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テーマ:お金のない世界(611)
カテゴリ:未分類
テーブルに案内されて稔は座った。 そして店内を見渡して 「お客さんはいないの?」 そう言うと店長が 「昨日から猛吹雪でね入山禁止になってるんだよ」 どうりでスキー場に人がいなかったと気付いた。 「お金は要らないから何を食べたいの?」 店長がやさしく言ってくれた。 「ありがとうございます。カレーをお願いします」 「よしわかった。飛び切り美味いのを作るよ」 「ありがとうございます」 店長は厨房へ行き店員は水を持って来てくれた。 「ところで君はどこに帰るの?」 「あの~帰る所が無いんです」 「それじゃあ困るだろう?」 「本当は帰れるんですけど」 「じゃあ帰れば良いじゃないか」 「お父さんがしばらく体験してみなさいって」 「なんだか無責任なお父さんだな~(笑)」 「何でも体験しろって言われるんです(笑)」 そこへ店長がカレーを持って来てくれた。 「さ~、君だけに作ったカレーだから美味いぞ」 「ありがとうございます。頂きます」 稔は空いたお腹を満たすために食べ始めた。 「美味しい~♪」 「そうだろう?」 店長は稔の行儀の良さに興味を持った。 お金のない世界ではどんな教育を受けたんだろう? レストランの経営はどんな仕組みなんだろう? いろいろ聞いてみたくなった。 「なあ、稔君。しばらくうちに来ないか?」 「うちって?」 「僕の家にも君のような男の子がいるんだ」 「何年生?」 「中学一年生なんだけどね」 「僕より一つ上なんですね」 「違う世界の話も聞きたいし。どうだろう?」 「はい。よろこんでお邪魔します」 「よしわかった。今日はこれで店を閉めよう」 入山禁止の山から三人は山から下りることにした。
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最終更新日
2020年02月22日 00時00分13秒
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