町の消滅化
最近は発注する事も少なくなったが、一応 出入りのクリーニング屋さんは何十年かのご縁で 山形県蔵王の山裾の出身で 『蔵王商事』と名乗っている。 山形県辺りの集団就職先と言うのは、東京始め関東圏と思うのだが、何か運命の悪戯か 京都で韓国の人が開いていたクリーニング店に住込み店員として働く事になった。艱難辛苦は彼の爲に有る言葉の様に 傍で 又注文を出す立場から見ても 応援をしてあげようという気分になる様な頑張りだった。 故郷から嫁になる女性を呼び寄せて 独立して 仕事の確かな職人肌だが 物越し 柔らかく 人に紹介しても喜ばれる人と 随分沢山のお得意さんになる客を紹介した。 先年 長く連れ添った細君を亡くし 長男と二人で今も仕事を頑張っている。以前 『故郷の蔵王に帰る事は有るの?』と尋ねた事が有った。『いいえ もう帰る事は有りません 従兄弟とか 友達も年取って残っているのは付きの代 それらの世代は 東南アジアのどこかの国の女性を嫁さんに迎え 嫁さんの家族大勢が移り住んできて もう私の記憶に有る故郷は無くなりました。』という。『百姓を継ぐ者以外の男は 皆 都会へ出て帰って来ないから 女性の嫁ぎ先が無い事と 女性が携われる仕事が無いね。外国人に頼らざるを得ない地域は。自動販売機は 置いてないそうだね。』と言うと『そうです 自販機には 必ず釣銭が入ってますから』日本が 日本で無くなっていくという話しを何年も前に交わしたが 昨日の地元紙一面には 人口減深刻 京都の9市町村 『消滅の可能性』を報じていた。 急に人口が減った訳では無い こうなる事は早くから判っていた事 どの様な対策が立てられるのか?遠い 遠い 思い出しても遠い歌が 甦った。春日八郎の歌唱 別れの一本杉 二番。三番だ、 遠い 遠い想い出しても 遠い空必ず東京へついたなら便りおくれと云った娘りんごの様な赤い頬っぺたのよあの泪呼んで 呼んでそっと月夜にゃ呼んでみた嫁にもゆかずにこの俺の帰りひたすら待っているあの娘はいくつとうに二十はよ過ぎたろに クリーニング屋さんは あの娘を 京都に呼びよせた。