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《櫻井ジャーナル》

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2013.08.29
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 早くもバラク・オバマ政権の開戦シナリオに狂いが生じている。化学兵器が使われたと宣伝、人びとがショックを受けている間にシリア政府が実行したという雰囲気を作り出して攻撃、皆が冷静になり、アメリカの議会が始まり、国連の調査結果が出ることにはシリア政府軍の拠点を潰し、すでに送り込んでいる特殊工作部隊やアル・カイダ系の武装集団を使って体制転覆を実現しよう・・・としていたのかもしれないが、思惑通りに進んでいない。(ちなみに、アル・カイダはイスラエルと戦わない。)

 シリアへ軍事介入するべきでないとする意見が世界的に多く、イギリスでも議会内で開戦にブレーキがかかっている。アメリカでも軍事介入に反対する声が多い。イスラエルの初代首相、ダビド・ベングリオンに言わせるとイギリス外務省の指導に基づいて創設されたアラブ連盟もアメリカの軍事介入には反対すると表明している。

 化学兵器による攻撃は、反シリア政府軍、あるいはイスラエル軍が実行した可能性も指摘されている。が、8月21日にダマスカス近郊のグータを化学兵器で攻撃した責任がシリア政府にあることは確かだと証拠を示さずにアメリカ政府は叫んでいる。「西側」の政府やマスコミもアメリカの意向に沿った宣伝を繰り広げているが、多くの人は踊らされていない。

 アメリカ政府はやけになったのか、バシャール・アル・アサド大統領が化学兵器の使用を命じたのでなくても責任はアサド大統領にあると言い始めた。反シリア政府軍やイスラエル軍が化学兵器を使ったとしても責任はアサド大統領にあると言いそうな勢いだ。

 当然のことながら、アサド大統領はシリア政府軍が化学兵器を使ったとする「西側」の主張を全面否定、「良識を愚弄している」と批判している。アル・カイダなど反シリア政府軍(良い反政府軍と悪い反政府軍がいるとするのは単なるおとぎ話にすぎない)から攻撃され、多くの人びとが殺されている少数派、例えばキリスト教徒やクルド系住民は反政府軍を厳しく批判している。

 シリアで最大のクルド系政党、PYD(民主連合党)のサレハ・ムスリム代表はアサド政権が化学兵器を使ったとする話に懐疑的だ。本ブログで何度も指摘したことだが、戦闘は政府軍が優勢。だからこそ、体制転覆を目指す外国勢力は直接的な軍事介入のチャンスをうかがっていた。

 政府軍に化学兵器を使う必要はなく、外国の軍事介入を誘発するだけの兵器だ。ムスリムが言うように、シリア軍が化学兵器を使う状況ではない。「アサド大統領はそれほど愚かではない」。今回の化学兵器話はアサド大統領を陥れ、国際的な批判の声を引き出すために行われたものだとも述べているが、その通りだろう。ここにきて末端の部隊が勝手に使ったとする話も流されているが、軍は化学兵器を厳重に管理しているはず。使ったとするならば、反政府軍から手に入れた可能性が高いだろう。

 最近の動きを見ていると、サウジアラビアとイスラエルがシリアへアメリカ軍を引きずり込もうと活発に動いている。1970年代の後半、あるいは1980年代から両国は同盟関係にあり、ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、1991年にネオコン(親イスラエル派)のポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを殲滅すると話していた

 リチャード・パールを中心とするネオコンのメンバーは1996年に「決別」という文書を作成している。イスラエルはこの時点でサウジアラビアと同盟関係にあるわけだが、それだけでなくトルコやヨルダンと手を組み、シリアを弱体化し、イラクのサダム・フセインを排除するという。さらに、パレスチナ問題ではオスロ合意(暫定自治原則宣言)を無視、アメリカからの自立も謳っている。

 2001年にアメリカ大統領となったジョージ・W・ブッシュはイラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画をたて、まずイラクのフセインを排除することに成功した。2007年に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いた記事によると、アメリカ政府はサウジアラビアやイスラエルと共同でシリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始した。

 1990年代からの中東/北アフリカはネオコン/イスラエルのプラン通りに展開してきた。アメリカから自立するためにはエネルギーを支配する必要があるだろうが、地中海東岸には天然ガスがあり、大イスラエルを実現すれば油田も手に入る。サウジアラビアと手を組めば、エネルギーに大きな影響力を持つことができる・・・と考えているのかもしれない。その両国にアメリカは踊らされているようにも見える。





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最終更新日  2013.08.30 09:45:24



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