山口雅也「生ける屍の死」
本日ご紹介するミステリーは、山口雅也さんの「生ける屍の死」です。●あらすじニューイングランドの片田舎に広がる霊園を経営するバーリイコーン一族。その頂点に立つスマイリーの命はそう長くはないと思われていた。死者が蘇るというニュースが全国に広がり始めた頃、遺言状の書き換えをすると一族の人々が集められた。●簡単な感想死者が蘇る話ですが、それについての説明などはありません。「死者が蘇る世界の話」として割り切って読むものだと思います。変わった設定ですが、この世界観ならではの話で面白かったです。話が冗長な部分が結構あるので、他の作品ではそうでないといいです。以下はネタバレを含む感想です。読まれた方のみ反転してご覧ください。主人公死亡は最後付近だとないこともないですが、序盤でというのは珍しいです。死者が全員生き返るという設定ではなかったと思うので(作中で殺された人はなぜかみんな生き返りましたが、ハウンドさんは生き返ってないですし)「死者が生き返る世界でなぜ人を殺すのか」というテーマは少々腑に落ちませんでした。犯人のアグレッシブさはすごいです。死亡して生き返って自由に動き回れることに気が付いて即殺しに行くというのはなかなかできません。犯人の目の白濁はどうやってごまかしていたのか気になりますが、お年寄りなので元々にごり気味だったとかでしょうか。グリンでも死亡後長く生きていた印象があるので、それより前に死亡していた人が二人いましたというのは驚きです。防腐剤でどの程度もつのかの具体的な話があると良かったです。話をややこしくするだけの設定(双子や記憶喪失の人など)が多すぎたかな、とも思いました。特殊な設定の話なので、そこだけに絞っても十分楽しめたのではないかと思います。最後の終わり方は良かったです。以上です。