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環境・平和・山・世相 コジローのあれこれ風信帖

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2007年08月21日
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 以下は、コジローが参加している「紀峰山の会」の会報(年4回発行)に連載しているコラムです。  

 

 エベレスト最高齢登頂記録...について考える

  今年5月、長野県上田市の元中学教諭、柳沢勝輔さん(71歳)が、ニュージーランドの商業公募隊の一員として世界最高峰エベレスト(中国名チョモランマ、8848m)の登頂に成功し、最高齢登頂記録を塗り替えた。

 正確には71歳2ヶ月と2日ということで、あのギネスブックもこれを正式認定したという。それ以前の記録は70歳7カ月と13日での登頂だったから、半年以上更新したことになるのだが、実はこの抜かれた記録の持ち主も日本人で神奈川県鎌倉市の荒山孝郎さんという方だった。さらにさらに、あのプロスキーヤー三浦雄一郎さんは来年、75歳での登頂に挑む予定だとか。この三浦さん、実は先の荒山さん以前に。ほぼ同じ70歳7カ月でエベレスト最高齢登頂録の持ち主だったらしい。

 ...というわけで、おいおい、元気すぎるぞ日本のご高齢登山者! というおめでたい話で済めば良いのだが、その一方で悲劇も起きている。柳沢さんが新記録に輝いた同じ頃、日本の商業公募隊に参加していた63歳の男性客が、ようやく念願の登頂は果たしたものの、帰路、8650m地点で突然座り込みそのまま死亡した。この人はエベレストに再々挑戦だったという。3度目の執念でやっと果たした積年の思い、だが奈落はそのすぐ後に黒い口を開いて待ちかまえていた。さぞ、無念だったことだろう。

 8000mの舞台で繰り広げられたなんという光と陰の対照。だが、光の側にいた柳沢さんもこの登山を振り返り、「あれほど苦しい山はなかった」「70歳を超えて登る山ではなかった」と述懐している。一方、陰の側の死因は突然死。改めて定義すれば「死に至ることが予想される疾患がなく症状の発生から24時間以内の事故や自殺でない死」ということになるのだが、低酸素の高所という環境がその引き金になった可能性は否定できない。光と陰は紙一重に近接し、もしかしたら交錯していたかもしれないのだ。

 現代のエベレスト登山の主役はガイドが引率する商業公募登山隊だという。登山客は規定の料金さえ支払えば、遠征の手続きや装備の輸送、ルート工作や荷上げなどをすべてガイドに任せ、自分は登ることだけに専念できるわけだ。コジローもかつてヒマラヤ遠征に出かけた経験がある。高度順化だけで一カ月以上かかる8000m峰などマジメな勤労者には休暇の関係でとても手が出ないから、もっぱら6000m峰を狙ったが、それでも出発前は登山許可の取得やエントリービザの申請などの外交折衝に忙殺され、さらに現地では軍隊が登山隊に派遣してくるリエゾンオフィサー(連絡将校)との意見衝突の調整に神経をすり減らし、登る前にとことん疲れ切ったことを鮮明に覚えている。これらをすべてガイドに任せて投げ出すことができたならば、海外遠征はどれほど楽になるだろう...とは、たしかに思う。

 ...だがヒマラヤはヒマラヤなのだ。ガイド付きでも高所の本質的な困難が軽減されることはない。この死亡事故を論じたある循環内科医は「60歳を過ぎて高峰に行けば死ぬ可能性が高い」と断言している。これまで38年間に日本人はエベレストに129人が146回登頂、うち7人が下山中に死亡している。若い世代も含め死亡率は約5%、つまり20人に1人は死ぬということだ。さて、エベレストには、この小さくはないリスクを引き受けて、命がけで登る価値があるのだろうか。

 この地球上に、エベレストより高い所はない。そういった意味で、そこは確かに唯一無二の場所に違いない。だが、いまやエベレストは、各国の商業公募登山隊が短い夏に殺到して520人もが登頂しており、登ること自体に自己満足以外の意義を求めることは難しい。最高齢記録ホルダーとなった柳沢さんも「頂上はシェルパらの旗が足の踏み場のないほどあり、やったぜという気持ちはなかった」と話している。

 どんな登山を指向するかは所詮個人の趣味の問題だ。コジローとしては、そんなゴミためのような頂に命がけで、しかも大枚を支払い貴重な時間を使って行く気は毛頭ないが、登る人を非難する気持ちももちろんない。皆さん、やりたいようにやればいいのだ。ただ、70歳を超えて8000mに挑める体力と気力だけは見習いたいなあ... 最近、テントを担ぐのもおっくうになっている自分自身を振り返るにつけ、つくづくそう思う。

 

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最終更新日  2007年08月21日 08時13分13秒
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