穴馬発見☆資料置き場(倉庫)

天皇賞(春)

2004年/天皇賞(春)


・CONTENTS・
  天皇賞(春)       ※タイトルをクリックしてください




レース展望
危険な人気馬
血統で読む
展開を読む
レース回顧




春の天皇賞、阪神大賞典との関連性
阪神の上がり1000を60秒以内は、やや危険
血統から見た、買いにくい馬券は?
展開面からはイングランディーレが怖い?
横山典ジョッキー、絶品の騎乗




wrote:2004/4/27

展望 春の天皇賞、阪神大賞典との関連性

<**レース展望/2004年 天皇賞(春)**>

 G1レースでは、毎週末の重賞レースよりも「イメージ先行」で人気がつくられやすくなる。たとえば「ステップレースを鮮やかに勝った(ように見える)馬」に「武豊騎手」が乗って、さらにそれが「サンデー産駒の良血」だったりすると、ちょっと過剰じゃないかと思えるほどに売れまくる。
 こんなときこそ、各馬の実力と適性をしっかり把握して馬券を買いたいもんだなあと思う。思うんだが、しかしどうしても「イメージ」に飲み込まれたり、逆に「イメージ」を過剰に意識しすぎたりして、考えに考えた挙句ヘンな馬を買ったりするのが、穴党の微妙なところ。
 今年も、リンカーンの一番人気が、ほぼ確定的だ。豊さんも毎度毎度、大変なのだ(笑)。戦歴的には、ネオユニヴァースやザッツザプレンティよりも格下の「単なる重賞1勝馬」。4強と目される中ではレースキャリアがやや見劣りするリンカーンだが、もしかすると今回は単勝1倍台かもしれない。豊さん、ダンスインザムードのように、今回も鮮やかに勝ちきるレースができるだろうか。


 春の天皇賞を予想するときのポイントは、「阪神大賞典の結果が直結するのかどうか」という点だと思う。
 距離が3200mと3000m、ほとんど変わらないから、たいてい阪神大賞典の上位馬が、春の天皇賞では1番人気・2番人気といった 顔ぶれになる。しかし、この2つのレース、ラップの比較をするとまるで違う表情を見せる場合が多いのだ。
 3000m級のレースは、1000の通過を見てもほとんど意味がなくて、流れが厳しいのかヌルいのかは、2000mの通過ラップを見たほうが判断しやすい。・・・というわけで、下の表に、過去10年間の「2000m通過ラップ」を対比させてみました。(1994年は阪神大賞典が中京2800m、本番天皇賞が阪神3200mでの施行なので除外。)

◇阪神大賞典と天皇賞、
  2000の通過ラップ比較
年度 阪神大賞典 天皇賞
1993 (良)2分5秒9 (良)2分4秒0
メジロパーマー ライスシャワー
1995 (稍)2分9秒9 (重)2分7秒2
ナリタブライアン ライスシャワー
1996 (良)2分7秒1 (良)2分6秒5
ナリタブライアン サクラローレル
1997 (稍)2分4秒9 (良)2分3秒8
マヤノトップガン マヤノトップガン
1998 (良)2分10秒3 (良)2分9秒9
メジロブライト メジロブライト
1999 (重)2分10秒5 (良)2分3秒6
スペシャルウイーク スペシャルウイーク
2000 (稍)2分6秒9 (良)2分6秒8
テイエムオペラオー テイエムオペラオー
2001 (良)2分3秒2 (良)2分2秒4
ナリタトップロード テイエムオペラオー
2002 (良)2分10秒0 (良)2分9秒4
ナリタトップロード マンハッタンカフェ
2003 (良)2分6秒4 (良)2分3秒8
ダイタクバートラム ヒシミラクル

 「本番は流れが厳しくなりますから」などとイメージ的な発言をする人が多いが(笑)、実際に調べてみると一目瞭然、本当に「本番は流れが厳しくなる」のだった! 過去10年、2000の通過タイムは、上記の表の通り「馬場に関わらず必ず天皇賞のラップの方が速い」。

 天皇賞の方が必ず厳しい流れになる、ということが意味するものは、
 (1)少頭数になりがちな阪神大賞典では、道中緩いペースになって、ラスト1000の切れ味比べになりやすい。
 (2)前哨戦で「ラスト1000の切れ味比べ」を制して駒を進めた人気馬が、スタミナを要求される流れに対応しきれないとき、天皇賞は荒れるパターンになる。

 今年の阪神大賞典は、リンカーンのフィニッシュが際だっていた(ように見えた)レースだったが、実は2000の通過が2分9秒2の超スロー。典型的な「ラスト1000の切れ味比べ」になったレースで、サンデー産駒が最も得意とするレースパターンだった。渋いステイヤーの多いダンスインザダーク産駒は、あの展開だと厳しい。アンカツさんもリンカーンの脚を計れて、納得の一戦だったのではないだろうか。
 本番は間違いなく、ダンスインザダーク産駒をはじめとする「スタミナ自慢」たちが早めのスパートで、切れるサンデーにはやや厳しい流れが待ち受けている。菊花賞のようにザッツザプレンティが3角から前々で仕掛けたとき、リンカーンやネオユニヴァースはさっと動いてついていけるかどうかが鍵。騎手の腕比べも、大きな見どころだ。

 切れすぎるサンデー産駒たち、今回の天皇賞は「距離はもつだろう」というような曖昧な判断ではなくて、「ステイヤーかどうか」をしっかりと見極めてから馬券の検討をした方がいい。  

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wrote:2004/4/28

人気馬 阪神の上がり1000を60秒以内は、やや危険

<**危険な人気馬/2004年 天皇賞(春)**>

 馬券というのは実はかなりシンプルな遊びで、「強いと思う馬を買う」「あまり強くないかもしれないと思う馬は、あまり買わない」「弱いと思う馬は手を出さない」と、たったこれだけのことで成り立っている。
 僕の場合、日曜の夕方に翌週の登録メンバー見た瞬間、たいてい「こりゃ危険な人気馬だなー」と思う馬がいるんだが、その根拠は、必ず「勘」だ(笑)。あとからいろんな理由をもってきて、その「勘」を裏付けていく、という作業になる。いい例が皐月賞のブラックタイドだった。この「勘」がうまくハマれば払い戻しにありつけるし、間違ってたら金をなくすだけ、というのが、なにしろ馬券のいいところ。流行の言葉で言うと自己責任(笑)。
 先週、福島牝馬Sのコラムで「このメンバーで福島の1800を走らせたらどれが強いか、という具合に読むしかない」というようなことを書いたが、これこそが、あらゆるレースの予想の極意だ(笑)。みんながそれぞれに、「強いと思う馬」「応援したい馬」を買おう。みんなの考えがそれぞれに、予想の極意だ。結果は、また別の話。
 だから、「これこれの人気馬は危険ですから皆さん手を出さないほうがいいですよ~!」などと、レース前に誰かを「説得」しようとするのはまったくナンセンスで、僕がこの「危険な人気馬」を書くときには、読んでくださる方を説得しようなどとはまったく思っていない(ので、あらかじめご了承くださいね)。逆に言うと、このコラムで取り上げる馬を否定するつもりもまったくないので、どうかご了解を。あくまでも「一つの見方」に過ぎませんのです。


 それでさっそくなんですが天皇賞の危険な人気馬は「ネオユニヴァースとゼンノロブロイとリンカーン」で、その根拠は「はい、勘です(キッパリ!)」と言うと、場合によっては殴る蹴るの暴行を受けるかな??(笑)
 根拠を求めるとすれば、昨年の菊花賞だ。あのレースは、ザッツザプレンティが本格派のステイヤーとしての資質を存分にアピールしたレースで、ラスト4ハロンのラップはまさに芸術的だった。
 ※菊花賞のレース回顧※
 デムーロが判断抜群にサッと早めに前を追いかけて行きながら、最後脚いろが一緒になったネオユニヴァース。4角で進路がなくなったとは言え、完敗だったゼンノロブロイ。特にこの2頭は、どんなに鞍上がうまく捌いても、3000m級のレースでは、ザッツザプレンティが完調ならば、もうかなわないと思えるレースぶりだった。特にネオユニヴァースにとっては、精神的にかなり負担の大きいレースだった可能性がある。この2頭の単勝は、ワタクシ的にはとても買えない。

 リンカーンはいかにもレース振りがサンデーらしく、切れすぎるという点が引っかかる。
 過去10年で、阪神大賞典が「2000の通過が緩い流れ→→ラスト1000が60秒未満の上がり比べ」になった年が6回あるが、そのケースで天皇賞も勝ったのはメジロブライトだけ、という結果が出ている。メジロブライトの年は阪神大賞典も天皇賞も超スローで、2000の通過が2分10秒3(阪神)、2分9秒9(天皇賞)と、きわめて似通ったラップ構成になった年だった。※阪神大賞典が中京2800だった1994年を除いて、過去10年。
 印象的だったのは、1996年のナリタブライアンだ。阪神大賞典で、マヤノトップガンとの伝説に残るロングスパートの叩き合いを制して、上がりが57秒8。本番では断然の一番人気に支持されたが、しかし本格派ステイヤーのサクラローレルに完敗の2着だった。

◇阪神大賞典、上がり60秒未満で
  勝った馬の天皇賞成績
年度 馬名 阪神大賞典の上がり 春天成績
1995 ナリタブライアン 58秒3 不出走
1996 ナリタブライアン 57秒8 2着
1998 メジロブライト 59秒0 1着
2001 ナリタトップロード 59秒3 3着
2002 ナリタトップロード 57秒9 3着
2003 ダイタクバートラム 59秒5 3着
2004 リンカーン 59秒2 ??

 今年は、阪神大賞典の上がりが、59秒2だった。2000の通過が2分9秒2の超スローで、上がりのキレ比べを制したリンカーン、本番でははたしてどんなレースを見せてくれるだろうか。豊さんの手綱捌き、今回はいつもに増して、注目だ。

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wrote:2004/4/29

血統コラム 血統から見た、買いにくい馬券は?

<**血統で読む/2004年 天皇賞・春**>

 さすがにゴールデンウイーク直前は微妙に色々忙しくて、夜中に半分眠りながら過去20年分の血統をチェック(笑)。でもやっぱり過去20年の歴史見てると実に面白いもんだから、ついつい血統表見過ぎて朝寝坊したりしてます(^^;
 春の天皇賞は、その時代時代のチャンピオン種牡馬が勝ち馬を出していたり、単純に「ステイヤー」の誉れ高い種牡馬が勝ち馬を出している年があったり、そうかと思うと「どんな種牡馬なのかよく解からない」というタイプの馬が勝ったりもしていて、実にバラエティに富んでいる。
 例によって配合も含めてかなりじっくりと見てみたんだけど、いくつか傾向らしきものがあったので、馬券の助けになりそうなのだけを簡単にご報告。
※当サイトの血統コラムをはじめて読んでくださる方は、左のコンテンツページから『2004年皐月賞』の欄をクリックして、そこでまず入門編を読んでいただけると、かなりわかりやすくなります。m(_ _)m


1.恒例の異系調査、「ファラリス系だけ」は例によって1割
 代々配合されてきた種牡馬が4代連続「ファラリス系」の馬は、G1では苦戦の傾向・・・というのが当サイトの仮説で、そういう馬の連対率はだいたい1割程度というのがこれまでの結果。春の天皇賞も過去20年さかのぼって連対馬をすべて調べてみたが、延べ40頭のち、「ファラリス系を4回連続」という血統で連対したのは、5頭だった。

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 ※過去20年間で「4代がファラリス系のみ」の血統で連対した馬※
  ○1995年 ステージチャンプ(2着) 母ダイナアクトレス
  ○2000年 テイエムオペラオー(1着)
  ○2001年 テイエムオペラオー(1着)
  ○ 〃   メイショウドトウ(2着)
  ○2003年 サンライズジェガー(2着)
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 見てのとおり、過去20年で、勝ったのはテイエムオペラオーだけだ。(今思うとミラクルホースだった!)
 そして今年の出走馬で、やや微妙な「4代がファラリス系のみ」という血統の馬は、以下のとおり。

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 ※2004年/「4代がファラリス系のみ」の出走馬※
  ○ダービーレグノ
  ○サンライズジェガー
  ○チャクラ
  ○リンカーン
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 リンカーンから買おうと思う場合、ここにあがっているのは相手としては穴っぽいところがそろってるが、しかし過去20年で「4代がファラリス系だけ」の馬同士で決まったのは、2001年のテイエムオペラオー×メイショウドトウの一度しかない。いちおうそのことを知ったうえで、金額配分したほうがいいかも?
 あとはやはり、過去の傾向から見る限りでは、この4頭の単勝は買いにくいという結果だ。うーん、リンカーンははたしてどうだ? いや、テイエムオペラオー級だろう、と思う場合はむしろ黙って単。


2.京都はやっぱりノーザンダンサー系?
 京都の芝といえば、個人的にはすぐに「ノーザンダンサー系」というイメージだが、天皇賞(春)も、過去20年を調べてみるとかなりハッキリした傾向が現れていた。連対馬の多くが、次のいずれかのタイプなのだ。
  ※「父」がノーザンダンサー系
  ※「母の父」がノーザンダンサー系
  ※「父」がナスルーラ系
  ※「母の父」がナスルーラ系
 もちろんこうじゃない馬もいるが、傾向としては「ノーザンダンサー系かナスルーラ系に要注意」というのが歴然としている。ほぼ毎年、連対馬のどちらか(あるいは両方)が上の条件に当てはまっていて、1着馬・2着馬が両方ともそうでなかったケースは、過去20年で2回しかない。しかもずいぶん古くにさかのぼるもので、1985年、シンボリルドルフが勝った年と、1987年、ミホシンザンが勝った年のことだ。
 今年の出走馬で、「父」&「母の父」がいずれも、ノーザンダンサー系でもナスルーラ系でも「ない」馬は、次の4頭。

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 ※2004年/ノーザンダンサー系、ナスルーラ系のない出走馬※
  ○ザッツザプレンティ
  ○ファストタテヤマ
  ○ネオユニヴァース
  ○ゼンノロブロイ
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 4強のうち3頭までがここに入ってしまったが、血統から見る傾向としては、この4頭の馬連ボックス馬券は、もう14年間ものあいだ一度も出ていないタイプの組み合わせだということになる。これを偶然と考えるか、それとも「レースが要求する能力」が端的に出ていると見るかはやや微妙だが、「このタイプの組み合わせは、過去20年間でたった2回」という事実自体は面白い。


3.淀の3200、母父ミスプロ系は苦しい?
 ミスタープロスペクター系と言えば、日本ではやはり「ダートの短距離で強い」というイメージ。天皇賞(春)では過去20年間に、「母の父ミスタープロスペクター系」で連対したのは、2000年のラスカルスズカ(2着)のみというデータがある。
 ラスカルスズカの母の父は、Miswaki(ミスワキ)。これはミスタープロスペクター系としては抜群に距離をこなす種牡馬で、凱旋門賞を勝ったアーバンシーを出したほどだ。日本でもサイレンススズカの母の父がMiswakiだし、菊花賞を勝ったザッツザプレンティの母の父もMiswakiだから、これは心配ないと言って良さそうだ。
 心配があるとすれば、ゼンノロブロイの方か?母父マイニングは、いかにも「ダートのスプリンター」というイメージで、スタミナを供給してくれる系列の種牡馬でないことだけは確かだ。
 まっ、そんな心配は杞憂に終わるかもしれないけれど、これまで春の天皇賞の歴史で、「母の父ミスタープロスペクター系」は一頭しか連対歴がないのは事実。今年で言うと、母の父ミスタープロスペクター系同士の、ザッツザプレンティ×ゼンノロブロイという馬券は、少し手が出しにくいかもしれない。


4.ずいぶん「同じ母系の馬」や「同じ馬」の連対が多い
 古くはモンテプリンスとモンテファストの全兄弟が勝ったのをはじめとして、1986年の2着馬メジロトーマスと、91年と92年の2度優勝したメジロマックイーンは、2代母が同じ(メジロアイリス)。ビワハヤヒデ&ナリタブライアンの兄弟も、両方連対している。
 最近でも、2回以上連対した馬がイナリワン(89年1着、90年2着)、メジロマックイーン(91年・92年1着、93年2着)、ライスシャワー(93年1着、95年1着)、サクラローレル(96年1着、97年2着)、メジロブライト(98年1着、99年2着)、テイエムオペラオー(00年1着、01年1着)と、こんなにもいる。
 これらの馬が強かったのももちろんだが、「京都3200mへの適性」という点も、やはりかなり重要なのではないか、という気がしてきた。
 そういう点では、去年2着だったサンライズジェガーなどは、もしかするとこのコースへの適性抜群で、あまり軽く扱うわけにはいかないのかもしれない。ほかでは、ファストタテヤマの3代母はクリアアンバーという馬で、これは1983年に勝ったアンバーシャダイのお母さんだ。
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wrote:2004/4/30

展開を読む 展開面からはイングランディーレが怖い?

<**展開を読む/2004年 天皇賞(春)**>

 イングランディーレが怖いと言っても、この場合「イングランディーレがマイペースで逃げたら、残ってしまう場合があるのではないか?」という意味ではない。そうじゃなくて、今年の天皇賞(春)は本当にペースが鍵を握っていて、「スロー」と見るなら切れ味で勝るサンデー産駒から買うレースになるし、「平均ペース以上」と見るならば、ステイヤーを買うべきレースになる、という意味だ。

 で、ソレの何が怖いのかというと、ズバリ、イングランディーレに乗る横山典弘騎手。
 この人は「道中馬なり」派の巨匠で、どんなに離されても平気で「ポツンとしんがり最後方」を決め込める、度胸満点のジョッキーだ。その騎乗法の良いワルイは全く別として、おそらく横山典弘Jの騎乗テーマは、明らかに「4角までなるべく馬に負担をかけずに持ってくること」。
 このタイプのジョッキーが逃げ馬に乗ると、非常にやっかいな存在となる。おそらくペース配分は絶妙だ。3角過ぎまでは本当に、ラクに馬を持って来るに違いない。スタミナ勝負に持ち込みたいから、仕掛けのタイミングもスパートも、間違いなく早めだ。


 3角まで楽に行った「スタミナ抜群の逃げ馬」が、早めにスパートしたときにどういう展開になるか、少し考えてみよう。
 そのすぐ後ろにいそうなザッツザプレンティも、「これはおあつらえ向き」と、早めのスパートを追いかけて、スタミナ勝負に持ち込む公算が高い。後ろにいるリンカーンもネオユニヴァースもゼンノロブロイも、ここで先に抜け出されて菊花賞の二の舞はまずいから、マークして追いかけていく形が濃厚だ。
 つまり、平均ペースで行った上に、なおかつ3角から4角までが、もしかすると異常に速くて苦しい流れになる場合がある(かもしれない)のだ。横山典弘をあまりラクに行かせたくないから、たぶんアンカツ・ザッツは4角で前を飲み込みに行く。すると、この3角から4角~直線にかけてのラップが、もしかすると、11秒台の前半になってしまうかもしれない。

 もしそんな展開になったら大変だ。
 そうなったら、勝つのも2着の馬も、「最後の1ハロンで物凄い脚を使ったステイヤー」というレースになる。その場合、どうしても動き出しが早くならざるを得ない4強は、ヘタをすると全部飛んでしまう場合も、あるかもしれない。
 イングランディーレがマイペースで行って4角手前まで粘るとき、3~4角のラップが物凄いことになりそうで、そういう意味で「イングランディーレが怖い」のだ。
 そして、万が一、イングランディーレが単騎先頭で4角をラクにクリアするシーンがあるようだと、今度は馬券的にこの馬の残り目が怖いラップになる。

 去年本命にした馬だし、うーん、一応ちょっとだけ押さえておくかな~(笑)

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wrote:2004/5/3

動く回顧 横山典ジョッキー、絶品の騎乗

<**レース回顧/2004年 天皇賞(春)**>Race・2004/5/2

 1000万条件のダート戦でまったく泣かず飛ばずだったイングランディーレを「芝の長距離」で大変身させたのは、去年までの主戦だった小林淳騎手の手腕によるところが大きい。彼は、レース中に必ず一度は勝負の姿勢を見せてくれる騎手で、なかなかの個性派、隠れた名ジョッキーの一人だとさえ僕は思う。
 しかし去年挑戦した春の天皇賞は、残念ながらイングランディーレにまったく不向きなレースとなってしまった。アルアランが速いラップで逃げて、さらにそれをタガノマイバッハが追いかけるという展開。ハナを叩いて逃げるわけはもいかないラップの構成で、流れが向かず9着に敗退したが、小林淳騎手の乗り方がまずかったわけでは決してなかった。
 ・・・と、前任者小林淳騎手を高く評価した上で、さらに去年と今年の展開面での大きな違いを十分に承知した上で、それでもなおかつ、こう言いたい。
 「一流と言われるジョッキーは、やはりここ一番で凄い!」
 それはもちろん、2004年、春の天皇賞を勝った横山典ジョッキーのレースぶりのことなのだ。
 その理由はラップにある。↓↓↓
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   13.2 -
   12.0 - 12.0 - 12.0 - 12.7 - 12.3 -
   12.1 - 13.5 - 12.8 - 12.4 - 12.7 -
   12.4 - 12.2 - 11.6 - 12.1 - 12.4

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 今回、「切れ味のまったくない重厚なステイヤー」イングランディーレを勝利に導いたのは、おそらく上のラップの赤い数字の部分<12.1 - 13.5 - 12.8> だった。わずかにこの2ハロンの緩急で後続を金縛りにしてしまった彼の騎乗は、巷間言われるような<なにか不可解なレース><恵まれての勝利>ではなくて、もっと賞賛されていい。


 少し詳しく見ていこう。
 まず、ゲートを出て最初の<12.0 - 12.0 - 12.0>の部分。ここはスタートしてすぐハナを主張したあと、向正面から最初の4コーナーに入るあたりのラップになる。ここで<12秒0>が3回連続しているが、これだと後続はたぶん「すこし速い」というイメージになるはずだと思うのだ。事実、4角を回るところで、もうすでに馬群は十分バラけ始めていて、イングランディーレはこの時点で、かなり簡単にレースの主導権を奪っている。ここが横山典騎手、まず第一のファインプレイだった。
 そこから最初の直線はいったん<12秒7>とすこし緩めたが、そのあと最初のホームストレッチを<12秒3-12秒1>と、ここもやや速め。依然として「流れはやや速い」というイメージを演出しながらレースを進めて、この時点で隊列は完全に縦長。各馬それこそ「虎視眈々」というポジション取りだ。
 京都・長距離G1のいつもの流れなら、このまま淡々と進んで行って、向正面でややラップが落ちる。そして3角でにグッと馬群が詰まって一気にクライマックスへ・・・というのがおなじみのパターンだ。
 しかし今回は、3角で馬群が詰まるどころか、逃げるイングランディーレに誰もまったく詰め寄って行かなかったのだ。
 いったい、後ろから行く馬に、何が起こったのだろうか。
 実際は、「3コーナーで誰も行かなかった」のではなくて、おそらく「誰も行けなかった」のではないだろうか。
 その理由が、赤数字にした<12.1 - 13.5 - 12.8> の部分にある。ここが今回の横山典、サプライズマジックだった。


 この赤字の部分は、 レースの流れの中で言うと、最初の直線を走り終えて1コーナーから2コーナーに向っていくあたりのラップとなるのだ。
 「(1)やや速めで流れてきて、(2)そいして2コーナーでやや落ち着き、(3)向正面で一息入れる」という流れなら京都の長距離でよくあるラップの構成だが、しかし横山典は向正面を待たずに、なんと1角の大きなカーブを回りながら、急速に減速しいるのだ。これが、<12.1 - 13.5>の部分。向正面で楽をさせると後続の各馬も詰め寄ってくるが、この時点では各馬まだ力を温存したいから、誰も詰め寄ってきたりはしない。横山典騎手は、ここでまんまと、一気に1秒4もラップを落としてしまった。この早い段階でイングランディーレに一旦楽をさせて、そしてそのあとの1200mぐらいを、また平均ペースの流れに持ち込んで押し切ってしまったのだ。後続が何もできずに金縛りになってしまうのも、無理はなかった。

 馬群はこの大きなコーナーを回りながら、いっそう縦長になっていた。コーナーワークで加速するとどうしてもカカり気味になりがちだし、後続各馬がお互いを意識しすぎたためもあってか、ついつい、ここで追い詰めていくタイミングを失ってしまっていたのだ。これが、レースのポイントだった。イングランディーレが向正面に抜けた時には、もう、完全な独走態勢に入っていた。
 このとき、ここのラップがガクッと落ちたことに惑わされないで、サッと前々に詰めて行ったのは四位騎手ただ一人。ここは彼の好判断で、このとき前を追いかけて行ったことが3着という好成績につながったのではないか、と思う。
 1~2角で横山典騎手が急激に減速したことによって、前の組が知らず知らずに楽をして、全体に前残りの競馬になった、というのが2004年・春の天皇賞のポイントだった。逃げ馬に乗っていて、大一番でこんな凄い演出のできる騎手というのは、そうそういない。
 道中ストライドのバランスが抜群だった4番手のゼンノロブロイがちょい差しで2着、2コーナーでグッと前に詰めて行った四位のシルクフェイマスが3着となった。


 横山典ジョッキー、まさに会心の騎乗だったろうなあ。
 3200mを走って、最速のラップが、なんと最後から3番目の 11秒6だ。これは4コーナーから直線に入る部分のラップで、大逃げしてる馬がここでこのラップだと、後ろはもうまったく手も足も出ない。後続が誰も前を追いかけていかなかったからレースの評価は「低レベルの凡戦」「ほかの騎手はいったいナニを?」というトーンのものが多かったが、それは違う。横山典が巧みなラップの魔術で、後続が仕掛けるタイミングを完全に奪ってしまったのだ。
 インタビューでは控えめな発言をしていた横山典ジョッキーだが、3コーナーから4コーナーにかけての1ハロンで<11秒6>の脚を使えた時点で、もう勝利を確信していたのではないか?先週のコラムで<馬なり派の巨頭は逃げ馬に乗せると、本当に楽々馬を持ってきそうで怖い>というようなことを書いたが、実に素晴らしい騎乗だった。

 人気になっていたサンデー系各馬のレースぶりもじっくりと見てみたが、どうもサンデーの差し馬は、グレードの高いレースで多頭数になるとまったく燃えない、というレースぶりが多いような気がしてならない。今回のゼンノロブロイみたいに、「目標になる馬を一頭か二頭に絞ってやって、それを交わさせる」というレースぶりなら高いパフォーマンスを見せるが、グレードの高いレースで、後ろから行ってたくさんの馬を差す、という競馬ぶりを、そう言えばあまり見たことがないような気がする。皐月賞も、「前に交わすべき目標が1~2頭しかいなかった」というダイワメジャーが勝ったレースだ。宝塚記念まで、春のG1はそのあたりも一つの見どころかもしれない。


 宝塚記念と言えば、もし出てこられるならばナリタセンチュリーが穴かもしれない。天皇賞は横山典が演出した完全な前残りの流れだったが、後ろから突っ込んできた中でもっとも迫力のあったのが、この馬だった。次走、4角まで楽に力を温存させられる騎手が乗るなら、十分馬券圏内と思えた。
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