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2012年03月31日
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銀魂二次創作SS【お祝い】<一>の続きです。



「何で急にシリアスになってんですか」
「…銀ちゃんは本当に、それでいいアルか…?」
新八の言葉に誰一人耳を貸すことはなく、まるでソファに座る僕と、僕の足元でやはり花粉の
所為で些か苦しそうに眠る定春を残して結界が張られてしまったようだと新八は思った。
「馬鹿の結界」、「思い込みの結界」、「思いつきの結界」。何と呼ぶのがふさわしいだろうか。
そんな事を考えてふと下を見ると定春の少々暖か過ぎるその皮膚の毛先に
幾つもの黄色い小粒を視認しそれが花粉の塊だと分かった新八が
手近にあった濡れ布巾でそれを拭きとってやっているところ、
「やめてぇ!!!」
と、突然実の姉の声が耳をつんざくように響き、新八は数センチ程ソファから飛び上がった。
妙は銀時と神楽からほんの少し離れた所に立っており
その両手で己の顔面を覆いつくしその場に崩れるように膝をついた。
「もう、いいの…神楽ちゃん、ありがとう。でも…もう、いいの…」
「姉御!っだけど……!」
「何コレ。何で姉上まで乗っかってんですか」
当然のように新八の声が届くことは無く、誰とも視線を合わせようとせず
俯いたままの銀時と妙の間で拳を固く握り締め、歯を食いしばる神楽がいた。
「今までずっと…隠してきた。だって…恐かったんだもの…」
「おい聞けよ人の話」
どうやら皆あちら側に行ってしまったようだと思いつつも元来の性分故にか黙って見ていることが
出来なかった新八を空気の読めない男として責めるのは余りにも酷である。
「姉御…そうじゃない!姉御は…だって、姉御は…!!」
「私もおんなじ。銀さんと同じ。ううん、銀さん以上に臆病者よ」
「お妙…」
「テメーら全員ガン無視かよ僕の事」
皆の切なげな表情の中で、新八のテンションだけがまるで
今朝の味噌汁に入っていた麩の様に浮いている。
「ずっと…気付かない振りしてた。ただ傍にいられればいいって…私っ…」
妙は一言一句、喉の奥から押し出した。
神楽が下唇を噛みながら、忙しなく妙と銀時の両方を交互に見る。
どちらも地べたに直に腰をつけ、俯いている。
しかしやがて妙が意を決した様子で、声を張り上げ銀時の名を呼んだ。
「銀さん、私…!」
立ち上がり顔を覆っていた両手は体の脇で拳を握り締め
妙が銀時の方へ一歩足を踏み出そうと体を浮かせた時
「やめろ」という銀時の制止の言葉が、驚く程静かに、だが部屋中に響き渡った。
その瞬間、出掛かっていた言葉は只の空虚な吐息となり
足は床から浮くことなく、逆にその場に張り付いてしまったようだった。
それでも妙はまだ其処にいた。済んでの所でかろうじてまだ留まっていた。
ただひたすらにその眼差しをもって訴え続けようとしたが、こちらを見ようともしない
銀時に伝わるはずもなく、やがて妙は目頭が猛烈に熱くなるのを感じた。
神楽もただ見ていることしかできなかった。
新八はまた神楽とは違う理由で、見ていることしか出来なかった。
「そう…よね、御免なさい…私…」
妙は微かに震えながら自嘲気味に笑った。他に笑う者は誰もいなかった。
妙はバツが悪そうに暫く自分の前髪を弄ったり着物の袖を握り締めたりしていたが、
「そ、そろそろ失礼します。さよならっ!!」
と言って銀時と神楽に背を向け新八の脇を通り抜け、逃げるようにその場を飛び出していった。
静まり返った万事屋に妙が階段を下りる音がやけにはっきりと聞こえた。

「いつまで続くんですかコレ」
実の姉が新八の脇を通り過ぎる際、大粒の涙が一粒新八の眼鏡に綺麗に着地し
新八はそれを丁寧に拭き取りながら問うた。しかし、銀時にも神楽にも反応は無い。
唯一定春だけが人間達への無関心を大っぴらにしながら
少し楽になった花粉の症状から、心地良い眠りについていた。
犬になりたい。これ程までに切実にそう思ったことがあったろうか。
「ッ銀ちゃんの馬鹿!!どうして、どうして…!!」
やがて神楽は堰を切ったようにまくし立てた。
ただただ静かに見つめる新八の視点から神楽の奥で未だ変わらぬ姿勢のまま、
まるで鳳仙に壁に押しつけられた時のような悲壮感を漂わせている銀時がいた。
「…れよ」
その銀時からようやく、はっきりとしない言葉の語尾のみが聞き取れた。
しかし神楽がその言葉に従う事は無かった。顔を真っ赤にして、まるで駄々をこねる赤ん坊のように
机の上にあるもの、そこらに散らかっているもの、時計やら湯のみやら、壊れると地味に困る代物も
何も関係なく神楽は銀時に上から物を投げつけて、叫び続けていた。
「銀ちゃんのバカ!バカ!バカ!バカ!バ…」
「黙れっつってんだろーが神楽ァ!!」
そのたった一度の大声に、神楽は一瞬身体を恐怖に震わせ動きを止めた。
しかしそれ以外相変わらず変化の無い銀時の様子に、投げるものが無くなった神楽は
自ら己の髪飾りを引き剥がしそれをも投げつける。
そして突然後ろを振り返り、ソファに座っていた新八の身体を丸ごと抱えて銀時に向かって投げた。
抵抗する間も叫ぶ暇すら泣く空をまった新八は銀時に受け止めてもらえるかと
思いきや華麗に交わされて、壁に激突した新八を他所に、
立ち上がった銀時は神楽の両腕を鷲掴みにし、神楽はその中でもがいた。
「だって…銀ちゃんが…」
やがて抵抗を止めた神楽は、両の目尻から涙を流して銀時を見上げた。
その伏し目がちな目に懇願するように言葉を吐いた。
「…いい加減にしろよテメーら」
先程までとは違う、凄みの利いた新八の言葉は今まるで見るに値しない残骸のように、
ガレキの中に空しく飲み込まれた。新八は、今なら名前すら明かされずに映画の中で
主人公に倒されるゾンビ達と誰よりも深く語り合えると思った。
「悪かった」
銀時は神楽の腕の拘束を解くと、自分よりも幾分以上に
小さな少女の身体を引き寄せてその後ろ髪を撫でながらそう言った。
「銀ちゃんの馬鹿…嘘つき…・」
髪飾りの中に納まっていたクセのついた髪がクルクルとはねていた。
神楽は銀時の腰に抱きついてその顔を押し付け、泣いていた。

銀時は無言で神楽をなだめながら、やがて一つの溜息をついた。
「別に泣かせたかった訳じゃねーよ。お前の事も、…お妙の事もな」
そんな言葉が神楽の頭上から突然、聞こえた。
驚きのあまり瞬時に涙の止まった神楽は天を仰いだ。
「銀ちゃん、それじゃ…」
両目を見開いてそう言うと、銀時はただ笑みを浮かべて一つ頷いた。
「銀ちゃん!!」
途端に神楽は笑顔に変わり、その輝かしいばかりの表情に泣き痕が妙に浮いて見えた。
はしゃいで飛び跳ねる神楽をやはりなだめながら銀時は、初めて新八の方を向いた。
「新八、赤飯炊いておけ」
「いや炊かねーよ?何言ってんの!?」
新八に人差し指を向けて見た事も無いような爽やかな笑顔で
そう言ってのけた銀時は、万事屋の外へと駆けて行った。



「お妙!!」
銀時は往来で大声を出した。
何処をどうやって来たのかはよく覚えていなかった。
どうやって妙を探したのかもよく分からなかったが
今何よりも重視すべきなのは、そこに彼女を見つけたという事だ。
銀時の声に気付いた妙は、咄嗟に身構え踵を翻した。
「待てお妙!!」
遍く人の間をすり抜けながら、妙の後姿を見失うまいと追った。
差は確実に縮んではいたものの、中々追いつく事は出来なかった。妙も必死だった。
ようやく追いついてその片腕を自分の手の平の内にに納めた時
人通りは何処かへ消え失せ、2人は橋の上にいた。
穏やかな清流の流れが2人の下を流れた。
妙はもじもじと気まずそうな素振りを見せながら銀時の顔を見るまいとしていた。
いや、もしかしたら自分の顔を銀時に見せたくなかったのかもしれない。
「銀さん、どうして…」
そう言いかけた時、妙は自分の身体が引き寄せられるのを感じた。
気がつけば妙は顎を銀時の肩の上に乗せ、銀時の両腕が妙の背中に巻き付いていた。
体の力が抜け、かくんと膝が折れる。銀時も同じだった。
「銀さ…」
「恐かったんだ、俺も」
自分の頭の後ろから声がした。胸の前では銀時の鼓動が感じられた。その時になってようやく妙は
自分の体が銀時と密着している事に気付いて頬を染めたが、銀時は気付いていないようだった。
「自分が傷つくのが…お前を、失うのが…お前を一人にする事が…」
そう言う銀時の、自分を抱える両腕の力が強くなったのを妙は感じた。
同時に銀時が微かに震えているのが分かった。
きっと、今この瞬間にも彼の中の恐怖は増していたのだろう。
自分が大切な人を失う事、それ以上に
大切な人を置き去りにしなければならなくなるかもしれないその時を。
この男は自分が大切な誰かを護れなかった時、壊れてしまうのだろう。
私もそうなると考えているのだろうか。妙はそう思った。
「銀さん、大丈夫よ。私はそんな柔な女じゃない」
妙はそう言って両手を銀時の後頭部に回し、その髪を撫でた。
あちこちにだらしなく飛び跳ねた髪に時折指が巻き込まれたが構わず撫でた。
「そしてあなたは、私が護る。いつまでも一緒よ」
更に妙はそう付け足した。
元来女とは男よりも強いものだ。
もし神様がいるのなら、きっとそれを証言してくれるだろう。
男には耐えられない重荷を、女に課したその理由を。
「…いいのか?」
今妙の前に銀時の顔があった。普段の見栄は一体どこへやら。
女に縋る、何とも情けない男の姿がそこにあった。
図体こそ自分の一回り以上に大きな男だったが、
まるで小さな子供を慰めているような気持ちだった。
女にはたった一つの愛情と信頼を糧に、男の全てを受け入れる忍耐と度量がある。
力比べと下半身の事情しか脳の無い男には一生できない相談であろう。
そう思った妙は何だか可笑しくなって少しだけ笑った後、銀時を表現する言葉を並べてみた。
「貧乏で、ケチで、白髪で、胡散臭くて、乱暴で、馬鹿で、
酒癖が悪くて、見栄っ張りで…フフ、キリが無いわね」
「そうだな」
いつもなら口答えの一つや二つ返ってきそうなものだが、今回ばかりはそれは
適応されなかったようだ。銀時はただ、困ったように頭をかいている。
「そんなあなただから、私は好きなのよ」
妙は微笑んで、真っ直ぐに銀時を見つめた。
妙の瞳に、少し驚いた様子の銀時が映っていた。
「趣味の悪ィ女」
銀時もそう言って笑った。
ふと冷静になると、橋の真ん中で正座をする女とその前で同じように座る自分の姿があり、
銀時は胡坐をかくように座りなおすと、片手でそっと妙の頬に触れた。
「なぁ、お妙…」
自分を真っ直ぐに見つめるその目は一体どの位奥まで自分を見ているのだろう。
そう思う程に黒く済んだその瞳には他でも無い自分がいた。
「俺は…」
銀時は其処で言葉を切った。
身体は硬直したように動かず、妙が幾ら待てども銀時が喋り出す様子も動き出す様子も無い。
だがしかし銀時は顔の筋肉を引きつらせ、何やら人知れぬ努力に励んでいる
最中の用だったので妙は黙って待っていた。しかし遂に妙から顔を背け
向こう側を向いた銀時のその口から、小さな声のような、息遣いのようなものが聞こえた。
「…ッブフ」





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最終更新日  2012年03月31日 15時56分53秒
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