|
テーマ:韓国!(16940)
カテゴリ:映画
1925年。
智異山の山の神と呼ばれる大虎を追う人々。 もっと大きい虎の皮を日本へ持ち帰りたい日本帝国軍前園(大杉漣)と リュ(チョン・ソグォン)。 日本軍の命令で虎を追うク・ギョン(チョン・マンシク)や チルグ(キム・サンホ)。 そして猟をやめていた朝鮮最高の猟師チョン・マンドク(チェ・ミンシク)と その息子ソク(ソン・ユビン)が最後に加わった... キム・ホンパ、ラ・ミラン、イ・ウヌ共演、 『新しき世界』の パク・フンジョン監督 『隻眼の虎 대호 The Tiger: An Old Hunter's Tale』(2015年)。 トラ、大虎の意味するものがあまりにも深く重く 神話に接した時のような涙がこぼれた。 (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 虎は 『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 Life of Pi』 (約14%のシーンは本物のトラを撮影した)や... 少なくとも 最近観た『ジャングル・ブック』(主人公の少年以外は全てCGで製作された)のトラ と比べると厚みがあり重みも感じられ、より本物らしく見える。 (もっと大きいスクリーンで観たら感想は変わるかしら...) リアルなので インドか中国でトラを撮影して合成したのかと思ったほどだが... 4th Creative Party によるCG。 VFXの技術がなかなか素晴らしい。 担当したチョ氏が語っている通り、 行き過ぎない擬人化ポリシーのトラは 子ども向け『ジャングル・ブック』とは相違もする価値観で 大人の鑑賞にも耐え得るCGとなっている。 チョ氏らが恐れていたのは...映画を観たティーンからの 「これは半島にいた虎ではないんじゃない? ベンガルトラなんじゃない?」という感想。 (↑全世代中、最も厳しすぎる観客!) 指摘されないように...かなり努力したそう。 アムールトラが参考にされたらしいが... リアルとフィクション、CGのあわいのさじ加減プラス 滅びてしまった半島の動物を再現する細心の計画と準備、技術が注ぎ込まれていると感じた。 同時期に公開された『ヒマラヤ』はドローン撮影が投入されてもいたが、 それより前に製作を始めていた今作にドローン撮影はないもよう。 (2015年位からドローン撮影による映像は見るようになったものの...) 創意工夫、手作りによる、木の間をわたるロープを移動するカメラで すばやい動きをとらえたらしい。 前半はほとんど木々や竹藪の陰に隠れて 大虎の姿は一部しか見えない、ミステリアスな演出。 特に「隻眼」の左目がなかなか視認されないよう、 (左目をかくした)右目中心のショットで隻眼は隠されぼやかされている趣。 (観客の視点ではこのようになるが... 虎の視点から言えば 大虎は右目しか見えないので 樹木や竹やぶの陰からいつも右目でこちらを、人間を観察している、ということに...) 大虎が幼少時母虎を殺されながら、子の命は守ってくれたマンドクを威嚇し続ける姿は 別のシーンで蝶と戯れ子猫のようにも振舞う他の子虎たちとはどこか違う、 抜きん出た意思や個性、キャラクターを表してもいる。 幼い頃から、家族を殺した相手に対しては 例え命だけは助けてくれたとしても 怒りを顕にし威嚇し、白黒はっきりさせようとする 家族思い、家族への強い思いがあらわれている。 また、決して人間の手には負えないような本性が垣間見える。 それが大人になってからは 記憶、記憶力と知性を感じさせる「人格」があらわになり、 山の神と恐れられ称えられるだけの風格に義理を守る姿も表れてくる。 自身の子虎への思いも 父同士としてマンドクに心を寄せる、思いの反映とともに。 山の神でありながら 獣を超えた知性と意思、人間のところにまで降りて来て心に寄り添う 義理をもそなえた姿が神話的。 つい反撃して襲ってしまったソクを オオカミの群れから奪い、マンドクに届ける「義理がある」から... (ここはファンタジックな気もしたが... 人間と共存共生しつつも 山の神として、また日本軍の手には決してかからない 超越的で高邁な存在感に聖性もいや増す) 大虎が吼え声を上げると 鳥たちが飛び立つ自然描写も 特別なトラとしての輪郭を強めてもいる。 闘いの後、血や水分がつきべたついて(人間なら汗をかいた後のように) 少しずつ固まった毛の変化のCGI表現、描写にも刮目した。 日本による植民地統治下とは言え 日本の命令に従い八道の山々から トラ狩りにより虎を一掃する人々。 逆らえない、従わざるを得ない植民地構造に組み込まれてしまっていたとはいえ 上からの命令に無条件に従って 大切なものを守れず消滅に加担してしまう人々と 国一番の大虎、最後の大虎を 遂に日本の手にかけさせることはなく、日本の手にかかってしまうことを拒んで 自らの手にかけつつ最期を共にすることを選んだ老猟師が対比もされる。 大虎は滅び行く国と時代(時間・歴史)のようでもあり 守るべき美や世界観のようでもあり その美に(日本の)汚い手をかけさせないため、守るために 自ら命をかけ命を捨て共に落ちて行く姿に絶望と終末、滅びの美学も感じさせる。 もちろん、マンドクも最初からそう考えていたわけではなかっただろう。 が、愛する息子ソクまでをも喪くし 失うものはもう何もない崖っぷちでの極限的な選択だったのだろうが... 一方、「飛び降りる」行為は 別の世界、別の次元への旅立ちのようにも思えた。 そこで「歴史」を閉じる(終わらせる)ことを選択しての... それもまた神話的ではある。 もう人間の手の届かないところへ、欲にまみれた俗世を離れて行ってしまったから... あまりに、 虎が象徴するものが重く、哀惜するものが大きく 涙がこぼれて仕方がなかった。 そんな大虎を狙い定めたdisgraceは峻拒して誇り高く、 美しく昇華させねばならない生命体を体現した 最後の大虎の宿命、姿だったとしても。 山の神大虎を殺してしまえば、 オオカミやイノシシが暴れ出すことになる、という猟師の危惧からは トラが自然界の調和や秩序、抽象的な概念の象徴をも表しているかのよう。 奪われて喪っていく虎が象徴するものも深く重いが... 一方で時代の変わり目という感慨も。 虎一匹のために ダイナマイトをつかって山を森林を破壊していく日本軍の姿は シャーマニズム的に聖なる虎や山の神と共存し共生していた 原初的生態系までもが人間中心の近代的価値観に駆逐されていくさまのようにも。 山を爆発させていく日本軍は 外面的には自然を破壊し 民族が守ってきたものを喪わせているが、 内面的には素朴だった民の心から自然との共生共存を より一層の近代化、 内発的ではない近代化を暴力的に押しつけ推し進めて行く様にも見える。 国土だけでなく心も侵食され侵略されているような... 虎が象徴するものと同様、 生命や自然を 精神や情緒までも破壊していく、内も外も壊し根こそぎにしていく過程のよう。 植民地化されて起こったこと、内面的にも外面的にも、の全てが トラに起こったこと、トラ狩りという出来事に象徴され凝縮もされている。 人格あり、家族を全て喪った同士、マンドクと人間の同志のような部分と 決して日本軍の蹂躙にも屈しない獣即ち自然を超越した 知恵と知性を備え、神のように風格ある部分と。 人間とけものと神のあわいにあるような超越した存在感は やはり、単に動物が狩猟され死んだという以上に 象徴し示唆するものが深く、余韻を残す。 英雄の死のように。 (たとえば 数多の独立運動のようにトラ狩りに断固として反対していたら レジスタンスとなっていたらどうだっただろうか、とまで考えてしまうほど...) ツイ・ハーク監督アンディ・ラウ主演 『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』も4th Creative Party によるVFXだったのですね... 『パイレーツ 해적:바다로 간 산적』や 『ミスターGO!미스터 고』 のDEXTER DIGITAL、デクスター・スタジオDexter Studiosと 韓国VFX/CG ツートップ感ある... 虎に吹っ飛ばされる猟師/兵士が気になって 衝撃力計算...φ(・ェ・*) 余談ですが... 『暗殺』(おもしろかったけれど、忙しくてまだReview書いていない...) 『東柱』『アガシ』『徳恵翁主』『密偵』 アン・ジェフン監督、ハン・ヘジン監督アニメーション 『そばの花、運のいい日、そして春春』 そして『大虎』など 植民地下の時代を描き、深みある映画が最近多く出ているような気も... アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督 『レヴェナント: 蘇えりし者 The Revenant』は 旧い神と新しい神が両立するようで 神を自分に都合良く使うことも 神に成り代わり神に憑依することもせず、 あるいは旧世界でも新世界でも可能な(息子の仇を討つ)復讐を完遂もせず...なあわい (熊は「神」ではない)だったが、 本作は神に等しい虎を手にかけることも出来ない一方で 主人公に寄り添う、人間的な神を救う(そして自分も、その世界から救い出す...)。 英雄の定義そのものの、神と人間の間にいる英雄たちの この世界からの脱出劇、(あの世界への)旅立ち・道行にも見える。 『新しき世界』のPrequel はなくなったもよう... 当初(2014年頃)、三部作と聞いてはいたものの。 そして今作が製作された... 朝鮮かんという銘の和菓子 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用・ 盗用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 17, 2024 07:33:26 PM
[映画] カテゴリの最新記事
|
|