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分太郎の映画日記

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2007.08.11
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 「文革」以前の1950年代の中国を舞台に、毛沢東の製作に翻弄される庶民の姿を描いた傑作。監督は中国の第五世代を代表するの田壮壮。1993年の東京国際映画祭で、グランプリと最優秀女優賞を受賞。
 私の知る限りでは、中国国内ではいまだに上映はされていない作品でもある。

 東京・新宿のミニシアター、K's cinemaにて開催中の『中国映画の全貌2007』にて鑑賞。

 『青い凧』 評価:☆☆☆☆☆

 1995年から東京・千石にあった三百人劇場で、2,3年おきに「中国映画の全貌」と題する特集上映が行われていた。1990年の終わりころから、(東京で)劇場公開される中国映画の大半は見てきたと思うが、(当然?ながら)1990年代以前の中国映画には未見なものが多く、それを解消してくれるのに、この特集上映は大変に役に立っている。といっても特集当たり10本も見れればよい方ではあったが……。

 ところが、昨年(2006年)で三百人劇場の閉鎖してしまったので今後はないのかと思っていたら、今年は会場を新宿のK's cinemaに変えて開催。
 上演本数も、今年は(香港映画も加わっていることもあり)74本と昨年の約3倍。 
 ざっと数えたところ、そのうちの44本が鑑賞済みの映画であった。

 さてそれで、『青い凧』。

 中国の歴史、とくに現代史は(私には)じつはよく分かっていない。
 偏に私の不勉不足のためなのだが、現在では共産党によっても否定されている文革=文化大革命が、なぜ、どういう経緯で成されたのかが、謎という印象がある。

 文革(が引き起こした悲劇)については、映画的には例えば『シュウシュウの季節』などの傑作(後味は非常に悪いが、映画自体は見事な傑作)があって、それなりには理解しているつもりがだ、中華人民共和国が成立してから文革までの期間を描いた作品は、たぶん本作が初めてだろう。

 映画の筋は、詳しくは「あらすじ」を見ていただくとして、1950年代の政治活動に踏み込んで、それが如何に家庭を崩壊させ、また個人の一生をめちゃくちゃにしてしまうのかを描いた本作によって、そのあたりの事情が何となくだが見えてきた。
 文革の誤りを元に辿って追っていくと、結局は中華人民共和国の成立と中国共産党そのものを批判することになって、まぁ確かにこの映画が中国国内で上映禁止なのも、分からなくはない(そこの壁が突破できない限り、大きく開けることもないのではと思うが)

 本作で印象的だったのは、あらすじには触れなかったが、主人公・樹娟の兄の彼女。
 兄・樹生は空軍の参謀で、彼女・朱瑛(チュウイン)は軍の劇団因だったが、党の幹部が来る度に接待にかり出されることに嫌気がさして退団するが、やがて反革命の罪に問われて逮捕されてしまう。彼女自身、何が起こっているのか、まったく理解できない状況で、党幹部の“餌食”になってしまう姿は、彼女への哀れ以前に底知れない恐怖を感じる。
 まぁ今はこんな腐った党幹部はいないだろうが、こういう告発を紛れ込ませてしまうとは、田監督、おそるべしか。

 そして文革の時代は、(映画をその通りと受け取れば)小学生が校長先生をつるし上げていたのかと思うと、これもちょとおっとぞっとする。

 監督の演出としては、ともすると(日本であれば)感傷的に描いてしまうところを、かなり淡々と描いていく。それが、より当時の時代状況を考えさせてくれることになる。
 また、監督は子役の使い方がうまいなと思った。

 また三度の結婚式や、随所に挟み込まれている食事のシーンが、時代状況の移り変わりを象徴していて興味深い。

 良くも悪くも“お隣”の国、中国を知る上で、本作は必見の傑作と言えよう。

 なお本作のDVDが発売されていたようだが、現在では品切れのようだ。


【あらすじ】(ネタバレあり)
 1953年3月、北京近くの胡同。小学校の女性教師・陳樹娟(シューチュアン)は、図書館司書の林少竜(シャオロン)と結婚した。中華人民共和国が成立して4年、人々は新しい国の建設という希望に溢れた時期で、二人の質素な結婚式でも、新郎新婦が毛沢東主席の肖像に敬礼した後、全員で革命歌を合唱するのであった。翌年、息子の鉄頭(ティエトウ)が誕生。
 1957年。鉄頭は父の作った青い凧を上げるのが大好きであった。それは、一家の希望の象徴でもあった。折しも、毛沢東は整風運動──官僚主義を改めるために、党や官僚主義に対する批判を述べるように人々に奨励する──を推進するが、に一転して反右派闘争──党批判を行った者(=右派)を罰する命令が出され、図書館への割り当てから、少竜は右派のレッテルを貼られてしまい、労働改造に送られる。美大生であった樹娟の弟・樹岩も故郷の農村に追放された。そして、少竜は伐採事故のため死亡する。
 1960年。少龍を密告したことに責任を感じていた同僚の李国棟(グオトン)は、その後ずっと樹娟親子の面倒を見てきたが、樹娟と再婚した。鉄頭はこの“おじさん”を好きであったが、大飢饉(1959~61)の際に、樹娟親子のために苛酷な労働をして粗衣粗食に耐えた無理がたたったのか、国棟は突然、病死してしまう。
 1965年。息子の将来を案じた樹娟は、姉・樹英(宗晩英)の紹介で、党の幹部である老呉(ラオウー)の後妻になる。二人は老呉の住む立派な洋館に引っ越すが、鉄頭は新しい継父が好きになれず、反抗ばかりしていた。
 翌1966年、文化大革命が始まった。老呉を批判する壁新聞も貼り出された。老呉は、樹娼と鉄頭に危害が及ぶことを危惧して、離婚を申し出た。ある日、様子見に鉄頭と戻ってきた樹娼は、老呉が紅衛兵に暴力的に連行されようとする現場に遭遇、心臓の悪い彼を連れていかないように懇願するが、一緒に連行されそうになる。紅衛兵に猛然と飛びかかった鉄頭は、袋叩きにあい失神してしまう。老呉は病死し、樹娟は労働改造に送られる。気づいた鉄頭が頭上に見たものは、枯れ木に吊り下がった、ぼろぼろになった青い凧だった……。


『青い凧』The Blue Kite 藍風箏

【製作年】1993年、中国
【製作】北京映画製作所
【監督】田壮壮 ティエン・チュアンチュアン
【脚本】肖矛 シャオ・マオ
【撮影】侯咏 ホウ・ヨン
【音楽】大友良英 オオトモヨシヒデ
【出演】呂麗萍 リュイ・リーピン(母:陳樹娟)、易天 イー・ティエン(鉄頭:3歳)、張文瑶 チャン・ウエンヤオ(鉄頭:6歳)、陳小満 チェン・シアオマン(鉄頭:12歳)、濮存■ プー・ツンシン (父:林少龍) ほか


文革を扱ったDVD
『シュウシュウの季節』

書籍
『中国映画の100年』
中国映画の全貌を
知る上で必携の好著





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最終更新日  2007.08.17 21:46:34
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