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カテゴリ:読書 ノンフィクション
金子勝という経済学の教授の立場はある意味一貫しているというか、分かりやすい立場にいます。
小泉首相時代の構造改革時代から構造改革に対しボロカスに批判し、その中核はセーフティーネットの欠如という問題です。 本著も基本的にはセーフティーネットの欠如という問題を軸として、グローバリゼーションというタイトルのアメリカによる世界覇権主義としての各国に対する無茶ブリを批判し、自分たちの事を棚に上げて、日本やアジア諸国を仲間内経済主義者とボロカスに言ってきた事が、ブーメランとして跳ね返ってきている現状と、市場原理主義、金融市場の大暴走の結果としてのバブル崩壊。 このバブル崩壊と日本のバブル崩壊後の処理のまずさと被る部分が沢山見受けられる事と、日本以上に規模の大きさと、金融派生商品という時限爆弾による不良債権の実態のつかめなさ、モラルハザードなどをひっくるめて解説というか、批判というかですね。 基本ラインとしては、理解しているものではありますが、経済対策として既存の経済学そのものが通用しなくなっているという事は分かっている事でしたが、新古典派経済学理論とケインズ経済学の理論を行ったり来たりした振れ幅のある対策を繰り返している事が、むしろ事態をグダグダにしているというのは、面白い視点というか、そう言われればそうだよなと。 ある意味金持ちのエゴやらモラルハザードやら利権構造をぶっ壊さない限りどうしようもないという事が出発点になるかなぁって、当たり前すぎますけどもね。 極論に突っ走る事や単純な二項対立でのみ考えようとする事の愚かさを指摘しているなど、真っ当な部分が多く示されていますが、引っかかったのは、多極化時代への対応として想定せざるを得ないEUのような地域経済協力が東アジアと非常に狭い範囲で想定している事ですかね。 日中韓の三国で経済協力という視点は、結局のところ政治的に足を引っ張り合うだけに終わる可能性ばかりがあり、日本にとってのメリットよりもデメリットの方が多いのではないかと。 まだまだ、格差が大きいとはいえ地域的な協力関係を築くのであれば、政治的な駆け引きだけに終始するような東アジアという単位ではなく、それこそ東南アジアやインドくらいまでの地域を視野にいれないと無意味だろうなって。 はしがき 私たちを襲うデジャヴ 第1章 過ぎ去った時代軸 1 経済政策における二分法の終焉 2 グローバリゼーションの本質 冷戦なきヘゲモニー 3 歴史的転換期の危うさ 第2章 もう1つの不毛な対立軸 グローバリズム対ナショナリズム 1 未来なきグローバリズムへの追随 2 新手のナショナリズムの登場 3 モラルなき資本主義 第3章 バブル循環 1 グローバルスタンダードとは何だったのか 2 景気循環の変質 3 レジーム転換が始まった 4 まるでデジャヴのようだ 長引く金融危機 5 アメリカの金融危機との違いは何か 第4章 産業の波動と長期停滞 1 失われた経済学の有効性 2 産業の長期波動 3 取り残される日本 第5章 グローバリズムへの対抗戦略 1 二つの戦略 2 グローバリゼーションの歴史的意味 3 下方へ向かうセーフティネットの張り替え 4 公共空間を埋め込む戦略 第6章 アジアでのリージョナル戦略 1 通貨防衛と地域経済統合 2 世界金融危機と「東アジア共同体」の役割 第7章 社会保障改革と政府の再編 「構造改革」路線からの決別 1 揺らぐ年金制度 2 年金改革 五つの戦略ポイント 3 税源移譲を含めた本格的地方分権化を 4 構造改革路線への対抗戦略 第8章 市場を作り変える戦略 1 ルール・カップリング戦略 2 第三者評価の機能を持つアソシエーション 3 閉鎖性を打破して市場を変える 4 この対抗戦略の主役は誰か 5 社会発展の多様性を理解しあう共通言語 終 章 持続できる社会 21世紀型資本主義の新しいありかた 1 失われる社会の再生力 2 エネルギーと食料の自給を 3 雇用と社会保障制度の再生を 4 維持可能な行政システムを 新・反グローバリズム お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年04月06日 21時03分47秒
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