環境・平和・山・世相　コジローのあれこれ風信帖

　今日８日からイタリアのラクイラで主要国首脳会議いわゆるＧ８が開催される。オイルショックへの対策と社会主義封じ込めを目的に、フランスのジスカールデスタン大統領の呼びかけで同国ランブイエに「主要民主主義国」６ヵ国が集まり、最初の首脳会合を開いたのが１９７５年。金持ちクラブと揶揄され、新植民地主義の世界分割談合と酷評されながら（当たっていると思う）これまで続いてきたが、時代は変わった。

　世界が直面する課題は地球温暖化対策や核廃絶、金融経済など多岐にわたるが、これを仕切るにはもはや８ヵ国の力ではどうにもならない。そこでサミットと同時に拡大会合だのＭＥＦだのＧ２０だのと別の枠組みの会合を次々に同じ場所で開いて、なんとか世界の方向を指し示すって体裁を繕っているわけだ。しかし、そんな面倒なことをするくらいなら、もうＧ８なんて古くさい枠組みは廃止した方がいいし、だいいち国連という国際機関があるのだから、そこでの交渉に一本化した方がいいかもしれない。

　話は突然飛ぶが、大阪市此花区のパチンコ店が放火され、客や従業員４人が死亡、１９人が重軽傷を負う事件が起きた。 逮捕された４１歳の男は「仕事も金もなく、人生に嫌気がさした」「誰でもよいから人を殺したいと思った」と話しているという。あの秋葉原でそして茨城県の土浦市や東京の八王子市で相次いだ無差別殺傷事件と同じ構図だ。ひるがえって、この国では毎年３万人を超える人が自殺している。自らを殺すかそれとも他者を殺しそのことでやがて国家権力に殺してもらうか、追い詰められた末の究極の選択が死であることに違いはない。

　無差別殺傷事件の加害者は共通してごく普通の人間だ。そのごく普通の人間が追い詰められ、自分を追い詰めたものが何なのかわからないまま、同じ境遇の普通の人間を無差別に傷つけ殺して自らの破局の道連れとするのはやりきれない。あえて誤解を恐れずにいえば、敵をはっきり自覚し標的を定めた上で凶行に及ぶ自爆テロの方が、まだしも論理的とすらいえるのではないか。

　欧米でも銃を乱射する事件がしばしば起きている。そうした点からいえば、無差別殺傷事件は日本に限った現象ではないが、欧米の事件は銃が入手しやすいうえに軍隊や戦争の影が強く、生活に近いところで日常的に銃器や戦闘に接する社会環境が背景にあるように思う。日本のような少なくとも市民レベルでは完全に非武装化された社会で、今回のような事件が頻発することは、やはり異常といわざるを得ない。普通の人間を自死と殺人に追い詰めるシステムをこそ、問わねばならないと思うのだ。

　海外事情にそう詳しいわけではないが、ただ普通に、ごく平凡に生きることが、こんなに困難な社会というのは、世界にもそうはないのではないか。こうした生きにくさは、小泉竹中改革で加速された新自由主義路線で明らかに強まった。それは要するに、弱い者の生存基盤を掘り崩すことで強い者をより強くする施策であり、具体的には労働条件を切り下げ教育福祉を切り捨てる一方で大企業や金持ちへの減税を強行して社会的責任のくびきから解き放ち、こうして強奪的に強化された体力で資本はさらなる増殖をめざしたのだったが、周知の通り、米国初の金融危機でその目論見は頓挫した。

　かくしていま、我々が見る世界は、資本主義という自己増殖のシステムが構造的に招いた社会の破綻で充ち満ちている。経済危機、蔓延する飢餓、切り捨てられた者の凶行、そして人類全体を破滅の縁に追い込みかねない地球温暖化…　分けても経済界の発言力が専制君主のように強い日本では、欧米に比べて資本主義システムの矛盾がより鋭く現象しているというのが現代世界の構図だ。（それを許したのは、本来自分たちの利益に敵対する小泉路線に熱狂した多数有権者にほかならないといのが滑稽にして悲しいが…）

　Ｇ８は要するに、資本主義の総司令部における作戦会議とも称すべき集まりだ。こうした地球規模の深刻な破綻を克服する作戦を立案し遂行することができないとすれば、人類は生き延びるために、資本主義というシステムそのものを爆破して取り替える以外ない。元々コジローとしては、私的自己増殖だけがレゾンデートル（存在意義）である資本主義に、地球を公的に管理するのは原理的に非常に困難だと思うが、とすれば人類は資本主義と共に滅ぶしかない。資本主義というシステムが自己を変革して生き残るか、それとも滅びて交代した別のシステムが人類を救うか、もしくはいずれも時間切れで間に合わず…ということになるのか。我々は大変な時代に生きているのだと思う。

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