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テーマ:映画と原作(83)
カテゴリ:海外文学
ご存知『ハウルの動く城』の原作本。映画を先にみてますが、どうも話に乗れず、内容も解りずからかった。他の宮崎作品などと比較してしまうのも良くないですね。原作を読んでその魅力に取り付かれると、映画への印象は激変。映画の場面を思い出しつつ読んでいると、登場人物たちの役割、城の機能、ヒロイン・ソフィーへの愛着が湧き上がりました。ラストは映画と大幅に違いましたが、原作者は映画の展開を賞賛したそうですね。原作の世界観を宮崎監督は見事に膨らまし描ききったというところでしょうか。 原作のラストでは、荒地の魔女を倒し、ソフィーの家族や登場人物がガヤガヤがとなごやかげに終わる、、というシーンもなかなか良かったです。 映画化 『ハウルの動く城』スタジオジブリ宮崎駿監督(2004秋) 原作には無かった戦争を付け加えるなど原作のストーリーを大幅に改編してあり、特に後半は原作とは全く違った展開になっている。原作者はこれを全て了承するどころか賞賛した。姉妹編の『アブダラと空飛ぶ絨毯』Castle in the Air とともに「空中の城」シリーズ名でしたが映画化決定とともに「ハウルの動く城」シリーズに変わりました。 ●登場人物たち ・ソフィーの妹たち 映画にあまり登場しない妹たちです。原作では、性格や夢、恋人?などキチンと描かれてます。帽子屋の主人ハッター氏(父)の死後、ソフィーは帽子屋を継ぎ、レティー(次女)は魔法使いフェアファックス夫人のもとで修行、マーサ(三女)はパン屋に奉公。レティーをハウルが口説いたり、マーサとハウルの弟子のマイケルが付き合ったり、妹たちの存在、役割は、結構話におおきく関わっている。 ・<荒地の魔女> ハウルを付け狙う<荒地の魔女>はインガリー王の弟ジャスティン王子と、王室づき魔法使いサリマン(サリヴァン)とハウルをつぎはぎにした人形?を作ろうとしていたらしい。前者2名はつかまって行方不明だった。さいごにハウルの首を人形に据えようと狙ってくる。 ・かかし 実は魔法使いサリマンの成れの果て。ソフィーに命を吹き込まれ動けるようになる。サリマンは王室付きの魔法使いで、<荒地の魔女>を阻止しようとしていたために魔女に呪いをかけられた。 ・犬人間(パーシヴァル) 実は魔法使いサリマンとジャスティン王子をごたまぜで作られてた。ハウルは王からジャスティン王子の捜索を依頼されていた。 ・火の悪魔カルシファー 流れ星。ハウルと<契約>し、ハウルの心臓をもらって生き続け、魔法を提供。この<契約>から解放してほしいとソフィーと取引をする。けれどカルシファーとハウルの<契約>についてはソフィーが自力で見つけなければいけない。ソフィーの呪いと同じで自分の口から説明できない。<契約>から解放してくれたらソフィーの呪い(老婆)も解いてあげると取引する。 ●何故、ソフィーは呪いをかけられたのか ソフィーの魔法の力を妬んで、ライバル意識で<荒地の魔女>が乗り込んできたと、最初の対決場面では思われましたが、実はハウルを探していた<荒地の魔女>が情報源としてパーシヴァル(犬人間にされてしまう男)の心を読んだとき、彼の心をしめていたのはレティーだった。魔女からレテイーを守ろうと「彼女はがやがや町で帽子店をやっている」とでまかせを言ったため、帽子屋にいたソフィーが呪いをかけられてしまう。 ●ソフィーの力 話しかけたモノに命を吹き込むちから。ソフィーの話しかけた帽子は飛ぶように売れ帽子屋は大繁盛。継母ファニーは左団扇で遊び歩く。「あなたをかぶった女性は大恋愛をするわ」と話しかけられた帽子を買った女性は、その言葉通りになったりする。道端に打ち捨てられていたかかしも話しかけたらピョンピョンついてくるようになる。でもソフィーはかかしを恐れずっと避けてる。花屋を開店したときも、翌日に枯れてしまわないように話しかけたら長持ちするようになり、ハウルの服を繕いながら「これで女性の心をつかむんだね」と話しかけていたら、ハウルはモテモテに。自分でやったことに気付いた頃から、ソフィーは焼餅を焼く。 ●<ハウルの城>の扉 魔法で城に見せかけ、動かしてるが、実はポートへイブンにあるハウルの古い家。台所、浴室、物置、二階のニ部屋しかない小さな家。窓からはポートへイブンという港町の風景が見える。ただし外に通じる扉には四つの行き先があり、取っ手の色によって変わる。 赤 『キングズベリーの扉』 王のいる町 青 『ポートへイブンの扉』 ハウルの古い家のある町 緑 『動く城の出口』 ソフィーが城に乗り込んだ”丘” 黒 『ウェールズの扉』ハウルの実家 姉一家の住む町 ↓ <引越し> 赤→オレンジ 『折れ谷の空き家の屋敷』 青→黄 『がやがや町』 ソフィーの生まれ育った町 引越し先 緑→紫 『動く城の出口』 サリマンの咲かせた花で一杯の<荒地> 黒 変更なし *荒地の魔女に実はポートへブンに住んでいることがばれたので、「がやがや町」のソフィーの「帽子店」を買って引越し、花屋を開業する。紫の取っ手で<荒地>から毎朝花を摘んで、黄の取っ手で「がやがや町」で花屋商売繁盛。<荒地>は魔女の裏をかいて、目と鼻の先の場所。「がやがや町」のソフィーの生家と「ハウルの家」が魔法でつながった。 ●ハウルとソフィー 映画のような、最初の出会いの空中散歩とか、ハウルは元々ソフィーを知っていたという運命的設定はありません。また、ソフィーが老婆や若い姿にいろいろ変化するというのもない。映画はふたり寄り添ったり、「ハウル!」と叫んだり よりロマンチックモードに描かれてましたね?。原作は劇的なドラマチックさは無く、がみがみソフィーおばさんと、魔法使いのくせに威厳もない冷酷でもない軽薄なハウルの、日常的やりとりが、まるで痴話げんか?のようにほのぼの~と綴られてます。 卵とベーコンの料理の様や、城中(家中)掃除する様子なども、楽しい。ドラえもんのどこでもドアのように便利な扉も魅力的。ソフィーの自信のない自分への語りかけなども共感を覚えます。ラストでハウルが「ホントは赤毛なんだね。前から思っていたんだけど、あんたは五月祭で出会った娘さんじゃない?」とか「あんたが城を去らないように家族みんなを集めてみたりしたのに」とか「こうなったら二人は末永く幸せに暮らしましたとさ、となったほうがいいんじゃない?」なんとまあロマンチックさの欠けたハウルのお言葉!(笑)でも二人は互いを見るのに一杯で周囲がいろいろ話しかけてくるのは耳に入らない、、。というくだりでなにやら幸せな気分に。(笑)色んなシーンを何度も味わいたくなる 読み返したく本です♪もう一度映画も観たくなりました。続編もよみたくなりましたし、ジョーンズの他のシリーズも読んでみたくなりました。 ●ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 彼女自身三人姉妹の長女だったそうで忙しい両親の変わりに妹たちの面倒をみる少女時代。トールキンに、大学時代学んだという貴重な体験の持ち主。娘時代に読んだ神話や昔話では男性優位な話が多くて、憤慨したそう。 彼女の女性の視点からの作品をまた読みたいです。 出版作品は40作品もあるそうです。 イギリスにはファンタジー文学の長い伝統がありますが、ファンタジーにいっそう熱い視線が注がれるようになったのは、J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』(1997)以下のシリーズが大ヒットしたおかげといえるでしょう。先輩作家であるジョーンズにも注目があつまり、イギリスでは全作品が新しい装丁で出版されなおされました。もちろん日本でも紹介が進み、ジョーンズファンもどんどん増えているようです。(訳者あとがきより抜粋) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年01月29日 19時55分45秒
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