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分太郎の映画日記

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2007.05.20
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カテゴリ:日本映画(2007)
 松嶋菜々子、宮本信子主演、さだまさし原作の同名の小説の映画化。
 ワーナーマイカル・シネマズ板橋にて鑑賞。

 『眉山‐びざん‐』 評価:☆☆☆☆

 同じ日に鑑賞した『東京タワー』は、がんに冒された母と息子の物語であったが、こちらは癌に冒された母と娘の物語。比較して感じることも多々あったが、それはまた後日に。

 正直なところ映画を観終わった直後は☆二つに、十年ぶりにスクリーンに復活した宮本信子の胸をすくような“江戸っ子”演技に敬意を表して☆ひとつ追加の、☆☆☆と思ったのだが、パンフレットの大沢たかおのインタビューに、小説のラストに、医学生の献体者への感想文との言葉をみて原作が気になり、映画館からの帰り道に書店で原作本(幻冬社文庫)を購入、一気に読んでみると、さまざまな部分で映画の良さ・感動が蘇ってきて、評価は☆をさらにひとつ追加した。
 なので、単純に映画だけの評価ではないので、ご了承いただきたい。

 たぶん、原作は一種の“謎”解きのような部分もあるので、「読んでから観る」のが良いとは思うが、先に観た人も長い話ではないので、鑑賞後に一読することをお薦めしたい。

(以下、原作と比較もしながら述べるので、ネタバレあり)

 本作のテーマは、娘からみた母親像とその理解だと思うが、裏テーマは一般に馴染みの少ない“献体”である(この言葉自体は、映画・原作ともに早い段階で出てくるので、ネタバレにはならないだろう)。
 献体は、いわゆる医学部のある大学で、学生の教育・研究に役立たせるために、自分の死後に遺体を無条件・無報酬で提供することで、志した人が生前に関連団体に登録をしておき、亡くなった際に遺族が故人の遺志に従ってはじめて成立するものである。その辺りの事情が、本作で詳しく物語られている。
 原作では、何故母が献体を志したかが、一つの謎としてラストに解き明かされる構成になっているが、映画では中盤で判明する形に修正されている。この辺りに異論のある原作ファンもいるだろうが、映画的には正解と思う。

 この相違は、じつはクライマックスの改変と表裏一体でもある。

 原作では、母と父の視線は“命がけで”交わらないのだが、映画では母と父と娘とトライアングルの位置関係でそれぞれを見つめ合い、30数年ぶりに家族が“構成”される、ようになっている。
 これも異論があるだろうが、私的には映画の方がよいように思う。原作は母の毅然とした生き方が前面に出ているが、映画ではやはり松嶋菜々子の娘としてその母親のとらえ方に焦点があるように思うし、確かに娘に視点を置いた方が観客の共感を呼びやすく、感動ももたらしやすい(母親像だけだと単なる“変わった人”で終わってしまう)。
 もっとも絵的に離れた位置にいる二人の交わらない視線というのは、交互に切り返すカメラでは描けないし、表現するのがもの凄く難しいと思う。

 それに伴って、手紙の主の解明も途中で行われ、娘と父の名乗り会わない“再会”が描かれる。このシーン、ちょっとじんと来てしまった(演出というかカメラを切り返しすぎな気もしたが)。

 映画での改変は、文章で心理描写ができる小説と箱となって、雄弁ではない主人公を姿と行動でしか表現できない制約を、うまく活かしたものではないかと思う。

 それにしても、久しぶりにスクリーンに復活した宮本信子のきっぷのいい母親は
見事であった。たぶん、それだけでも本作を見るべき価値があるように思う。
 彼女を主人公に誰か一本、作品を作ってくれないだろうか。

 松嶋菜々子も、私は実は何となく苦手なのだが(個人的に好き嫌いを除いても『犬神家の一族』はあまり良くなかったと思う)、本作では年齢的に等身大な感じで、性格の違う母親に(しかも、その母はがんで余命幾ばくもない)どう接して良いのか戸惑う娘を繊細に演じていて、very good。

 大沢たかおは、さだまさし原作映画の常連的に成りつつあるが(といって『解夏』だけか)、小児科医というのはちょっと意外だった。

 第六回の東宝シンデレラ・オーディションでグランプリを取った黒瀬真奈美が、咲子(松嶋菜々子)の14歳のころを演じている。
 しかし、彼女の本格的なデビューは何時になるのだろうか。

 映像的には、やはりクライマックスの阿波踊りが圧巻だが、とらえ方が今ひとつ効果的な感じがしなかったのは、撮影の問題なのか、演出の問題なのか、私の歓声の問題なのか。

 細かいことで言えば、最初に“問題”を起こした看護師が消えてしまうのが、ちょっと引っかかった。「言葉のあや」発言しかしていない手塚医師がきちんと謝罪しているのに、張本人の看護師は一体どうしてしまったのだろうか。
 原作では、あるまじきセリフを手塚医師自身が述べているので、彼が謝る“だけ”なのは納得。ただ、このセリフは、やはり内容的に看護師に言わせるべきだろう。いずらくなって辞めた、とかのセリフをちょこっと紛れ込ませればよかったお思うのだが。

 あと啓子さんの設定が映画ではよく分からないのもマイナス。
 付け加えれば、原作にあった「まっちゃんの嘘つき」は映画にも取り込んで欲しかったかな。

 なお、タイトルの眉山は、徳島市外の西にある山で、どちらから見ても眉の形に見えることから名付けられたらしい。

 ということで、宮本信子の演技と、母親を捉え直すには良い映画なのではないかと思う。


【あらすじ】
 東京の旅行代理店に勤める咲子は、母・龍子が入院したとの知らせを受け、久しぶりに故郷の徳島へと帰郷する。母子二人で育った咲子は、父のことを決して語らず、気が強くて、何でも一自分人で決めてしまう母に、寂しさと反発を感じていた。その母ががんで余命幾ばくもないことを知り、ショックを受ける。あるきっかけで知り合った医師・寺澤から、母が献体を希望していることを知り、いらだちはさらに募るのであった。そして、かつて母の飲み屋で働いていたまっちゃんから、母から預かった箱を手渡される。中には、死んだと聞かされていた父から届いていた手紙の束が入っていた……。


眉山 -びざん-
【製作年】2007年、日本
【配給】東宝
【監督】犬道一心
【原作】さだまさし
【脚本】山室有紀子
【撮影】蔦井孝洋
【音楽】大島ミチル
【出演】松嶋菜々子、大沢たかお、宮本信子、円城寺あや、山田辰夫、黒瀬真奈美、永島敏行、金子賢、本田博太郎 ほか

公式サイト
http://bizan-movie.jp/


原作本『眉山』
(幻冬舎文庫)

コミック『眉山』
(林久美子、白泉社)

CDオリジナル
サウンドトラック





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最終更新日  2007.05.21 18:34:19
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