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《櫻井ジャーナル》

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2015.09.03
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 ニューヨークのダウ工業株30種平均が8月後半に大きく値下がりし、その後の反発も弱い。以前にも書いたように相場を動かしているのは売り注文と買い注文の綱引き。そうした綱引きの力関係を何が決めていたかを庶民が知ることは難しい。日本の証券界では昔から「不景気の株高」ということが言われるが、生身の人間が住む世界で不景気になり、行き場を失った資金が証券市場へ流れ込んで買い注文が増えるからだ。つまり、「好景気だから株式相場が上昇する」というものではない。

 しかし、「不景気」を通り越して倒産が続発するような事態が予想されてくると資金を引き揚げる人は増えるだろう。現在、アメリカはそうした状況にある。この問題はアメリカの経済構造そのものに根ざし、その深刻度は中国の問題の比ではない。

 これも以前に書いたことだが、アメリカではシェール・ガス/オイル業界の崩壊が懸念されている。石油相場は1年前に1バーレルあたり約100ドルだったWTI原油価格が40ドル近くへ値下がりし、若干戻したとは言うものの、46ドル程度。採算がとれる水準ではなく、軒並み倒産しても不思議ではないのだが、ゼロ金利政策で経営破綻が表面化していないだけだとも言われている。そこで、9月に連邦準備制度理事会が金利をどうするかが注目されている。

 さらに大きな問題は、1971年にリチャード・ニクソン大統領がドルと金の交換を停止すると発表して以来、続けてきた経済システムが破綻しつつあるということ。この決定でアメリカは無制限にドルを発行することが可能になり、物を買うことができるようになったのだが、単に通貨を市場へ大量に供給すればハイパーインフレになってしまう。そこで考えられたのがドルの回収システムだ。

 ペトロダラーはそうしたシステムの一部。サウジアラビアなどの産油国に対して貿易の決済をドルにするように求め、集まったドルでアメリカの財務省証券などを購入させ、だぶついたドルを還流させようとした。

 サウジアラビアの場合、その代償としてニクソン政権が提示したのは同国と油田地帯の軍事的な保護、必要とする武器の売却、イスラエルを含む中東諸国からの防衛、そしてサウジアラビアを支配する一族の地位を永久に保障するというものだった。ほかの産油国とも基本的に同じ取り決めをしたと言われている。日本がアメリカの財務省証券を買い続けてきた理由もその辺にあるのだろう。

 1970年代からアメリカは新自由主義を世界へ広める。その伝道師がミルトン・フリードマンだった。ドルを吸収する投機の仕組みを築き上げ、「金融ビッグバン」だと宣伝していた。1970年代には富の偏在が進み、社会は不景気に苦しみ、企業は資金を投機で運用しはじめていたが、そうした流れを新自由主義は加速させて「カジノ経済」を出現させた。

 1980年代の中国も新自由主義を導入、アメリカは自らが生産することを放棄する。当然、社会に歪みが生じ始めたが、その責任を押しつけられてバッシングされたのが日本。そして、日本も新自由主義の世界へ引きずり込まれていった。

 投機化が進んだ現在、通貨の流通量を増やそうとしても、その大半は投機市場へ流れ込み、「バブル」を肥大化させるだけ。日本やアメリカで「金融緩和」が推進されたが、それで実体経済が良くならないことは政策の立案者もわかっていただろう。バブルの収縮を恐れていたのかもしれない。

 こうしたドルを基軸通貨とする仕組みが今、崩れようとしている。ロシアと中国が関係を強化、ドル離れを図っているのだ。両国を中心とするBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やSCO(上海協力機構/中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)もそうした方向へ動いている。アメリカがAIIB(アジアインフラ投資銀行)や新開発銀行(NDB)を恐れているのも、ドルを中心とするシステムが崩壊する可能性があるからだ。

 投機市場へ多額の資金を投入している代表格はサウジアラビアなど産油国の支配者だろうが、原油価格の急落でそうした資金を引き揚げる兆候が見られる。ロシアはアメリカの財務省証券を売却、その一方で金を買い込んでいる。中国も同じ動きを見せている。こうした動きを止めないと、アメリカは「唯一の超大国」どころか破綻国家になってしまう。あらゆる手段を講じて止めようとするだろう。





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最終更新日  2015.09.03 16:11:33



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