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《櫻井ジャーナル》

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2016.02.24
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 ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の幹部がトルコ軍の軍人と電話で会話している内容が盗聴され、明らかにされた。昨年5月にはトルコのジュムフリイェト紙がシリアの武装勢力へ供給するための武器を満載したトラックを憲兵隊が摘発した出来事を写真とビデオ付きで報道、その報復として11月26日に逮捕された同紙の編集長を含むふたりのジャーナリストは終身刑を求められ、裁判は3月25日に始まるという。そうした言論弾圧にもかかわらず、レジェップ・タイイップ・エルドアン体制への批判をトルコの新聞は続けているわけだ。日本のマスコミとは違い、ジャーナリストとしての覚悟があるのだろう。

 トルコとシリアとの国境を管理してきたのはトルコの情報機関MIT。ダーイッシュなどの戦闘員がその国境を行き来しているだけでなく、シリアの侵略軍を支える兵站線がそこを通っている。また、シリアやイラクで盗掘された石油がトルコへ運び込まれていることも知られている。そうした兵站線や盗掘石油の密輸ルートを昨年9月30日から破壊しているのがロシア軍で、アメリカをはじめとする侵略勢力はそれを止めようと努力してきた。

 そうした物資の輸送はトルコでも本来は違法。そこで昨年1月にはトルコ軍の憲兵隊が摘発している。その報復として、エルドアン政権はウブラフム・アイドゥン憲兵少将、ハムザ・ジェレポグル憲兵中将、ブルハネトゥン・ジュハングログル憲兵大佐を昨年11月28日に逮捕した。

 ダーイッシュやアル・カイダ系武装集団がエルドアン政権と関係していることはアメリカのジョー・バイデン米副大統領も公の席で認めている。2014年10月2日、バイデン副大統領はハーバード大学で講演、その際にシリアにおける「戦いは長くかつ困難なものとなる。この問題を作り出したのは中東におけるアメリカの同盟国、すなわちトルコ、サウジアラビア、UAEだ」と述べ、あまりにも多くの戦闘員に国境通過を許してしまい、いたずらにISを増強させてしまったことをトルコのエルドアン大統領は後悔していたとも語っている。

 勿論、エルドアンが後悔しているはずはなく、アメリカやイスラエルという侵略勢力の重要国が抜け落ちているのだが、トルコやペルシャ湾岸産油国がシリアで戦闘を始めたということを認めている意味は小さくない。

 バイデン発言の2年前、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAはシリアの反政府軍に関する報告書を提出している。その中で反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)であり、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けていると報告した。

 西側の政府やメディアは「穏健派」という幻影を描き出し、ダーイッシュやアル・ヌスラなどを支援した。そこで、DIAはアメリカ政府が方針を変えなければ、その勢力はシリア東部にサラフ主義の支配地を作りあげると警告している。実際、その通りになった。報告書が作成された当時にDIA局長を務めていたマイケル・フリン中将はアル・ジャジーラに対し、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が行った決断によるとしている。

 エルドアン政権がシリアのアサド体制を破壊したがっている最大の理由はオスマン帝国の復活にあると言われているが、アメリカでシリア侵略を主導しているネオコン/シオニストは1992年にDPGの草稿という形で作成された世界制覇計画、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を実現することを目的にしている。1991年12月にソ連が消滅してアメリカが「唯一の超大国」になったと認識した彼らは潜在的なライバル、つまり旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどがソ連のようなライバルに成長することを防ぎ、膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようと考え、DPG草案は書き上げられた。

 ネオコンと一心同体の関係にあるイスラエルの好戦派は、ナイル川からユーフラテス川まで、地中海から東はヨルダン川までをイスラエルの領土にするという「大イスラエル構想」を持っている。地中海の東部、エジプトからギリシャのあたりまでに天然ガス田が存在すると言われ、それも狙っているようだ。ゴラン高原をイスラエルが支配しようとしている理由も石油抜きに語ることはできない。

 ゴラン高原での石油開発にはジェニー社も加わっているが、その戦略顧問としてジェイコブ・ロスチャイルドが名を連ねている。そのほか、リチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジー、ウィリアム・リチャードソン、ルパート・マードック、ラリー・サマーズ、マイケル・ステインハートなども含まれている。

 アメリカの支配層やペルシャ湾岸の産油国もアサド体制を倒すことで石油利権を拡大しようとしている。例えば、イラン、イラク、そしてシリアのラディシアへつながるパイプラインの計画は、米英が建設したバクー油田からトルコのジェイハンをつなぐパイプライン(BTC)の強力なライバルになる。

 1968年6月6日に暗殺されたロバート・ケネディ(RFK)の息子、RFKジュニアはカタールからシリア経由でトルコへ石油を運ぶパイプライン建設がアサド体制を倒す動きと関係していると指摘している。ペルシャ湾から地中海の東岸へパイプラインで運び、そこからタンカーでヨーロッパへというルートより、陸上をパイプラインでヨーロッパまでつなげた方がコストは安いのだが、そのパイプラインの建設をシリアのアサド大統領が拒否、その直後からCIAは工作を始めたとしている。

 カタールが計画したパイプラインの建設をアサドが拒否した直後、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの軍や情報機関はスンニ派に蜂起させるための工作をしたとしているが、実際のところ、スンニ派の蜂起は起きていない。そこでサラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を使った軍事侵略という形になったということだ。

 ネオコンがシリアのアサド体制を倒すと遅くとも1991年には口にしたのであり、シーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌でアメリカ、サウジアラビア、イスラエルの三カ国がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したと書いている。カタールが計画したパイプラインの問題はシリアを侵略した理由のひとつとうことだろう。

 ダーイッシュが出現するまでの流れは、フセイン体制が倒された翌年、つまり2004年にアル・カイダ系のAQIが組織され、06年1月にはAQIを中心にしていくつかの集団が集まってISIが編成され、ダーイッシュにつながったと一般に言われているが、RFKジュニアはダーイッシュを生み出した人物としてポール・ブレマーを挙げている。この人物はサダム・フセイン体制が倒された後に占領の主体になったCPAの代表で、スンニ派軍を創設、それがダーイッシュになったとしている。

 最近、ダーイッシュと最も緊密な関係にあるのはトルコとサウジアラビアだと言われている。トルコはNATO加盟国だという立場を利用、ロシアに対して強硬な姿勢を見せていたが、ここにきてアメリカからトルコがロシアと戦争を始めてもNATOはトルコ側につかないと伝えたようだ。そうした中、トルコはウクライナと軍事的な協定を結んだという。

 また、アメリカのジョン・ケリー国務長官はシリア解体を口にしている。アサド大統領の排除が難しくなっての発言だろう。この解体計画は戦争が始まった直後から言われていたこと。ダーイシュがシリア東部からイラク西部にかけての地域を支配してきた理由もシリアを分断、石油利権を奪うことにあった。アメリカはロシアに対する逆襲をこの辺から始めるつもりかもしれない。





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最終更新日  2016.02.25 04:29:23



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