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《櫻井ジャーナル》

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2016.06.01
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 イラクでもダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)は劣勢になり、ファルージャがイラク政府軍に奪還されそうだ。これまでダーイッシュは住民を「盾」として利用してきたが、4月の段階で飢餓状態に陥っていたと言われている。今回は特殊部隊が攻撃、一部住民は脱出に成功したようだ。

 ところで、ダーイッシュが広く知られるようになったのは2014年6月のことだろう。イラクのファルージャやモスルを制圧したのだ。1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言していたが、ダーイッシュは6月にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が配信されて名前を売った。

 2014年にファルージャを制圧しようとしていたダーイッシュに対し、アメリカの軍や情報機関は傍観していた。偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで武装集団の動きをアメリカ側は知っていたはずだが、何もしていないのだ。小型トラックのパレードは格好の攻撃目標だったはずである。ファルージャやモスルをダーイッシュが占領することを望んでいたとしか思えない。

 モスルとファルージャが制圧された当時、イラクの首相はヌーリ・アル・マリキ。イラクでは2014年4月に議会選挙があり、マリキを支えるシーア派聯合が328議席のうち157議席を獲得しているが、アメリカ政府の意向を受け、フアード・マアスーム大統領はマリキを首相に指名することを拒否、アル・アバディが9月から首相を務めている。

 マリキは選挙の前の月にサウジアラビアやカタールを反政府勢力へ資金を提供していると批判、ロシアへ接近する姿勢を明確にしていた。イラクで首相の人選をめぐって揉めている最中、ダーイッシュは名を売り始めるが、これはタグの問題。

 アメリカ軍を中心とする軍団の侵略でイラクのサダム・フセイン体制が倒された後、イラクでもアル・カイダ系の武装集団AQI(イラクのアル・カイダ)が2004年10月から活動を開始、06年10月にはAQIが中心になってISIが編成され、活動範囲をシリアへ拡大した13年4月からISISとかダーイッシュと呼ばれるようになる。この間、2012年にアメリカの情報機関や特殊部隊はヨルダン北部に設置された秘密基地で反シリア政府軍の戦闘員を育成するための訓練を始め、その中にダーイッシュのメンバーが含まれていた。。ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官は、アメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたとCNNの番組で語っている。

 アメリカ軍が戦闘集団を訓練していた2012年の8月、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は反シリア政府軍に関する報告書を作成している。それによると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。DIAによると、アル・ヌスラはAQIがシリアで活動するときに使う名称にすぎない。ISIもタグが違うだけで実態はAQIだということだろう

 アメリカ軍の情報機関DIAの局長を2012年から14年まで務めたマイケル・フリン中将は退役後、アル・ジャジーラのに対してダーイッシュの勢力が拡大したのはバラク・オバマ政権が決めた政策によると語っている。

 アル・カイダ系武装集団の歴史をさかのぼると1970年代終盤にズビグネフ・ブレジンスキーがアフガニスタンで始めた秘密工作に行き着くことは本ブログでも繰り返し、書いてきた。サラフ主義者/ワッハーブ派やムスリム同胞団を中心として集めた戦闘員をCIAが訓練、武器/兵器も供給していた。この武装集団はサウジアラビアから資金を提供されるだけでなく、麻薬の密輸で稼いでいた。

 1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックによると、アル・カイダとはCIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルで、戦闘集団ではない。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味、「データベース」の訳としても使われている。つまり、傭兵の登録リスト。雇い主のプロジェクトによってタグは変えられるが、実態は傭兵だ。

 2013年8月にダマスカスの近くが化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使用したと宣伝、NATO軍が軍事介入する口実にしようとしたが、すぐに嘘だということが発覚する、その後、リビアから持ち出された化学兵器がトルコ経由でシリアへ運び込まれたという話が伝えられている。(詳細は割愛)

 この「偽旗作戦」に失敗したアメリカ軍は2014年9月23日からダーイッシュを攻撃するとしてシリアで空爆を始めるが、その日に現地で取材していたCNNの中東特派員、アーワ・デイモンは翌日朝の放送でダーイッシュの戦闘員は空爆の前に極秘情報を入手し、攻撃の15から20日前に戦闘員は避難して住民の中に紛れ込んでいたと伝えていた。

 この空爆はシリア政府の承諾を得ずに行われたもので、単なる侵略。攻撃対象はシリアのインフラで、武器/兵器を含む物資を「誤投下」でダーイッシュへ渡していると伝えられた。その後もアメリカ軍は「擬装攻撃」を続けるが、こうしたことを快く思わない軍人もいた。そのひとりが2011年10月から15年9月まで統合参謀本部議長だったマーチン・デンプシー陸軍大将。アル・カイダ系の武装集団やそこから派生したダーイッシュを最も危険な存在だと考えていたが、バシャール・アル・アサド大統領の排除を優先しているバラク・オバマ大統領は彼の警告に耳を貸さない。そこで、デンプシー議長は2013年秋からアル・カイダ系武装集団やダーイッシュに関する情報を独断でシリア政府へ伝え始めたという。

 このデンプシーが議長を退いた直後、2015年9月30日にロシア軍が空爆を始める。この攻撃は実際にダーイッシュやアル・ヌスラなどを攻撃して戦況は一変した。シリアを侵略していた武装集団の司令部、戦闘員、武器/兵器庫だけでなく、トルコからシリアへ延びている兵站線、そして戦闘集団やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権の資金源になっている盗掘石油の関連施設や輸送車両も破壊されたためだ。

 アメリカの好戦派、サウジアラビア、トルコなどは「停戦合意」を利用して携帯型の防空システムMANPADを含む武器/兵器を大量に供給、アメリカの特殊部隊が増派、劣勢を挽回しようとしているが、目論み通りには進んでいないようだ。

 ロシア軍の戦果を見てイラク政府はロシアへの接近を再び試みる。慌てたアメリカ政府は10月20日にジョセフ・ダンフォード米統合参謀本部議長をイラクへ乗り込み、アメリカを選ぶのかロシアを選ぶのかと恫喝、イラク政府からロシアへ支援要請をしないという言質をとったとされているが、それでもロシア軍の攻撃を知ったイラク人がアメリカ軍を見る目は厳しくなった。

 イラクでは昨年10月、ダーイッシュと行動を共にしていたイスラエル軍のユシ・オウレン・シャハク大佐が拘束されたと伝えられているが、今年に入ってからイラクの治安当局は南部の都市ナジャフで「アメリカ人ジャーナリスト」を拘束、その女性はバラス・タミル・アビバというイスラエルの情報機関員だということが判明する。現地の裁判官はアメリカの圧力で釈放するように命じるが、内務大臣は拘束し続け、バグダッドへ移送するように指示する。結局、アメリカ政府の圧力で女性は釈放され、アメリカ軍が保護したというが、アメリカの信頼度が大きく低下したことは間違いなく、露骨な「八百長攻撃」は難しくなっただろう。





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最終更新日  2016.06.02 01:26:32



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