田舎の公立病院でも心肺停止の患者さんは結構やってくる。たいていは救急車での来院だが、蘇生する率はかなり低い。以前はDOA(Dead on Arrival【来院時死亡】)といわれた病態だったが、近年は蘇生率も上昇しCPAOA(Cardio Pulmonary Arrest on Arrival【来院時心肺停止状態】)と呼ぶようになった。ウチの蘇生率ではDOAのほうが似合っているのかもしれないが……。
原疾患は様々だが、やはり心血管系が多くしかも高齢者が格段に多い。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)やBLS(Basic Life Support)が近年各地で講習されているにもかかわらず、なかなか蘇生率の向上をみない。理由はいろいろあるだろうが、そのうちの一つは地理的条件だろうと思っている。救急車が到着するまで15分なんてこともザラだからだ。15分もあれば最低限必要な蘇生術は行えるだろう。かといって山奥に住む2人暮らしの老夫婦宅へ救急車が3分で到着なんてことはあり得ない。もちろん、こうした老夫婦がBLSなどを体得しているとも思えない。物理的にどうしようもない壁はこんな田舎では日常茶飯事なのだ。