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《櫻井ジャーナル》

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2016.05.21
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 例えば、新聞の同じ面に次のようなふたつのタイトルが並んでいたとする。

「トルコ大統領 実権強化へ」
「タイ軍政 強める言論弾圧」

 この新聞はタイの軍事政権に対して批判的だが、トルコ大統領に対してはそうした意思を感じない。そうした編集方針の背後に何があるのか両国の実態を考えてみよう。

 トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はサウジアラビアやアメリカの好戦派を後ろ盾とし、イスラエルとも友好的な関係にあり、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すプロジェクトに参加してきた。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュは2007年3月5日付けニューヨーカー誌で、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3カ国がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を始めたと書いているが、エルドアン政権はサウジアラビアから資金を受け取るなどその影響下にある。

 侵略部隊としてサラフ主義者/ワッハーブ派)やムスリム同胞団を中心とする人びとで編成された武装集団、つまりアル・カイダ系グループやそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が使われているのだが、そうした部隊の兵站線はトルコから延びている。

 NATO軍がアル・カイダ系武装集団を使っていることはリビアへの侵略戦争で明確になり、ムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されてからは戦闘員や武器/兵器がリビア軍の倉庫から持ち出され、トルコ経由でシリアへ運び込まれている。

 そうした工作の拠点になったのがベンガジにあるCIAの施設で、その事実をアメリカ国務省も知っていたが、黙認していた。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。

 2012年9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されているが、この大使は領事館が襲撃される前日に武器輸送の責任者だったCIAの人間と会談、襲撃の当日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている

 運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これはシリアで使われている可能性が高い。スティーブンスもこうした工作を熟知していたと考え、彼の上司、つまり国務長官だったヒラリー・クリントンも知っていたはずだ。ヒラリーが親しくしていたデイビッド・ペトレイアスは2012年11月までCIA長官であり、この線からも情報は入っていただろう。ペトレイアスの辞任はペトレアスの伝記『オール・イン』を書いたポーラ・ブロードウェルとの浮気が原因だとされている。

 シリアのアサド政権を倒すために送り込み、武器/兵器を供給している戦闘集団について2012年の段階でアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIが主力だとワシントンに報告している。

 2012年8月に作成したDIAの文書によるとアル・ヌスラはAQIの別名。ムスリム同胞団はワッハーブ派から強い影響を受け、アル・カイダ系武装集団の主力もワッハーブ派だ。つまり、シリアで政府軍と戦っているのはサウジアラビアの国教であるワッハーブ派の信徒たちだということになる。

 この報告書が作成された当時のDIA局長、マイケル・フリン中将はアル・ジャジーラの取材に対し、ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策によると語っている。アメリカ政府は「テロリスト」と戦うどころか、支援していることをDIAも認めているということだ。

 2014年11月にはドイツのDWもトルコからシリアへ戦闘員が送り込まれ、武器、食糧、衣類などの物資がトラックで供給されている事実を報じている。その大半の行き先はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ。勿論、DWもわかっている。

 イランのテレビ局プレスTVの記者だったセレナ・シムもこうした人や物資の動きを調べていたひとりで、トルコからシリアへダーイッシュの戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGO(非政府組織)のトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。そのシムは2014年10月19日に「交通事故」で死亡したが、その前日、MITから彼女はスパイ扱いされ、脅されていたという。

 こうしたメディアより前、2014年1月にトルコの憲兵隊はトルコからシリアへの違法輸送を摘発している。武器/兵器を含む物資をシリアへ運び込もうとした複数のトラックをトルコ軍のウブラフム・アイドゥン憲兵少将、ハムザ・ジェレポグル憲兵中将、そしてブルハネトゥン・ジュハングログル憲兵大佐が摘発したのだ。

 この出来事を映像付きでジュムフリイェト紙は報道したのだが、同紙のジャン・ドゥンダル編集長とアンカラ支局長のエルデム・ギュルをエルドアン政権は昨年11月26日に逮捕、その2日後には摘発した憲兵隊の幹部も拘束されている。ふたりの編集幹部は国家機密」を漏らしたという理由で懲役5年以上の判決が言い渡された。判決の直前、裁判所の前で編集長は銃撃されている。

 エルドアン大統領はイスラム色強い保守派の新聞とされるザマン紙の経営権をトルコ政府は握り、編集幹部を一新させるということもしている。エルドアン大統領は言論自体を封殺、反民主主義的な体制を樹立させようとしているのだ。

 こうした独裁体質丸出しの政策を進めているエルドアン大統領だが、ここにきて風向きが変わってきている。つまり権力の基盤が揺らいでいる。すでに軍幹部、弁護士、学者、ジャーナリストなどを大量摘発し、275名を有罪にしていたが、この判決を最高裁が4月21日に無効にしたのである。

 タイ軍が2014年5月にクーデターで倒したインラック・チナワット政権は亡命中のタクシン・チナワット元首相の傀儡で、首相だったインラックはタクシンの妹。タクシンが首相だったのは2001年から06年にかけてだが、反タクシン系新聞社の社長の自宅を家宅捜索、香港の新聞社と記者を国外追放、唯一の非タクシン系放送局と言われたiTVを自分の企業グループが呑み込むなどメディア統制、言論弾圧は露骨だった。カネの力でメディアを支配するのは巨大資本の常套手段だ。

 そうしたタクシンだが、トルコのエルドアン政権やネオ・ナチを使ったクーデターで誕生したキエフ政権などと同じように、西側メディアからは好意的に扱われてきた。理由は簡単で、アメリカの巨大資本と結びついているからだ。チナワット家はブッシュ一族と関係が深く、巨大ファンドのカーライル・グループとも結びついている。アメリカ軍が2003年3月にイラクを先制攻撃した際、タクシンが軍部や国民の意思に背いてイラクへ派兵した理由もそこにある。同じ理由から、タクシン政権に対する抗議活動が2013年に高まった際に西側のメディアはタクシンに肩入れし、タクシンの政敵殺害に沈黙していた。

 なお、昨年、バグダッドであった爆破事件については諸説あり、真相は不明だ。





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最終更新日  2016.05.21 21:31:43



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