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《櫻井ジャーナル》

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2014.03.13
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 クーデターでキエフを制圧した勢力が「西側」の支援を受けて作った暫定政権。その首相、アルセニー・ヤツェニュクがアメリカを訪問、バラク・オバマ大統領やジョン・ケリー国務長官らと会談しているようだ。選挙で選ばれたわけでもないヤツェニュクたちの暫定政権だが、国のあり方を勝手に決めようとしている。

 2月4日にYouTubeへアップロードされて明らかになったビクトリア・ヌランド米国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使との電話会談で、ヌランドが高く評価していたのが「祖国」に所属するヤツェニュクだった。それだけ「西側」の「国境なき巨大資本」に近いということだ。

 この「祖国」とは、オリガルヒ(不公正な手段で国の資産を盗んで巨万の富を築いた富豪)のひとりで、投機家のジョージ・ソロスの影響下にあったユリア・ティモシェンコの政党。大統領代行を名乗っているアレクサンドル・トゥルチノフも同じ政党の幹部だ。

 当初、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領に対する抗議活動は比較的、平和的なもの。EUも話し合いで解決しようとしていた。それが気に入らなかったのネオコン(アメリカの親イスラエル派)のヌランド国務次官補で、「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」という表現が彼女の口から出てくる。

 ヌランドの意向に沿うような展開になるのは2月18日頃から。抗議活動が激しくなる。石だけでなく火焔瓶が投げられ、銃やライフルが持ち出され、警官隊に向かって撃ち始めている。21日にはヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印するのだが、翌22日には屋上からの狙撃で多くの死者が出始め、協定は実現しなかった。この日、議会は憲法の規定を無視してトゥルチノフを大統領代行に任命している。

 前回も書いたように、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相は、26日にEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で次のように報告した:

 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」としたうえで、「新連合はもはや信用できない」としている。なお、この会話を本物だとパエト外相は認めている

 それに対し、アシュトンは「議会を機能させなければならない」と応じ、「もし議会が機能しないなら、完全なカオスになる。」と続けている。

 しかし、2月22日に議会は機能を停止している。議会を暴力的に制圧した反ヤヌコビッチ派は議長だったボロディミール・リバクを脅迫して辞任させ、トゥルチノフを新議長に据え、憲法の規定を無視する形でトゥルチノフが大統領代行に任命されたわけだ。そして暫定政権なるものが出現、その首相に選ばれたのがヌランドの覚えめがめでたいヤツェニュク。

 ヤツェニクは1998年から2001年までキエフの銀行で働き、2003年から2005年までウクライナ国立銀行の第1副頭取を務め、その後、頭取になった人物。2007年は外相だ。

 ウクライナでは2004年から2005年にかけて「オレンジ革命」が実行され、ビクトル・ユシチェンコが実権を握っている。オレンジ革命のパトロンはロシアのオリガルヒ、ボリス・ベレゾフスキー。「西側」の巨大資本も後ろ盾になっていた。ユシチェンコは2005年から2010年まで大統領を務めた。

 暫定政権はロシアが軍事介入していると必死に宣伝しているが、今のところウラジミール・プーチンは挑発に乗っていない。クリミアへ1万6000名が軍事侵攻したという話も、実際は駐留軍だった。シリアやリビアでも得体の知れない「活動家」や「人権擁護団体」の流す偽情報を「西側」のメディアは垂れ流していたが、今回は暫定政権の怪しげな話を垂れ流している。

 1990年代の終わりに結ばれたロシアとウクライナとの取り決めで2万5000名までの部隊をロシア軍は駐留させられることになっていて、1万6000名が以前からクリミアに駐留していたのであり、今回、ロシアが送り込んできたわけではない。軍事演習でEUに警告はしているが、大規模な部隊を国境線近くへ動かしている事実もないようで、あえて、ロシア側は国境近くまでウクライナの偵察機を飛行させている。おそらく、暫定政権やネオコンは困っていることだろう。ロシアに対する経済制裁は報復でEUやアメリカに大きなダメージになる可能性が高い。

 エストニアのパエト外相にスナイパーは暫定政権側にいるという情報を提供したのは反ヤヌコビッチ派の医師。ロシアに反感を持っている人びとも暫定政権から離反する可能性があり、今後、ますますネオ・ナチに頼らざるを得なくなりそうで、「副作用」は深刻になるだろう。

 今回もヌランドとアシュトンの会話を取り上げたが、このふたりの話はウクライナ情勢を知る上できわめて重要な意味を持っている。この会話に触れず、ウクライナ情勢を語ることはできない。





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最終更新日  2014.03.13 22:35:20



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