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(その1から続く)ところで、ジョン・ケリー国務長官がイラン側と秘密裏に接触しはじめた2013年3月、シリアのアレッポでは化学兵器が使われ、シリア政府派すぐに調査を要求するという事態になっていた。西側の政府やメディアは政府軍が使ったことにしようとしたが、イスラエルのハーレツ紙は状況から反政府軍が使ったと分析、国連独立調査委員会メンバーのカーラ・デル・ポンテも反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。ロシア政府も独自に試料を分析、サリンや砲弾は「家内工業的な施設」で製造されたもので、反政府軍が使ったとする推測を公表している。いずれも説得力があった。
その5カ月後、8月21日にダマスカス郊外が化学兵器で攻撃され、西側の政府やメディアはシリア政府軍が使ったと宣伝、NATOを軍事介入させようとする。NATOが空爆し、アル・カイダ系武装集団などの傭兵部隊が地上で攻勢をかけるというリビア方式を目論んだと見られている。この攻撃は「偽旗作戦」だった可能性が高いということだ。 攻撃の直後に現地を独自に調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。例えば、攻撃が深夜、つまり午前1時15分から3時頃(現地時間)にあったとされているにもかかわらず犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずだが、明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのか・・・・・また、国連のシリア化学兵器問題真相調査団で団長を務めたアケ・セルストロームは治療状況の調査から被害者数に疑問を持ったと語っている。(PDF) この攻撃が行われる10日ほど前、反シリア政府軍がラタキアを襲撃し、200名とも500名とも言われる住人が殺され、150名以上が拉致されたと言われている。化学兵器の犠牲者を撮影したとされる映像の中に、ラタキアから連れ去られた住民が含まれているとする証言もあった。 また、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出、その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、10月に入ると「ロシア外交筋」からの情報として、ゴータで化学兵器を使ったのはサウジアラビアがヨルダン経由で送り込んだ秘密工作チームだという話が流れた。 12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。 こうした化学兵器の使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。 この化学物質を供給したのはジョージア(グルジア)のトビリシにあるアメリカの兵器に関する研究施設だとする情報も流れている。この施設を設計したのはベクテルで、問題の物質を製造や輸送にはジョージアの情報機関、ウクライナのネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)、トルコの情報機関、NATO、そしてアル・カイダ系武装集団が関わっているというのだ。 西側の政府や有力メディアの主張に対する反論が出てくる中、NATOが直接、軍事介入するという話が伝えられた。そして9月3日、地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射された。 このミサイル発射はロシアの早期警戒システムがすぐに探知、明らかにされるが、ミサイルは途中で海へ落下してしまっていた。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、事前に通告はなく、実際に攻撃は始めたのではないかと推測する人もいる。ジャミングなど何らかの手段で落とされたのではないかというのだ。 つまり、アメリカ政府はロシアとの戦争を覚悟の上で直接的な武力行使に出たのだが、失敗したのではないかということ。この推測が正しいなら、ロシアとの通常兵器による戦争でアメリカは惨敗することを意味する。そうなると、必然的に全面核戦争へ移行せざるをえなくなる。 その間、オバマ政権がサラフ主義者/ワッハーブ派などを支援していると指摘していたフリンDIA局長は2014年8月に職を解かれ、軍事力の行使に否定的だたチャック・ヘイゲル国防長官は15年2月に好戦派のアシュトン・カーターに交代、アル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を危険視していたマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は好戦的なジョセフ・ダンフォードに交代した。 オバマ政権は開戦用の陣容を整えたように見えたが、それは2015年9月末から始まったロシア軍の軍事作戦で粉砕される。ロシアは戦闘能力の高さを改めて見せつけたのだ。JCPOAにイランとP5+1が署名した2カ月後のことだ。イランを攻撃すれば、そのロシア軍と戦争になる。 それでも戦争に突入したがっている人がいるとするならば、その人は世界の破滅を願っているのか、アメリカ軍を「神の軍隊」だと妄想しているのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.02.08 00:00:33
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