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《櫻井ジャーナル》

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2015.12.26
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 ロシア軍参謀本部作戦総局のセルゲイ・ルズコイ局長によると、IS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)は盗掘石油の輸送ルートを変更している。これまではラッカ近くの油田からタンクローリーでシリア北西部へ輸送、アザーズからレイハンルへ抜けてトルコのドーチョル港とイスケンデルン港へ運ぶルートが中心だったが、ロシア軍の空爆でこのルートが危険になったため、デリゾールの石油精製施設からイラクのモスルやザホへ運び、そこからトルコのバットマン製油所へ輸送するルートの比重を増やしたようだ。

 こうした動きに並行して、12月の初めにトルコ軍は25台のM-60A3戦車に守られた部隊をイラクの北部、モスルの近くへ侵攻させた。石油密輸の中継地として重要度が高まっている場所と重なる。

 イラク北部にはクルド系の人びとが一種の自治国を作り、ペシュメルガと呼ばれる武組織を保有している。今回、トルコ政府はペシュメルガを訓練するとしているが、この集団はイラク政府を揺さぶるため、イスラエルが支援してきたという。イラク政府がトルコ軍の侵攻に強く抗議したのに対し、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は撤退を拒否したものの、トルコ軍は撤退しつつあると伝えられている。

 シリアで反政府派の武装集団がロシア軍の空爆とシリア政府軍の地上作戦で反政府勢力は大きなダメージを受け、盗掘石油の密輸ルートに変化が見られるわけだが、同時にリビア情勢も注目されている。シリアより1カ月早く政権転覆の軍事作戦が始まり、NATOの空爆とアル・カイダ系武装集団LIFGを主力とする地上軍の攻撃でムアンマル・アル・カダフィ体制は2011年10月に倒され、カダフィ自身はそのときに惨殺された。

 体制転覆後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がYouTubeにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えていた。そのアル・カイダ系の戦闘員とはCIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のデータベースに乗っている人びと。これは故ロビン・クック元英外相も指摘している。

 その戦闘員は武器/兵器と一緒にトルコ経由でシリアへ入るが、その拠点になったのはベンガジにあったCIAの施設で、アメリカの国務省は黙認していた。その際、マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。

 ベンガジにはアメリカの領事館があるのだが、そこが2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使も殺された。スティーブンスは戦闘が始まってから2カ月後の2011年4月に特使としてリビアへ入る。11月にリビアを離れるが、翌年の5月には大使として戻っていた。領事館が襲撃される前日、大使は武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っていた

 そのリビアは現在、無政府状態で、ISが勢力を拡大している。中でも強い影響下にあるシルテにISを率いているとされているアブ・バクル・アル・バグダディがいるようだ。彼はイラクのモスルとシリアのラッカを行き来していたが、今年10月に彼の車列をイラク空軍機が爆撃、その際に少なからぬISの戦闘員が殺され、本人も重傷を負ったとされている。

 イランでの報道によると、CIAとMIT(トルコの情報機関)は治療のためにアル・バグダディをラッカからトルコへ運んだ。トルコとイスラエルには反シリア政府軍の戦闘員を治療する施設があることは本ブログでも書いたことがある。そしてリビアのシルテへ運ばれたということのようだ。

 ISはロシア軍やシリア軍の空爆を避けるため、盗掘石油の輸送ルートをイラク経由へ変更しているというが、リビアを石油密輸の拠点にしようとしているという見方もある。





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最終更新日  2015.12.26 17:00:20



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