石持浅海「撹乱者」
本日ご紹介するミステリーは、石持浅海さんの「撹乱者」です。1話から話が繋がっている短編集です。●あらすじ現政府の転覆を目論むテロリスト集団。同じ細胞に属していて、一緒に働くことの多い久米、輪島、宮古は一見テロとは関係のなさそうな仕事を依頼される。●簡単な感想久しぶりの石持さんのテロ物です。以前の作品とは関係がありません。1話から3話までの話の構成が似すぎていて途中で飽きてしまいましたが、4話目からはそれほどでもなくなりました。以下はネタバレを含む感想です。読まれた方のみ反転してご覧ください。情に流されて本来の目的を達成させなかった三人の中途半端さが気になりましたが、最後が最後だったのでそれも納得しました。けしかけた、とまで言うと言い過ぎかもしれないですが串本さんが無事なのは納得しがたいですが。知りたがったのは三人なわけですから串本さんに全責任があるとまでは言いませんが、話をした後でそそのかしたのは串本さんだと思いますし。入れ知恵をしなければ余計なことはしなかったかもしれないです。それで「考えさせるため」というのもどうなのかな、と思いました。結局、全員が串本さんが誘導した方向に向かってるわけですし。三人からすれば自分で考えた末の行動ではあるのでしょうけど。宮古を助けられた久米さんは距離的にも状況的にも無理があった気がするので、その辺りをもうちょっと説明してもらいたかったです。宮古は川から離れたわけで、赤い風船に近づいたからと言って、割る確率はずいぶんと低いわけですから、赤い風船に近づいたから釣竿を捨てて宮古の元に駆けつけるというのは梢の存在があることを考えると「恋人が心配だったから」では済まないように思いますし。身を呈して恋人を助けるのはロマンチックではありますが、もう少し自然な話の流れになると良かったです。以上です。