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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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July 5, 2015
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  ドイツからイタリアへ。「バッハへの旅」に続き、イタリアオペラの旅が始まりました。

 通常、2本のツアーを続けることは少ないのですが、今回は公演日程の都合上、たまたま連続してしまったというわけです。

 ご存知の方もいらっしゃると思いますが、欧米のオペラハウスは、ドイツ語圏の大劇場やロンドン、NYなど、一部をのぞいて「スタジオーネ方式」といい、月に1、2の演目を集中して、それも連日ではなくやる方法がほとんど。今回のイタリアオペラの旅は、イタリアの複数の劇場をめぐるのが目的なので、各劇場でそこそこ有名な演目を、そこそこ有名なキャストでやっている公演を組み合わせなければなりません。その時期が、たまたま6月後半になった、というわけです。

 今回のツアーの振り出しは、スカラ座。演目は「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」。とくに「カヴァレリア」のほうは、今をときめく人気スター、カウフマンとガランチャの共演というのが売りでした。ところがカウフマンは早々に、ガランチャはぎりぎりに、降板してしまう始末。代役はガランチャの代わりがウルマーナ、カウフマンの代わりはラ・コーラというイタリアの若手スピント系のテノールでした。

 「道化師」のほうはキャストの変更はなく、予定通り、カニオはマルコ・ベルティ、ネッダはフィオレンツァ・チェドリンス。両方に共通していたキャストは、「カヴァレリア」のアルフィオと「道化師」のトニオを歌ったイタリアのバリトン、マルコ・ウラトーニャでした。

 歌唱からいえば、「カヴァレリア」はウルマーナの、「道化師」はベルティの、ほぼ独り舞台となりました。

 ウルマーナはもともとうまい歌手ですし、サントウッツアはレパートリーで、レアル劇場での映像もあります。今回もうまかった。暗めの濃淡に富んだ声は役柄にふさわしく悲劇的で、柔軟性に富んでいるので表情付けもたくみ。暗く一途な女を、情感豊かに歌い、演じていました。

 トウリッドウ役のラ・コーラは、強く野性的な声が魅力ですが、華や個性を感じるところまでには至らず。これからの歌手でしょう。アルフィオ役のウラトーニャは、硬めの男性的な声が直情的なアルフィオに合っていました。

 「道化師」のベルティ。彼はこれまで、ヴェローナをはじめあちこちで何度も聴いていましたが、正直ピンとこなかった。わりと単調で、魅力に乏しく感じられたのです。それが今回は、直線的な声がカニオという役柄にあっていたこと、そして彼自身の役柄へののめり込みよう、役作りが徹底していたことで、白熱の演技と歌唱を展開していました。声の魅力はそこまでではないけれど、気迫という点ではあのデル=モナコを彷彿とさせ、デル=モナコの影響を感じさせられた演唱でした。大詰めでは客席に下りてネッダをさすのですが、役柄が乗り移ったようで息をのみました。

 ネッダ役のチェドリンスはむらなくまっすぐな歌いぶり、トニオ役のウラトーニャは悪漢ぶりがなかなかでした。

 指揮はカルロ・リッツィ。全体的に生ぬるかった「カヴァレリア」に比べ、引き締まった「道化師」のほうがはるかによかったのは、どういうことなのでしょう。

 演出はマリオ・マルトーネ(2010−11シーズン)。「カヴァレリア」は大道具が舞台後方にかかったキリストの磔刑像だけで、主人公たちのドラマの背後で復活祭の礼拝が同時進行します。舞台上で礼拝を行うとは、19世紀では間違いなく検閲ものだから、時代が変わったなんて思ったり。サントウッツアは初めから露骨に仲間はずれにされ、糾弾されますが、幕切れで、きびすを返して村を出て行く設定になっていたのは喝采ものでした。かっこよかったな。

 「道化師」は現代の河原乞食的な設定。橋の下での田舎芝居。でもダンサーも大勢登場して盛り上げ、静的な「カヴァレリア」と好対照でした。客席や舞台左右の花道的な部分も活用しての演出は、客席を引き込む効果を十分あげていたと思います。

 今、ミラノは万博でいつもより観光客が増えています。それを狙って、スカラ座では公演回数がいつもより多いのですが、公演回数が多いせいか、スター歌手のキャンセルのせいか、空席がめだったのは残念でした。なんとなく、ルーティン公演の雰囲気。スカラ座って、そういうところではなかったように思うのですが。。。

 

 

  






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最終更新日  July 5, 2015 01:23:11 AM


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