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ロシア軍は8月16日、超音速長距離爆撃機Tu-22M3を使ってシリアのアレッポ、デリゾール、イドリブを空爆、アル・カイダ系武装集団や、そこから派生した「ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)」の司令部や兵器庫を破壊したという。Tu-22M3による爆撃はこれまでも実施しているが、今回は特別の意味がある。ロシアからではなく、イランのハマダン基地からSu-34戦闘爆撃機と一緒に離陸、シリアでSu-30やSu-35と合流したというのだ。
ロシアの基地から飛び立つと約2000キロメートルを飛行しなければならないが、ハマダンからなら700キロメートルにすぎない。これだけでも大きな意味があるのだが、イラン政府が自国の基地をロシア軍に使わせたということは、それだけ両国の関係が緊密になったことを意味する。かつてヒラリー・クリントンはイランを攻撃すると口にしていたが、ハードルは高くなった。 1980年代からネオコン/シオニストやイスラエルはイラクのサダム・フセイン体制を倒すべきだと主張していた。イラクに傀儡政権を樹立させれば、ヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国でイランとシリアを分断することができると考えたからである。すでにイラクを破壊、今はシリアを侵略している。 欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めたことのあるウェズリー・クラークによると、1991年に国防次官だったポール・ウォルフォウィッツがシリア、イラン、イラクを殲滅すると口にしていたという。そうした発言の背景には、そうしたネオコンの戦略があったということだ。「アラブの春」、「民主化」、「人権」などは侵略を正当化するために掲げた中身のない看板にすぎない。 しかし、すでにロシアはシリアやイランとの関係を強め、イラクもロシアへ近づこうとしている。さらに、最近はトルコがアメリカ離れを始めてロシアへ接近している。 それに対し、サウジアラビアはイスラエルとの関係を強化し、ヨルダンでは自国の情報機関員が軍事キャンプを設置して7000名以上を訓練していると伝えられている。この訓練には、イギリスやアメリカを含む西側諸国から教官が派遣されているようだ。 現在、中東ではロシア、シリア、イランの勢力とアメリカ/NATO、ペルシャ湾岸産油国、イスラエルの勢力が対立していると言える。そうした中、ロシアは自分たちの攻撃力がアメリカを上回ることをシリアでの作戦で示し、アメリカに対する恐怖感を弱めることに成功したようだ。その結果、アメリカの支配力も低下、アメリカに従属していたはずのイラクやトルコもロシアへ近づきつつある。アメリカの支配層、特に好戦派は形勢逆転を図るため、何かを仕掛けてきそうだ。 ところで、シリアで活動してきたアル・カイダ系武装集団は「アル・ヌスラ」が有名だが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)によると、アル・ヌスラはAQIの別名。これはイラクのアル・カイダを意味する英語のイニシャルだが、アラビア語の名称は「ふたつの河の国の聖戦ベース機構」を意味している。このAQIが中心になって編成されたのがISIで、活動範囲がシリアへ拡大してからISISと呼ばれるようになった。アラビア圏で呼ばれている名称の音声に近い表記はダーイッシュだ。つまり、AQI、アル・ヌスラ、ダーイッシュは本質的に同じである。 今年7月、アル・ヌスラはファテー・アル・シャムへ名称を変更、アル・カイダと関係を断ったというが、形だけのことだろう。何しろ、アル・カイダなる武装集団は存在しないのだ。本ブログでは何度も引用しているが、1997年から2001年にかけてイギリスの外務大臣を務めたロビン・クックによると、アル・カイダはアラビア語でベースを意味し、CIAから軍事訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル、つまりデータベースにすぎない。 こうした戦闘集団はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアを中心とする勢力が使ってきた傭兵の集まりで、状況によってタグが付け替えられてきた。名称が変更され、「自由の戦士」になったり「テロリスト」になったり、また「過激派」になったり「穏健派」になったりするのは雇い主の事情による。 こうしたタグの付け替えで人びとをたぶらかし、軍事侵略を続けようとアメリカの支配層は目論んでいるようだが、ロシアは勿論、シリアにもイランにもイラクにもトルコにも通じないだろう。中国はすでに艦船を地中海に派遣したりしているが、ここにきてシリアで軍事訓練を実施することが決まったという。アメリカの好戦派がロシアや中国などに対する「世界大戦」を始めたと中国も認識したように見える。アメリカ好戦派の手先、日本に対する姿勢も厳しくなる可能性があるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016.08.18 01:39:54
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