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《櫻井ジャーナル》

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2013.06.19
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 外国情報監視法(FISA)に基づき、外国情報監視法廷(FISC)は今年4月、通信会社大手のベライゾン・コミュニケーションズに対して電話記録の提出を命じ、数百万件の記録がNSAに提供された。

 このことが発覚したのは今月6日のこと。PRISMというプログラムを使い、インターネット関連企業のシステムへ直接、アクセスできることも明らかになった。ここからエドワード・スノーデンの内部告発は始まる。

 FISAは1978年に発効した法律で、本来は情報機関の暴走を防ぐことが目的だった。その3年前、アメリカでは「情報活動に関する政府による作戦を調査する上院特別委員会」が設置され、フランク・チャーチ上院議員が委員長に就任している。日本以外では、この委員会を「チャーチ委員会」と呼ぶ。

 1960年代の終わりからアメリカはベトナム戦争の泥沼化に苦しみ、ウォーターゲート事件で大統領が辞任に追い込まれるなど国内も揺れていた。そうした中、要人暗殺、住民虐殺、軍事クーデター、マインド・コントロール研究、国民監視など情報機関や軍の秘密工作が明らかにされていく。

 そうした流れは第2次世界大戦の終盤、フランクリン・ルーズベルトが1945年4月に急死した直後から始まっている。ホワイトハウスにおけるニューディール派の影響力は急速の弱まり、政府の政策は反ファシストから反コミュニストへ大きく変化した。軍や情報機関の内部にはソ連に対する核攻撃を望む勢力が力をつけていく。そうした中にはCIA長官になるアレン・ダレス、あるいは統合参謀本部議長に選ばれるライマン・レムニッツァーも含まれていた。

 そうした中、FBIは1950年代から国民監視プロジェクト、COINTELPROをスタートさせて反戦/平和運動を監視する。尾行、電話盗聴、郵便開封、銀行口座も実施されたという。J・エドガー・フーバーFBI長官はジョセフ・マッカーシー上院議員を使って「アカ狩り」を行い、ライバルのCIAも攻撃する。

 そのCIAも反戦/平和運動を危険視、ベトナム戦争が泥沼化しはじめた1967年には監視するためにMHケイアスというプロジェクトを始めた。その一環として封書も開封してのだが、その事実が1974年に発覚、責任者だったジェームズ・アングルトンは辞任に追い込まれた。

 そうした流れの中、FISAは制定されたわけだが、CIAの秘密工作に対する調査に協力的で、アングルトンを追い出したウィリアム・コルビーは1976年に解任される。後継の長官に選ばれたのがジョージ・H・W・ブッシュ。

 当時、ブッシュは「素人長官」とも宣伝されたが、実際はエール大学に学生だったころにCIAからリクルートされた可能性が高く、少なくとも1963年11月、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されたときにはCIAの幹部だ。

 ブッシュ長官が誕生したジェラルド・フォード政権ではデタント派が一掃され、替わって新しい世代の好戦派が台頭した。その中にはドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ポール・ウォルフォウィッツも含まれていた。

 こうした環境の中で制定されたこともあり、FISAには最初から限界があったのだが、愛国者法が制定されてからの改定で、今は骨抜きだ。言うまでもなく、愛国者法が制定されたときの大統領はジョージ・W・ブッシュ、つまりH・W・ブッシュの息子であり、副大統領はチェイニー、国防長官はラムズフェルド、国防副長官はウォルフォウィッツだった。

 今回、アメリカでは通信やコンピュータ関連の会社が問題になったが、通話の内容もNSAが自由に盗聴できる状態。監視システムに組み込まれている会社も多く、銀行やカード会社は勿論、チケットの発券をコンピュータで管理している航空会社、また鉄道会社もIC乗車券を追いかけることは可能。生活の監視という点では、電力会社、ガス会社、水道局も重要な役割を果たしている。日本の公安警察もこうした会社と密接な関係にある。

 料金の請求ミスを理由にして電力会社の情報力を軽視する人もいるが、膨大な個人情報を保有していることは事実であり、また、請求するための処理と、監視するための処理を混同してもいけない。勿論、ミスもあるだろうが、映画「未来世紀ブラジル」のように、それは別の問題に発展する可能性がある。実際、公安警察は電力会社などを使い、ターゲットを追跡する。

 電力会社は警察や検察の仲間であり、天下りでもつながっている。放射線物質を大量に環境中へ放出しても寛容な姿勢をみせる一因はここにある。

 エドワード・スノーデンは国民監視システムの一端を明らかにしたのだが、そのシステムの背後には巨大資本が蠢いている。国民を監視する大きな目的は、巨大資本の利益に反する動きを芽のうちに摘んでしまうことであり、戦争に反対する個人、団体を敵視する理由もここにある。そうした意味で、主権を庶民から奪うことになるTPPとNSAの問題は深く結びついていると言える。

 1970年代、フランク・チャーチ上院議員は「多国籍企業」の活動を調べる小委員会の委員長も務めていた。アメリカを拠点にしているが、全世界で経済活動をしている巨大企業を問題にしていたのだ。チャーチ議員が情報機関の暗部にメスを入れ、巨大資本の活動を問題にしていたのは示唆に富んでいる。チャーチは1984年4月、59歳で死亡している。





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最終更新日  2013.06.20 02:13:43



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