。すごく若くして(10代で)注目され、恋愛のみを書いているようななにともなく生活感が希薄な、それでいてシニカルな感じの文章。というわけで、実に60年ぶりに読みました。ストーリーは語り手ドミニクはソルボンヌ大学の学生(20)、恋人とのツーショットも絵になるようにほっそりとして素敵、と自分で言うようなお気楽さ。ひょんなことで彼ベルナールの叔父リュックに紹介されたのが始まり。その40男の落ち着いた魅力に惹かれ気味の彼女。そして叔父夫婦ともども仲良しになるも、リュックから「気軽に付き合わないかい?」とこっそり囁かれて度肝を抜かれるが、次第に引き寄せられて・・・パリの空の下で、カンヌで、ドミニクは若さではない人生経験の重み、渋みに魅せられて、それを愛情に変えてしまいそうになる、いやもう戻れないのではと困惑していくのである。サガンの筆はこの通俗的なストーリーに不思議に洒落た感性を盛り込むところが才能。『悲しみよこんにちは』よりも若さを惜しむ文学性が色濃くあると思う。無謀が続くわけではないとわかりつつ、果敢さ、臆病さ、好奇心、諦念に向き合う若いうごめきをさらっと描き出している。う~ん、当時わかっていたのかなあ~。ありし日の本箱・・・古い本はほとんど処分したのにサガンは6,7冊残しておりました