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シリア北部の要衝、アレッポで繰り広げられていた戦闘でシリア政府軍が勝利、アル・ヌスラ(アル・カイダ系武装集団)やそこから派生したダーイシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)はトルコへ向かって敗走しはじめたという。ネオコンの代弁をしているワシントン・ポスト紙もアレッポを政府軍がおさえたことで戦争自体の決着がついた可能性があると報道している。
その直前、国連主導という形で行われていた和平交渉は2月3日に中断したが、アレッポの戦況が影響したのだろう。アメリカとしては時間稼ぎする意味がなくなった。予想以上にロシア軍の攻撃が迅速で効果的だったのかもしれない。 アメリカのアシュトン・カーター国防長官は1月22日に米陸軍第101空挺師団に所属する1800名をイラクのモスルやシリアのラッカへ派遣すると語り、23日にはジョー・バイデン米副大統領がアメリカとトルコはシリアで続いている戦闘を軍事的に解決する用意があると発言していた。またロシア国防省はトルコはシリア侵攻の準備を始めていると警戒、サウジアラビア国防省の広報担当は、同国の地上部隊をシリアへ派遣する用意があると表明した。カーター国防長官はサウジアラビアの表明を歓迎すると発言している。が、攻撃の口実に使う勢力が崩壊した状態で軍隊を侵入させれば単なる軍事侵攻になってしまう。 何度も書いているように、ネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)はシリア、イラク、イランを5年以内に殲滅すると1991年の段階で口にしている。本来ならジョージ・H・W・ブッシュが再選され、この3カ国を破壊する予定だったのだろうが、ビル・クリントンが大統領になってしまった。 1991年12月にソ連が消滅、ロシア大統領のボリス・エリツィンはアメリカ支配層の傀儡で、ロシアはアメリカの属国になる。そうした状況になった1992年初頭、アメリカの国防総省ではDPG(国防計画指針)の草案という形で世界制覇プロジェクトが書き上げられた。旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、ライバルを生む出すのに十分な資源を抱える西南アジアを支配するとしていた。 しかし、1992年の大統領選挙でジョージ・H・W・ブッシュは再選されず、ビル・クリントンが選ばれた。新政権ではネオコンの影響力が弱まり、外部からの提言という形で侵略を求めるしかなかった。そうした中、始まったのが大統領に対するスキャンダル攻勢。後に嘘が発覚する話が大半だったが、裁判費用は巨額で、クリントン夫妻は破産寸前だったと言われた。そのクリントン夫妻は現在、大変な資産家になっているようだ。 政策どころでなくなっていたクリントン大統領は1997年1月に国務長官をウォーレン・クリストファーからマデリン・オルブライトへ交代させるが、これは軍事侵略を始める狼煙だった。 オルブライトの父親ジョセフ・コーベルはチェコスロバキアの外交官だった人物で、オルブライトも同国で生まれた。コーベルは後にアメリカへ亡命、デンバー大学で教鞭を執るが、その時の教え子の中にコンドリーサ・ライス(ジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官を務めた)も含まれている。 オルブライト自身はコロンビア大学におけるズビグネフ・ブレジンスキーの教え子。彼女の友人のひとりにブルッキングス研究所の研究員がいるのだが、その娘がスーザン・ライス(バラク・オバマ政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官)。そうした関係からオルブライトは国務長官に就任した後、スーザン・ライスを国務次官補にするよう求めている。 ブレジンスキーはロシアを侵略、支配することを目指す嫌露派で、オルブライトもそうした考え方の持ち主。1998年にオルブライトはユーゴスラビアに対する空爆を支持、その翌年にNATOは同国を先制攻撃した。その際、中国大使館も「誤爆」で破壊されたが、状況証拠は意図的な攻撃だったことを示している。この攻撃を正当化するために使われた口実が「人道」だ。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) そして2000年にはネオコン系シンクタンクのPNACが「米国防の再構築」という報告書を公表した。1992年に作成されたDPG草案をベースにした内容、つまりアメリカによる世界制覇の戦略が書かれている。その戦略を実現するために「新たな真珠湾」の必要性が謳われていた。 ネオコンにとって好都合なことに、2000年の大統領選挙では彼らが担いでいたジョージ・W・ブッシュが最高裁の助けもあって当選、2001年9月11日には「新たな真珠湾」攻撃があって国内のファシズム化と国外での侵略が本格化する。その攻撃から間もない段階で国防長官の周辺は攻撃予定国のリストを作成、そこにはシリア、イラン、イラクのほか、レバノン、リビア、ソマリア、スーダンも載っていた。 つまり、シリアの体制転覆はネオコンの基本戦略に含まれている。アル・ヌスラやダーイッシュが負けたからといってシリアやイランを攻撃、破壊することを諦めるわけにはいかないだろう。新たなタグを付けた傭兵集団を編成、その新戦闘集団を攻撃するという名目でシリアを侵略するかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.02.06 12:06:27
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