Dolce Vita

「ロス・タイム・ライフ」第一回。

死の直前、「人生のロスタイム」を提示された主人公が、
その与えられた時間をどう使うのか？という不思議な物語。

どんなお話になるのか、全く予想がつかなかったのですが
見終わると、まるで良く出来た短編小説を読み終わった後のようなさわやかな余韻がありました。

「現場で死ねたら、カメラマンとして本望ですよ」と言っていた春彦は
残された時間で、最高の写真を撮ろうとして走り回る。（そしてユニフォームの男達も一緒に走る）

ところが、スクープ写真を撮るのには失敗するし
途中で産気づいた妊婦さんに付き添って病院に行き
（そのとき使ったタクシーの運転手が温水洋一）
そして、自分の写真は臨場感があるけれど、
人間の命を大事にしていない、人の心を温めることの出来ない
ものでしかないことを思い知らされる。
「キミは若いからこれからいくらでも・・・」と何も知らないデスクに言われるが、彼にはもう時間がないのだ。

春彦は、最後の最後に残された時間に
自分の元を離れていった元の恋人、百合子（吹石一恵）に会いに行く。
だが勇気が持てずに会わずに電話をすると、
子供の声が。ああ、そうか、結婚したんだ・・・と寂しく「おめでとう」と言う春彦。

けれど事実は違った。
公園で楽しく遊ぶ百合子と小さな女の子。
それを遠くから写真に撮る春彦。
百合子が他の人とおしゃべりに夢中になっている間に
女の子が、春彦に話しかけてくる。

その子は４歳で、パパはいない。名前は「らいか」だという。
春彦はすぐに分かった。この子は自分の娘だ。
彼は、カメラが大好きだという女の子に
自分の持っていたライカのカメラを渡す。
「オレはもう使わないから・・・」
女の子はお礼にと、自分のブレスレットを
春彦に渡してくれた。

らいかはカメラを持って母百合子の所に戻る。
「もらったの。知らないお兄さんに」
そのカメラを見て、その贈り主が誰か気づく百合子。

春彦は、撃たれた現場に戻った。
もう時間はない。

「なあ、ロスタイムってこんなんでよかったの？
スクープ取り逃がして、知らない妊婦さん病院まで連れて行って・・・。
らいかもああやって生まれてきたのかなあ・・・。
百合子とらいか、ずっと二人で生きてきたんだよなあ・・・。
父親失格だよなあ。
なあ、オレってダメな男だったかなあ？」と春彦がつぶやくと
ホイッスルをくわえた男はにっこりして首を振った。

ライカに貰ったブレスレットをにぎって、目をつぶる春彦。

ホイッスルが鳴った。

春彦のロスタイムは終わった。

そのとき、生まれた赤ん坊の泣き声がどこかで響いた。

そして、ライカと百合子が暮らす部屋には、あの日春彦が撮ったライカと百合子の、そしてライカが撮った「パパ」の写真が飾られていた。

最後の、２枚の写真と「パパ」を家族と受け入れきっている親娘の会話（声）にホロリでしたよ 

春彦が死んだあとに響いた赤ちゃんの声は、彼の生まれ変わりでしょうか。
もしかしたら助けてあげた妊婦さんの子供なのかな？
（イエローカード一枚しか出さなかったから、無事に生まれ変われたんでしょうね）

あの不思議な審判たちは、死んでいく人たちに最後に幸福のチャンスをくれる人生の応援団なのかな、と思いました。

面白いシリーズになりそうです