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《櫻井ジャーナル》

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2016.08.10
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8月1日にアメリカ軍はリビアのシルテに対する空爆を開始した発表された。ここはダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)が拠点にしている都市。イランでの報道によると、そのリーダーと言われているアブ・バクル・アル・バグダディが昨年10月にイラクで負傷した際、CIAとMIT(トルコの情報機関)は彼を治療のため、トルコ経由でシルテへ運んだという。それだけダーイッシュの強い影響下にある場所だということだ。

 2011年2月からリビアはアメリカ/NATO、サウジアラビアやカタールなどペルシャ湾岸産油国、イスラエルなどに先制攻撃され、10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は崩壊した。その時にカダフィが惨殺されているが、その事実をCBSのインタビュー中に知らされたヒラリー・クリントンは「来た、見た、死んだ」と口にし、喜んでいる。その姿は映像として残された。

 この侵略で地上軍として戦っていた部隊の中心はアル・カイダ系武装集団のLIFG。カダフィ体制が倒された後、その幹部はダーイッシュに加わったと主張するジャーナリストもいる。また、2012年7月に行われた選挙で成立した政府はイスラム色が濃く、ダーイッシュとつながっているとも言われていたが、最近はシルテに対する攻撃を続けているようで、状況が変化している。

 これはシリアにおけるロシア軍の空爆でアレッポをシリア政府軍が奪還しそうになっていることも関係していると見る人もいる。昨年9月30日にロシア軍が空爆を始めて以降、ダーイッシュなど侵略軍は大きなダメージを受けている。7月中旬にジョン・ケリー国務長官がロシアを訪問したことも無視できない。

 カダフィ体制が崩壊した後、リビア軍の倉庫から武器/兵器が持ち出されてトルコへ運ばれたが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、シリアへ軍事介入する口実にしようとしたと言われている。

 そうした事実をアメリカ国務省は黙認した。2009年1月から13年2月まで国務長官を務めたヒラリー・クリントンもこの工作を知っていたはず。しかも、クリントンの部下にあたるクリストファー・スティーブンス大使は2012年9月10日、CIAの武器輸送担当者と会談、その翌日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。勿論、武器はトルコ経由でシリアの侵略軍へ渡される手はずになっていた。

 その9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺された。議会が首相を指名する前日だ。その2カ月後にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリーと緊密な関係にあることで知られ、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。

 こうした工作がアル・カイダ系武装集団の増強につながることはバラク・オバマ大統領も情報機関から警告されていた。例えば、2012年8月にDIA(国防情報局)は反シリア政府軍について、主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIだとホワイトハウスへ報告している。シリアのアル・カイダ系武装集団としてアル・ヌスラが有名だが、DIAによると、アル・ヌスラはAQIの別名で、こうした集団は西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしていた。

 後にクリントンの電子メールがハッキングされるが、その中にはスティーブンス大使らが殺された事件に関する情報が含まれ、ベンガジを含む襲撃に資金を出したのはサウジアラビアのスンニ派(ワッハーブ派)だということを示す証拠をフランスとリビアの情報機関が持っているとされている。

 2014年に行われた選挙では世俗派が勝利したが、イスラム系は政権交代を認めない。新政権はリビア東部のトブルクに新たな議会を設立、アメリカ、イギリス、フランス、エジプト、アラブ首長国連邦などから支持されている。

 ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団は傭兵集団。1997年から2001年にかけてイギリスの外務大臣を務めたロビン・クックによると、これはCIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルだ。アラビア語でアル・カイダは「ベース」を意味し、「データベース」の訳語としても使われている。その仕組みを作り上げたのは、ジミー・カーター政権で大統領補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキーだ。

 こうした傭兵集団をアメリカ、イスラエル、サウジアラビアが雇っていることは広く知られているとはいうものの、具体的な証拠が出てくると、こうした国々は困るだろう。シリアでダーイッシュなどが壊滅した場合、アメリカが行ってきた「テロとの戦い」に対する批判も高まる。

 アメリカは新たなタグを作ってダーイッシュなどを処分する動きも見せているが、そうしたタグの付け替えをロシアは無視している。戦闘員の「雇い止め」は別の問題を発生させるだろう。アメリカの好戦派は自分たちが作り上げたモンスターの処分に困り始めている。東アジアへの移動は人種的な問題があって難しく、カフカスやEUへの移動だけでは解決できそうにない。

 そうしたこともあり、中東/北アフリカ侵略を主導してきたネオコンなど好戦派はシリアに対するアメリカ/NATOによる本格的攻撃を目論んでいるが、それはアメリカとロシアとの直接的な軍事衝突に発展する可能性がある。現在、通常兵器での戦いならロシアが勝つと見られているので、負けるわけにはいかないネオコンは核戦争を始めるしかない。そうした好戦派に担がれている大統領候補がヒラリー・クリントン。そうした構図の中でアメリカの好戦派は東シナ海や南シナ海で軍事的な緊張を高めてきた。それに従っているのが日本の菅直人、野田佳彦、安倍晋三の3政権である。





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最終更新日  2016.08.10 18:50:19



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