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車田のつぶやき

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2013.05.17
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仕事について

前回2回、日本の商品市場について書きました。「車田のつぶやき」ではコモ
ディティをはじめとしたデリバティブについて書くことが多いのですが、今回
と次回の2回は趣向を変えて、仕事について書きます。


社会人1年生

今年2013年の4月に新社会人となった方も、就職から2か月を経てそろそろ社会
人としての生活に慣れてきたことと思います。
つい最近のような気がいたしますが、私が社会人になりましたのは、1983年の
4月で、30年前になります。今は経産省になっていますが、当時の通産省に入
省しました。そして、通商政策局の総務課という課に配属になりました。現在
ですと、通商政策局の通商政策課です。入省時の通商政策局長のNさん、6月に
その後任で来られたSさん、ともに入省年次では29年上の先輩でした。私と親
子ほどの歳の違いがあり、とても立派で、一方シニア(お歳)に見えました。今
年の新社会人が私に接した場合、当時のお二人のように立派には見えないと思
います。せめてもは、当時のお二人のようにシニアには見えないだろう、と秘
かに自分を慰めています。


一人でする仕事

社会人なりたての頃を思い出して仕事のことを考えますと、「一人でする」と
いう言葉が浮かび上がります。


土曜の午後

国家公務員は、1988年から隔週週休二日制、1992年から完全週休二日制になり
ましたが、私が入省した当時は土曜日も仕事でした。ただ、半日勤務ですので、
夜遅くまで皆が仕事をしている平日と違い、土曜の午後にはオフィスの人影が
なくなっていました。
当時はメールなどありませんでしたので、入省1年生の最大の仕事が資料のコ
ピーとその局内各課への配布でした。これと、国会対応の連絡と答弁書セット
で、平日の朝から深夜までのほとんどが費やされていました。このため、各課
が起案した決裁文書を処理するのが、どうしても土曜日の午後になっていまし
た。自分以外誰もいない課の部屋で、この決済の対象となっている制度はどの
ようなものかとの資料をじっくり読み込みながらの仕事です。日比谷公園に接
した庁舎でしたので、開け放った窓から日比谷公園の野外音楽堂(略して「野
音:やおん」といいます)のコンサートの音が聞こえてきていました。


土曜の午後に一人でする仕事

社会人なりたての30年前のことを考えますと、すぐに浮かんでくるのが、遠く
の「野音」の響きを耳にしながらの、この一人でする仕事です。多くの人が楽
しく過ごしている花の土曜日の午後にもかかわらず、自分一人が仕事をしてい
ることについて、多少のもの悲しさを感じました。が、調べながら一つ一の決
裁文書を処理することによって、通商政策局が所管している制度を知り、役所
の仕事を身につけることは、少しずつ実力をつけることになるはずとの充実感
がありました。


石油化学工業

1984年の9月に、当時の基礎産業局の基礎化学品課に異動になりました。現在
ですと、製造産業局の化学課です。プラスチックやビニールの原料を製造する
石油化学業界を担当する課です。
当時、サウジアラビアに建設中の、安い天然ガスを原料にした石油化学プラン
トが稼働することによって、アジアの石油化学品が供給過剰に陥ることが懸念
されていました。製品価格の値崩れと販売量の縮小とによって、日本の石油化
学業界が危機に陥る可能性すら感じられていました。通産省としては、業界と
密接に話し合いながら、法律に基づいた共同の設備廃棄や、高付加価値化学製
品への転換の誘導を行っていました。


農業用マルチフィルム

1985年、入省3年目の若造でしたが、アジアの石油化学品の需要が増えれば日
本の石油化学業界は値崩れも販売量縮小にも陥らないと考えました。
業界の方と色々話している中で、中国において農業用のマルチフィルムの需要
を拡大することが有効であるとのアイデアが浮かびました。まだ発展途上国だ
った当時の中国では、食糧増産が重要な国家課題でした。マルチフィルムとは、
mulching filmの略で、訳しますと土面被覆フィルムです。畑のうねにかぶせ
られた黒や銀色のビニールのシートのことです。種や苗をこのフィルムで覆う
だけで、保温と保水の効果が生じ、収量が増加するのです。
中国の各地のさらには各作物に最適なマルチフィルムの研究開発に成功して、
マルチフィルムの需要が拡大すれば、アジアの石油化学品需給の悪化が防げま
す。そして、このマルチフィルムは、中国の食糧増産への貢献という経済協力
にもつながります。


経済協力予算の活用

石油化学会社にとっては、需給改善に有効な方策だと理解しながらも、研究開
発にお金をかけてもその費用を上回る利益があがるかわからないため、具体的
なプロジェクトは成立しません。
入省1年目に通商政策局の総務課で各課の決裁文書を処理している中で、局内
の技術協力課に、途上国に役立つ研究開発に対して費用の3/4を補助する制度
があることを知りました。「一人でする仕事」の成果です。この制度を活用し
ようと思い立ったのです。石油化学業界においては、石油化学工業協会という
業界団体にプロジェクトチームを作ってもらい、三菱油化(現在の三菱化学で
す)にリーダーになってもらいました。


夏の夜に一人でする仕事

1986年度予算での補助金採択を狙って、1985年の7、8月は予算要求のための資
料作成に励みました。基礎化学品課は予算関係の施策と無縁の課でしたので、
予算要求資料の作成のために夏の夜遅くに残っているのは私一人でした。
技術協力課は、経済協力に有効なプロジェクトだと応援してくれましたが、当
時の大蔵省主計局の予算査定で認められなければこのプロジェクトへの補助金
はつきません。収量増加に有効なマルチフィルム開発が可能か、マルチフィル
ムは食糧増産の効果がどれだけあるか、さらには企業のビジネスベースではな
ぜ実施できないかといった、予算折衝で説明が必要なことを資料にまとめてい
きました。
このプロジェクトが実現すれば日本の石油化学業界の活性化につながるのだと
の使命感がありました。また、この仕事は、一つの政策を自分で考えて自分で
実現を目指す初めてのものだとの充実感もありました。このため、一人で仕事
をしている間も、1年目のときにかすかに感じたもの悲しさはまったくありま
せんでした。


一人でする仕事の成果

夏の夜に「一人でする仕事」は、9月の大蔵省主計局担当官への説明の無事終
了につながり、12月には予算が認められるとの結果につながりました。その後、
私が基礎化学品課を卒業する1986年秋には、中国の石油化学工業公司との間で
研究開発を行うプラントの設置が合意されるまでに至りました。


若き社会人へ

今は、以前ほどには残業をすることがなくなっているかもしれませんが、若い
ときにする「一人でする仕事」、それは社会人としての成長につながることが
期待できます。私の30年後に社会人となった方も、いつか花開くと思って「一
人でする仕事」に没頭してみてください。






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最終更新日  2013.05.17 23:20:54


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