ネット犯罪に弱い警察
警視庁は今回、国内最大級のインターネット掲示板の違法薬物に関する書き込みを、放置し続けた「不作為」が、麻薬特例法違反の「幇助」にあたるという異例の判断で、掲示板の管理者側を初めて立件した。 警視庁によると、書き込みのあった昨年5月時点で、2ちゃんねる上の違法情報は約9800件。薬物販売を書き込んだ男は「2ちゃんねるは規制がなく取引がしやすい」と供述しており、違法薬物取引の温床になっていたことは間違いない。関係者によれば、2ちゃんねる開設者の西村氏は違法情報について、周囲に「面白ければいい」と話していたという。 ただ、捜査は捜索着手から1年以上かかるなど難航した。掲示板の違法情報の削除は、基本的には管理者側の自主規制に任されており、法規制がないからだ。 警視庁によると、2ちゃんねる側が捜索後、違法情報の削除を積極化したため、ほかの掲示板で違法情報が増えているという。 捜査幹部は「インターネット掲示板への書き込みは、世界中の人に瞬時に伝わる点で、落書きよりもメディアに近い。にもかかわらず、規制する法の整備が追いついていない」と嘆く。インターネット空間では、掲示板の規制のみならず、犯罪者の「足跡」が残るサーバーのアクセス記録の保存期間についても法の定めはなく、捜査は手足を縛られたような状況を強いられている。遠隔操作ウイルス事件の捜査が長期化しているのも同様に、こうしたことが背景にある。 法整備の遅れをこのまま放置する「不作為」は、掲示板の違法情報の放置と同じく、問題があることは明らかだ。