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《櫻井ジャーナル》

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2015.04.20
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 IS(イラクとレバントのイスラム首長国。ISIS、ISIL、IEIL、ダーイシュとも表記)の存在は、アメリカが中東へ軍事介入する口実になっている。そのISは狂信的なカルト集団とも見られているが、実際は情報機関を彷彿とさせる組織で、残虐行為も冷徹な計算に基づいて行われているとドイツのシュピーゲル誌は伝えている。2014年の戦闘で死亡した元イラク軍大佐が保管していた書類から判明したのだという。

 この元大佐はISを操っていた人物で、サダム・フセイン時代にはイラク空軍の情報部に所属、2003年にアメリカを中心とする連合軍がイラクを先制攻撃してフセイン体制を倒した後に軍を追われ、06年から08年までアメリカが設置したアブ・グレイブ収容所に拘束されていたとされている。

 しかし、この元大佐を過大評価するのは危険だろう。シュピーゲル誌はドイツの雑誌だが、そのドイツはNATO加盟国であり、NATOはアメリカを中心にして、中東/北アフリカの体制転覆プロジェクトを進めてきた。2007年の段階でアメリカ、イスラエル、サウジアラビアはシリアやイランの現体制を倒す秘密工作を始めたとも指摘され、ISはその手先だと言われている。シュピーゲル誌の報道でそうした側面を忘れてはならない。

 ISが「一神教聖戦団(JTJ)」として誕生したのは、この元大佐がイラク空軍に在籍していた1999年。アメリカがイラクを先制攻撃して体制を転覆させた後、04年にアル・カイダ系の武装集団に加わって名称を「イラクのアル・カイダ(AQI)」へ変更した。元大佐がアブ・グレイブに収容されたという2006年にAQIは小集団を吸収、その年の10月からISI(イラクのイスラム国)と名乗るようになる。ISと呼ばれるようになるのは、シリアで戦闘を始めた2013年4月のこと。

 本ブログでは何度も書いてきたが、アル・カイダとは、ロビン・クック元英外相も指摘しているように、CIAに雇われて訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アル・カイダとはアラビア語で「ベース」を意味、「基地」と表現することもできるが、実態は「データベース」だということ。この重要な指摘をした次の月にクックは保養先のスコットランドで心臓発作に襲われ、急死した。享年59歳。

 CIAが「ムジャヒディン」を訓練、武器や資金を供与した目的は、言うまでもなく、ソ連軍と戦わせるため。そのソ連軍をアフガニスタンへ誘い込む秘密工作を計画したのは、ジミー・カーター大統領の国家安全保障問題担当の補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキー。後にフランスのヌーベル・オプセルヴァトゥール誌から取材を受けた際、「秘密工作はすばらしいアイデアだった」と彼は答えている。カーター大統領に対し、ソ連に「ベトナム戦争」を贈呈する機会が訪れたと伝えたともいう。(Le Nouvel Observateur, January 15-21, 1998)

 つまり、ISの歴史をたどるとブレジンスキーに行き着くということ。4月17日にイランのアーマト・レザ・ポールダスタン准将は、ISを創設したのはアメリカであり、アル・ヌスラやナイジェリアを中心に活動しているボコ・ハラムも同じだと語り、18日にはハッサン・フィールーザーバーディー参謀総長はアメリカがISに武器、資金、食料を供給していると発表したが、これも指摘されてきたことだ。キリスト教徒やイスラム教徒を虐殺し、歴史的な建造物を破壊しているISがイスラエルやサウジアラビアを攻撃しないのも、そうした背景があるからだと見るのが自然だろう。

 1990年代に入り、中東、南北アフリカ、旧ソ連圏などで戦火が広がるが、その原因が1991年12月のソ連消滅にあることは何度も書いてきた。ネオコン/シオニストがアメリカを「唯一の超大国」と認識、世界制覇を露骨に始めたのだ。日本もそのターゲットに含まれている。その制覇計画の青写真が1992年に作成された「DPGの草案」(通称ウォルフォウィッツ・ドクトリン)の草案。その前年に、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官はシリア、イラン、イラクを殲滅すると話していたとウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官は語っている。

 2007年には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に興味深い記事を書いている。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラがターゲットにした秘密工作を始めたというのだ。

 すでにISがシリアで政府軍と戦い始めていた2013年9月、駐米イスラエル大使のマイケル・オーレンは、シリアのバシャール・アル・アサド体制よりアル・カイダの方がましだとエルサレム・ポスト紙のインタビューで語っている

 そのイスラエルを宗教的な理由で支援しているのがアメリカのキリスト教系カルト。彼らにとって大事なのは「聖書の法」で、民主主義とは単なる「ゴロツキのルール」にすぎない。全体の40%以上は聖書に書かれた最終戦争の予言を信じているとウィスコンシン大学のポール・ボイヤー教授は書いている。

 カルトの教義によると、キリストに従う「善の軍勢」と反キリストの「悪の軍勢」が「ハルマゲドン」で最終戦争を行い、人類の歴史は幕を閉じ、その後にキリストが再臨して自分たちは救われることになっている。「歴史の終わり」だ。(Frederick Clarkson著『Eternal Hostility』Common Courage Press、1997年)

 こうしたカルトの力を侮ってはならない。ナチスはカルト集団であり、かつての日本も「現人神」を崇めるカルト国家だった。カルトと軍事力が結びついたとき、この世に地獄が現れる。





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最終更新日  2015.04.21 02:20:59



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