ホントに古田って男は
古田が2000本安打を達成した。ありきたりだが本当に凄いと思うし、心からおめでとうと言いたい。しかし、記録を達成した直後、その記念のボールをスタンドに投げ入れた光景には、何度も自分の目を疑った。なんてもったいない、信じられないと思った。人は「2000本は通過点と考えているからだ」と言うが、私は違うと思う。ファンへの感謝を素直に表したのだろう。私はヤクルトファンなので、古田のことは入団当時からよーく知っている。1年目は眼鏡をかけた捕手という以外はほとんど目立たない地味な選手だった。1年目の成績は打率が.250で本塁打はたった3本だった。それでも監督推薦で1年目からオールスターに選ばれたのだが、週間プレイボーイが古田のことを「地味、地味、ああ地味」と書いていたことをしっかりと覚えている。2年目からの活躍は、正に大化けという印象だった。落合と競り合った末の首位打者獲得。そして3年目には30本塁打とセリーグ制覇。その後の活躍は誰もが知っているとおりだろう。私は一頃は、あまりに古田ばかりが評価されすぎじゃないかと思ったこともあった。シドニー五輪時の古田待望論などがそうだったが、年齢を重ねても衰えない活躍や昨年の一連の球団再編問題での古田の戦いを見ていて、やはり古田は大した男だと再認識された。初めに書いたボール投げ入れについてだが、私がファンへの感謝の行為だと思うのは、古田という男とヤクルトという球団を考えれば自然だと思う。ヤクルトは選手とファンの距離がとても近い球団だ。そのことを表した、私の心に強く残るシーンがある。95年に優勝を決めた試合で、野村監督の胴上げの後、古田らが先導して選手たちがライトスタンドへ向かって走っていった。そしてフェンスによじ登ってファンと一緒に優勝を喜んだのだった。私はヤクルトがどうしようもなく弱かったころからのファンなのだが、ヤクルトがとてもファンを大事にするチームであること、古田という男が存在することに、しばしばたまらない喜びを感じるのだ。