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《櫻井ジャーナル》

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2015.03.27
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 アメリカがウクライナへ50台ほどの戦車を運び入れているという情報が流れている。この情報が正確なら、キエフ政権へ武器を供給するように求めているアメリカ議会の意向に沿うもの。すでにキエフ側へ西側から武器が渡っていると言われているが、戦車となると意味が違ってくる。

tanks

 現在、キエフ政権はロシア、ドイツ、フランスとの話し合いで東部/南部で停戦に合意しているのだが、同政権を支えている柱のひとつであるネオ・ナチが反発、ネオ・ナチの後ろ盾であるアメリカ/NATOも平和的な解決を望んでいない。戦車が運び込まれても不思議ではない状況だ。

 ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追放したクーデターの前、昨年2月4日にビクトリア・ヌランド米国務次官補とジェオフリー・パイアット駐ウクライナ米国大使との電話会談を盗聴した音声がYouTubeへアップロードされた。その中でヌランドは「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしているが、これは話し合いで混乱を解決しようとするEUへの不満から出てきた表現だった。

 このとき、ヌランドとパイアットはウクライナの「次期政権」の閣僚人事について話し合っていた。ヌランドが高く評価していたアルセニー・ヤツェニュクがクーデター後、首相に就任している。このクーデターは2013年11月に始まった反政府運動から始まり、翌年の2月に入ると暴力がエスカレートしていく。そうした中、ヌランドとパイアットとの会話が明るみにでたわけだ。

 暴力が加速する過程でヌランドとパイアットは反政府運動の拠点になっていたユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクッキーを配るというパフォーマンスを演じ、アメリカ上院のジョン・マケイン議員やジョー・リーバーマン議員など反乱を扇動する動きもあった。

 ヌランドの意向通り、2月18日頃からネオ・ナチは暴力をエスカレートさせた。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手に、石や火炎瓶を警官隊に投げつけ、ピストルやライフルを持ち出して街を火と血の海にしたのである。

 21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派は平和協定に調印するのだが、翌22日には屋上からの狙撃で多くの死者が出始め、協定は実現しない。この日、議会は憲法の規定を無視してトゥルチノフを大統領代行に任命、アメリカ/NATOのキエフ制圧は成功、矛先はヤヌコビッチの地盤だった東部や南部に向かい、虐殺が始まる。

 広場での狙撃が平和協定を破壊する大きな要因になったが、この狙撃が反ヤヌコビッチ派によるものだとうことは、エストニアのウルマス・パエト外相がEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者/イギリス人)へ2月26日に電話で報告している。

 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(後の暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」「新連合はもはや信用できない。

 この狙撃を指揮していたのはネオ・ナチを率いるひとり、アンドレイ・パルビーで、少なからぬ狙撃手がグルジアから来ていた可能性が高い。国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長を務めた後、議会の第1副議長に就任している。

 キエフのクーデターで東部や南部を支持基盤としていたヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除するのを見て、クリミアの住民は素早く動く。自治共和国最高会議がロシアへの編入を全会一致で議決、3月16日には住民投票が実施された。その投票率は83.1%で、そのうちロシアへの編入に96.7%が賛成している。

 住民がキエフのクーデターに反発しただけでなく、駐留していたウクライナ軍の圧倒的多数もクリミア側につき、アメリカ/NATOの思惑は外れる。少数民族のタタール系の住民も多数派はクーデターに賛成しなかった。

 このクリミアは戦略的に重要な場所にあり、特にセバストポリはロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしている。1991年にソ連は消滅するが、97年にロシアとウクライナとの間で締結され、99年に発効した条約により、基地の使用と2万5000名までの駐留がロシア軍に認められた。その当時から1万6000名のロシア軍が実際に駐留している。

 クリミアを「ユーロマイダン化」できればロシア軍を追い出すこともできただろうが、住民の圧倒的多数がロシアを選択。アメリカの好戦派はこの時点で目算がはずれた。西側メディアは駐留ロシア軍を侵略軍だと宣伝、東部や南部でキエフ軍が苦戦するとそこにもロシア軍がいると叫び始めたが、証拠も根拠も示していない。

 その東部や南部での民族浄化作戦は4月に始まる。まず、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問、その2日後にアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が制圧作戦を承認したのだ。

 次いで4月22日にジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作に関する会議が開かれた。出席したのはアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行、アルセン・アバコフ内相代行、バレンティン・ナリバイチェンコSBU長官代行、アンドレイ・パルビー国家安全保障国防会議議長代行、そしてオブザーバーとしてドニエプロペトロフスクのイゴール・コロモイスキー知事。会議の10日後、5月2日にオデッサでクーデター政権を拒否する住民が虐殺された。

 オデッサで多くの住民が殺されたのは労働組合会館。犠牲者の数を50名弱とメディアは伝えたが、これは上の階で死体が発見された数。多くは地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名と言われている。70〜80名はどこかに埋められた可能性が高い。

 コロモイスキーはスイスのジュネーブを生活の拠点にしているイスラエル系オリガルヒで、ウクライナ、イスラエル、そしてキプロスの国籍を持っている。このコロモイスキーが雇っている私兵が3月19日からウクライナの大手石油関連会社ウクルトランスナフタ、そして同社の親会社であるウクルナフタのオフィスを制圧、文書を破棄したという。

 ウクルナフタはウクライナ最大の石油企業で、発行済み株式の51%を国が保有、コロモイスキーは42%のみだが、これまでコロモイスキーが傀儡経営者を使って支配してきた。ペトロ・ポロシェンコ大統領はその傀儡経営者を排除、今回の襲撃につながった。

 本ブログでは何度も書いてきたが、ポロシェンコ政権はウォール街の支配下にある。例えば、金融大臣はシカゴ生まれでアメリカの外交官だったナタリー・ヤレスコ、経済大臣はリトアニアの投資銀行家だったアイバラス・アブロマビチュス、保健相はグルジアで労働社会保護相を務めたことのあるアレキサンドル・クビタシビリ、そして大統領の顧問にはミヘイル・サーカシビリ元グルジア大統領が就任している。

 そうしたポロシェンコが襲撃事件を起こしたコロモイスキーを解任したということは、アメリカ政府が解任を容認した、あるいは求めたということ。パイアット大使がコロモイスキーの行為を非難したとも言われている。自分たちの正体を明らかにするようなことをするのは軽率すぎるということだろう。コロモイスキーはこのまま引き下がるとは考え難く、混乱要因。

 ポロシェンコは私兵組織を統合しようとしているようだが、これもアメリカの意図だろう。キエフ軍を立て直し、東部や南部を軍事的に制圧しようとしている可能性が高い。グルジアを経由してチェチェンの反ロシア軍、あるいはIS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)の戦闘員を投入することも考えられる。ポロシェンコ大統領は国連軍の派遣を求めているようだが、国連軍の看板を掲げてNATO軍がウクライナ制圧に乗り出すこともありえるだろう。






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最終更新日  2015.03.27 22:54:11



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