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《櫻井ジャーナル》

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2011.04.10
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 福島第1原発の事故は多くのことを明らかにした。そのひとつは、報道機関が支配層、つまり大企業の経営者、有力政治家、官僚(キャリア組)のプロパガンダ機関にすぎないということを再確認させたことだろう。そのマスコミが「権威」として便利に使っている「旧帝大」の有名教授たちは「御用学者」と呼ばれるようになった。そして形成されたのが財政官学報の利権集団。ちなみに、原発事故で信頼度が急降下した経産省は原子力発電を強引に推進する一方、温室効果ガスの削減に強く反対してきたことを忘れてはならない。

 勿論、原子力以外の問題、政治、経済、外交、軍事、科学、あらゆる分野でもこうした構図は存在している。例えば経済の場合、最大のスポンサーである自動車産業、特にトヨタのマイナス情報をマスコミが取り上げないのは有名な話であり、融資という切り札を持つ銀行に暗部に触れることもタブー。電力会社の場合、「国策」という背景が力の源泉だ。原発にはエネルギー問題だけでなく「核兵器」という要素もある。

 福島第1原発の事故が続いている中で行われた今回の東京都知事選で、原発推進派の石原慎太郎が東京都知事選で勝利した。石原が勝った原因のひとつは、マスコミが石原にとって都合の悪い話には触れないということにある。

 石原は多くの問題を抱えている。例えば、開発問題、築地移転問題、金融問題、あるいは教育のファシズム化等々。こうした問題に都民の多くは反応しなかった。将来、その責任が問われることになるだろう。「騙された」ですむ話ではない。

 石原知事、おどおどした表情が特徴なのだが、その一方で罵詈雑言でも注目を浴びてきた。もっとも、相手が弱いと思えば嵩にかかって攻撃するのだが、相手が権力者なら口先だけで中身はともなっていない犬の遠吠え、つまり空威張りにすぎない。結局、日本に巣くう財政官学報の利権集団、あるいはアメリカの支配層に対する庶民の憤りを拡散させてきただけだ。

 石原慎太郎は作家でもあるらしい。『太陽の季節』なる小説で1955年に「芥川賞」を受賞していると記録に残っている。作品の評価は人それぞれ、受賞自体にコメントはない。ただ、その時に選考委員のひとりだった佐藤春夫の評は次のようなものだった。

「反倫理的なのは必ずも排撃はしないが、こういう風俗小説一般を文芸として最も低級なものと見ている上、この作者の鋭敏げな時代感覚もジャナリストや興行者の域を出ず、決して文学者のものではないと思ったし、またこの作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった。」としたうえ、「僕はまたしても小谷剛を世に送るのかとその経過を傍観しながらも、これに感心したとあっては恥しいから僕は選者でもこの当選には連帯責任は負わないよと念を押し宣言して置いた。」とまで言っている。

 東京都民の多くは原発事故に無反応である。原発反対の声が高まっている世界の中で異質の世界だ。これも石原にとってはよかった。都民の多くは原発に賛成し、つまり自分たちの責任で破滅的な事態を招いたのだが、反省しているようには見えない。(例外的な人たちがいることは言うまでもないが。)これは日本の「文化」なのかもしれない。

 ところで、堀田善衛は『上海にて』の中で、上海から佐世保へ引き上げるとき、日本では「リンゴの唄」なる歌謡曲が流行っていることを知り、「なんという情けない唄をうたって」と怒りをもって考えたという。当時、戒厳令状態の上海で「起て、奴隷になりたくない人々よ、我等の血肉をもって新しい長城を築こう」というような歌がうたわれていたようで、それとのギャップを感じてのことらしい。

 また、1945年12月には占領地から兵士を乗せた船が浦賀港へ入港しているが、そうした兵士を歓迎する特別番組「外地引揚同胞激励の午後」をNHKは企画、その時、「星月夜」を元に作られた歌が「里の秋」だった。日本がなぜ戦争へ突入していったのかを当時の日本人が真剣に考えていたなら、こうした曲が流されることはなかっただろう。

 竹中労によると、後にエルネスト・チェ・ゲバラはこんなことを言ったという。「ニッポンはすばらしい工業国だ。繁栄している。だが、この国の若ものたちの目には、理想に生命をかけて闘うものの光がない。」そうした若者が「おとな」になり、原発を日本中に作り、社会を破壊し、そして石原の4選を許したのだろう。残された希望は今の若者たち。





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最終更新日  2011.04.11 01:30:25



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