テーマ:勝手に好きな歌(425)
カテゴリ:日記
「ハチのムサシは死んだのさ」というのは、平田隆夫とセルスターズが出した1972年のヒット曲。この時代独特のアレンジとコーラスがなんともいい味を出している。
歌詞ははっきり言って意味不明。ハチのムサシが太陽に挑戦して死んだという事だけ歌っている。 小学生のころ、多分海水浴か何かに家族ででかけた帰り、僕は疲れて車の中で眠くなってきていた。父が「寝ていていいから」と言うので椅子を倒してうとうとしていた。 窓の外は古い建物が並んでいて、まるで京都の町家のようだった。そして西日がフロントガラスからギラギラと射し込み周囲の風景をシルエットにしていた。そこでカーラジオから流れてきたのがこの歌である。 ぼんやりとした僕の頭の中に、鮮やかに風景が映し出された。何度もなんども太陽に挑むハチのムサシ。ついに全天を覆わんばかりの太陽に焼かれ、麦畑に落下する。麦の穂の間から恐ろしく青く、恐ろしく明るい空を見上げてムサシは死ぬのだ。場所は遠すぎて誰もたどり着けない山奥である。誰もいない山奥なのになぜか麦畑が広がっている。人間ではない何者かによる麦畑。そこには太陽とハチのムサシしか存在しないのだ。誰も看取るもののない死。そして太陽は傲慢なままに沈んでいく。夕暮れに真っ赤に燃えて…。僕は世界の終わりを幻視した。 このむやみなビジョンによって、この意味不明ソングは僕の中のナンバーワンヒットになったのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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