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《櫻井ジャーナル》

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2015.02.27
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 シリアに対する攻撃が差し迫っているとする見方がある。西側の有力メディア、タイム誌が怪しげな情報源に基づいて書かれたシリア政府を非難する記事を掲載したことも、そうした憶測を生む一因だ。シリア政府とIS(イラクとレバントのイスラム首長国。イスラム国、ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)を結びつける怪しげな情報源として登場するのがアサド「体制に近いスンニ派の実業家」と「西側の外交官」。いずれも匿名で、ほかの情報との整合性は全くない。

 ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラク、リビア、ウクライナなどアメリカを中心とする西側の軍隊が先制攻撃する際に展開されたプロパガンダと同じパターンだが、そうした中でも特に怪しげな記事で、記事が出た瞬間から偽情報だと言われる代物。記事を書いたアリン・ベーカーもそうしたことは認識しているだろうが、それでも書いた。そこでそれだけ事態が切迫しているのではないか、と言われているわけだ。

 タイム誌はタイム・ワーナーが出している週刊誌だが、このタイム・ワーナーは1996年にターナー放送システム(TBS)を買収、CNNもタイム・ワーナーの傘下に入った。そのCNNの番組でウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は、ISをアメリカの友好国と同盟国が作ったとCNNの番組で発言している。

 ISの歴史も1970年代のアフガニスタンから始まる。ズビグネフ・ブレジンスキーのプランに基づいて編成され、CIAが支援、訓練して育成したスンニ派系の武装集団が始まりだということ。活動資金を麻薬取引で稼いでいたものの、サウジアラビアが雇い主としてカネを出している。

 こうして訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルが「アル・カイダ」だとロビン・クック元英外相はガーディアン紙で説明していた。アル・カイダとはアラビア語で「ベース」を意味、「基地」と表現することもできるが、実態は「データベース」だということだ。なお、クックは保養先のスコットランドで心臓発作に襲われて死亡してしまった。享年59歳。

 このアル・カイダを多くの人が知る切っ掛けになったのが2001年9月11日にアメリカで起こる。ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、その直後、碌な調査もしないでアル・カイダが実行したとアメリカ政府は宣言、戦争体制に入ったのである。その数週間後、国防長官のオフィスではイラクを手始めに、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃するプランを持っていた。これはクラーク元欧州連合軍最高司令官の発言。こうした国々は9月11日の攻撃と関係はない。(アル・カイダとの関係を示す証拠もない。)

 計画通り、アメリカ政府は2003年にイラクを先制攻撃してサダム・フセイン体制を破壊した。アル・カイダ系の武装集団を「人権無視」で弾圧していたフセインが排除された後、2004年にアル・カイダ系のAQI(イラクのアル・カイダ)が組織され、イラクで活動を始める。

 ネオコン/シオニストが主導権を握っていたジョージ・W・ブッシュ政権時代のアメリカはイスラエルとサウジアラビアと手を組み、シリアとイランの2カ国とレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を2007年には開始していた可能性が高い。ソ連が消滅した1991年、国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはシリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると語っていたという。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官の話だ。

 2006年1月にAQIを中心にしていくつかの集団が集まって編成された組織がISI。シリアで西側が行っていた体制転覆プロジェクトが思惑通りに進まず泥沼化、そこでISIはシリアでの戦闘に加わり、ISと呼ばれるようになった。

 2012年にはヨルダン北部に設置された秘密基地でCIAや特殊部隊が反シリア政府軍の戦闘員を育成するために訓練しているが、その中にISのメンバーが含まれていたと言われている。

 シリアで体制転覆プロジェクトが顕在化した2011年春からアメリカ/NATOはトルコにある米空軍インシルリク基地で反シリア政府派を訓練している。アメリカの情報機関員や特殊部隊員、イギリスとフランスの特殊部隊員が教官で、イギリス、アメリカ、フランス、カタール、ヨルダン、トルコも特殊部隊をシリア領内で活動させていると疑われてきた。

 2011年10月にリビアでムアンマル・アル・カダフィが惨殺された直後、ベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられた。アメリカ/NATOが地上軍として使ったLIFGはアル・カイダ系で、こうしたことが起こるのは必然。その様子を撮影した映像がすぐにYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メール紙もその事実を伝えている。

 リビアでのプロジェクトを終えたアル・カイダの戦闘員はシリアへ移動していく。ヨルダンでCIAなどが反シリア政府軍の戦闘員を訓練したのは、その翌年ということになる。

 2013年9月、退任間近だった駐米イスラエル大使のマイケル・オーレンは、イスラエルの希望はシリアの体制転覆であり、バシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている。イスラエルはこれまで何度かシリアを空爆しているが、ISを支援するものだと指摘されている。

 2014年3月、イラクの首相だったノウリ・アル・マリキは、反政府勢力へサウジアラビアやカタールが資金を出していると非難、その翌月に行われた選挙でアル・マリキを支える「法治国家連合」が全328議席のうち92議席を獲得、第1勢力になった。本来ならマリキが次期首相に指名されるのだが、大統領はアメリカが嫌っているマリキを拒否した。

 そうした中、ISはイラク北部の油田地帯やダムを制圧、6月の始めには大攻勢をかけてファルージャやモスルを制圧した。その際、アメリカはスパイ衛星、偵察機、通信傍受、人の情報もなどでISの動きを把握していたはずだが、反応していない。ISがトヨタの車を連ねてパレードしている写真があるが、その様子も知っていたはず。その時に攻撃すれば大きなダメージを与えられたはずだが、示威行進をやらせていた。

 民主的に選ばれた政権が施設を国有化したなら、間違いなく販売先に圧力をかけて取り引きを妨害するだろうが、アメリカはISの資金源にも手を出していない。スポンサーであるペルシャ湾岸産油国の王族/富豪に圧力をかけた形跡は見られるず、盗んだ原油の販売も放置しているようだ。その販売ルートは、パイプラインでトルコのジェイハンへ運び、そこからタンカーでイスラエルへ輸送、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばいていると言われている。トルコとイスラエルがその気になれば流れは止ま、戦闘は勿論、組織の存続も難しくなるだろう。

 ISは中東/北アフリカを再植民地化する道具だとも言われているが、その道具を使っているのはアメリカ(ネオコン)、イスラエル、サウジアラビアだけでなく、イギリス、フランス、トルコ、カタールなども含まれる。

 イスラエルは「大イスラエル構想」のほか地中海東岸で発見された天然ガス田の支配、ライバルの弱体化、アメリカ/NATOや湾岸の産油国はエネルギー源の支配を目論んでいるのだろう。シリアが狙われている大きな理由は、パイプラインを建設する際の重要地点だということ。

 カタールはパイプラインでシリアまで運び、そこからEUへ売りたいのだが、そのためにはシリアのアサド政権が邪魔。そこでアル・カイダに資金を提供してきた。サウジアラビアはシリアに傀儡政権を樹立してライバル地域のエネルギーを支配することを目的としていると見られている。

 カタールが目論むパイプラインのライバルになるのがイラン、イラク、シリアを結ぶもの。ISはこれを潰すことになる。シリアにアメリカ、イスラエル、ペルシャ湾岸産油国の傀儡政権ができれば、このパイプラインに止めを刺すことになるだろう。ペルシャ湾岸からEUへ石油や天然ガスを運ぶルートができれば、EUはロシアにエネルギーを依存しなくてすむ。

 それに対し、ロシアはEUを見限って中国へ接近しつつある。イランはパキスタンへ天然ガスを運ぶパイプラインを建設中。さらにインドへというプランもある。こうした計画にアメリカは強く反対、建設を妨害しているようだが、ひとつの理由は中国。2013年にパキスタン政府は中国企業へグワーダル港の管轄権を委譲したというが、ここから石油を積み出せれば、ホルムズ海峡通過というリスクを回避できる。

 アメリカの戦略では、ウクライナを押さえてロシアとEUを分断、シリアに傀儡政権を樹立させてペルシャ湾岸からEUへエネルギー源を運ぶルートを作り、イランとEUとをつなぐパイプラインを剪断することもできる。そのためにもシリアの体制転覆を急ぐ必要があるわけだ。





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最終更新日  2015.02.27 21:15:53



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