オーストリア航空 ウィーン研修 その4
★2日目 朝★ ヨーロッパのホテルの朝食といえば、だいたい宿泊料金に含まれていて、コンチネンタルブレックファーストというのが主流です。グランド・ホテル・ウィーンの場合は、通常の(といっても、かなりクオリティの高い)コンチネンタルブレックファーストのビュッフェに加え、ごはん・味噌汁・納豆なんかもあり、さらにタマゴ料理(これもかなりクオリティが高い)も一品ついてきます。朝食メニューに「30ユーロ」と書いてあったので、宿泊代に朝食が含まれていない場合は、この朝食だけで5,000円ぐらいすることになります。普段の朝食が0円~300円程度であることを考えると、ちょっと頭がクラッときます。なお、土・日・祝はシャンパンつきの朝食もあるようで、こちらは32ユーロになっていました。朝からシャンパンかぁ。ハイテンションで働けそうですね。 さて、朝食が済み、8時半ごろから自由行動です。18時半の夕食の再集合まで10時間あります。 ウィーンの市内、郊外共に見所がたくさんあるのですが、今回は隣国スロバキアの首都・ブラチスラバに行ってみることにします。国が違うといっても、ウィーンはオーストリアの東の端の方にあり、ブラチスラバはスロバキアの西の端の方にあるので、この2都市間の距離はとても近いのです。だいたい50キロぐらいしか離れていません。 バスでも列車でも片道70分ぐらいで行くことができます。さらに、この両都市にはいずれもドナウ川が流れているので、船で行くことも可能です。船でも所要時間は同じぐらいですが、料金はちょっと高めです。 今回は時間があまりないので、本数が多く、時間の計算が立てやすく、乗り場に行きやすく、料金もリーズナブルな列車を使うことにしました。 ブラチスラバ行きの列車はウィーン南駅から出ています。南駅へはオペラ座の前から市電のD線で10分もかからずに行けるのですが、それだと面白くないので、ホテルから南駅までの観光名所をまわりながら歩いていくことにします。 まずはオペラ座から少し南に下ったところのカールスプラッツ駅へ。ここは地下鉄3線が交わる駅なのですが、「普通、こんな場所からは入らないだろう」というような位置に、金色の装飾つきの、ちょっと凝った駅舎があります。ここは博物館になっているのですが、今日は時間がないので外観だけみてスルー。東へすすむと、こんどは左手側にチョコレート色の建物が。これが楽友協会です。ウィーン・フィルの本拠地で、ニューイヤーコンサートが開かれるのがここです。お正月のNHKで黒柳徹子が出てくるアレです。 南にはレッセル公園という広い公園があり、ブラームスの像が難しそうな顔をして座っています。その向こうには大きなドーム屋根つきのカールス教会があります。 さて、ここの角から南に曲がると、ちょっとした広場があり、その奥に、何やら大きな噴水が。噴水の向こうには、ものものしい感じの、ウィーンらしくない像が立っています。ヘルメットをかぶった兵士が、手には鎌とハンマーの描かれた盾を持っています。第2次世界大戦後に、オーストリアがナチスから解放されたときに、ソ連の占領下に入ったのですが、この像はソ連が「解放の記念」と「大戦で亡くなったソ連軍の慰霊」に建てたものです。ウィーン市民にとっては、支配者がナチスからソ連に変わるだけで、嬉しくも何ともないのですが、表面上は喜んだふりをしておかなければならないので、この像の前に盛大な噴水をとりつけました。これは、表向きは像を盛り上げる演出ですが、実は噴水の水しぶきによって、像があまり見えないようにしているという、ウィーン市民の抵抗なのです。 その像の後ろから南駅までの約1キロぐらいの間にわたって、ベルベデーレ宮殿と、その庭園があります。北側に下宮、南側に上宮があり、宮殿内部はいずれも博物館になっているのですが、今回は時間がないので、外観だけ見て、庭園を散策しながら駅に向かいます。庭園は、シェーンブルンよりははるかに狭いのですが、植木の刈り込みや、ひとつひとつの木々の下にある、楽器を演奏している美しい女性の像や、広大な芝生、花壇、噴水など、さすがに豪華です。さっきのソ連の解放記念碑を見て、暗くなった心も、また明るく晴れやかになります。 季節柄、まだまだ花壇は寂しいのですが、南側の池にさかさまに映る宮殿の姿などは、季節を問わず楽しめそうです。 庭園の南端から外に出ると、そこはもう南駅。いきなり広い道に出て、車がビュンビュン走っています。夢の世界から現実にいっきに引き戻される気分です。 とりあえずブラチスラバまでの切符を買って、ホームへ。切符の買い方はとても簡単です。窓口に並んで、私「ブラチスラバ!」駅員「One way?」私「リターン!」駅員「Same day return?」私「イエス!」駅員「14euro」 財布から20ユーロ出す。切符とおつりが返される。以上。最後は「ありがとう」を言いましょう。 さて、ウィーンからブラチスラバへ行く列車は2種類あります。北側を走る路線と、南側を走る路線で、いずれも所要時間はほぼ同じですが、ブラチスラバの到着駅が違います。北回りだと「Bratislava hlavna」、南回りだと「Bratislava Petrzalka」に到着します。着いた後で観光に便利なのはhlavna駅のほうなので、行き先がhlavnaになっている列車を選ぶようにします。なお、切符にはただ「Bratislava」と書いてあるだけなので、どっちに乗っても料金は同じなのでしょう。駅員さんにも別にどっちの駅か聞かれませんでしたし。 9:12発のPetrzalka行きを見送り、9:28発のhlavna行きに乗ります。車内にはほとんどお客さんもおらず、ゆったりと座れます。 土色の目立つ穀倉地帯のようなところを、列車は走っていきます。車掌さんが一度検札に来た以外は、特に何事もなく国境を越えてしまい、ほぼ定刻の10:37にブラチスラバに到着しました。 島国に住んでいるので、陸路で国境を越えるというのは、それだけでロマンがあるものなのですが、「シェンゲン協定」という取り決めのおかげでヨーロッパの国境越えにはロマンも何もなくなってしまいました。協定国間では、国境でのパスポートコントロールをしないので、いつ国境を越えたのかさえ分からないのです。ただ、国が変わると鉄道の管轄が変わるので、別の車掌さんが改めて検札に来ることがあります。でも、「国を越えた!」という感慨はありません。 特にかつて共産圏だった国の国境を越えるときは、国境の駅で停車して、自動小銃を持った兵士にパスポートチェックをされ、さらに隣の国の国境で同じことをして・・・という、ドキドキ感がほんの数年前までは味わえたのですが、今ではすっかり味気なくなってしまいました。便利になるのはいいことですが、旅行とは、非日常で不便なことを楽しむものなので、残念といえば残念です。 ブラチスラバに着いて、最初にすること。それは両替です。両替も、旅行における、非日常と不便さを楽しむことのひとつです。来年か再来年あたり、スロバキアもユーロを導入する可能性が高いので、「ユーロになる前に行っておきたい!」と思っていたのでした。 スロバキアの通過は、スロバキア・コルナ。日曜日なので銀行は閉まっていますが、国際列車が停まる駅なので、両替所はちゃんと営業しています。入り口に出ているレート一覧を見ると、日本円も取り扱っているようです。100円あたりのレートは、BUYが18.90コルナ。SELLが20.60コルナとなっています。2,000円出すと378コルナがもらえる計算です。 ここで、日本からわざわざ用意しておいた、とっておきの二千円札を出してみました。最近は日本でも見ることが少なくなった二千円札、果たしてスロバキアでは通用するのか・・・。窓口のお姉さんは、さすがに戸惑ったのか(?)、何やら資料の冊子のようなものをパラパラとめくりはじめましたが、やがてうなずいて、378コルナを出してくれました。やった! 使えましたよ、小渕さん。あなたの新札が! この前、会社の飲み会で出したら幹事に拒否された二千円札が、はるか異国の地で受け入れられました! 駅前には、トラムのターミナルと、バスターミナルと、タクシー乗り場があるぐらいで、寂しい感じがします。バスもトラムも、ウィーンよりも10年分ぐらい古く感じます。バスやトラムのチケットは、時間制になっているらしく、10分までの距離なら14コルナ、30分までなら18コルナだそうです。人に聞いてみると、旧市街の中心までは14コルナでいいそうです。自動販売機で買おうとしたのですが、コインが足りないので、近くのキヨスクで買いました。市内交通のチケットをタバコ屋やキヨスクで買うのは、ヨーロッパではよくあることで、こういう場合、帰りの分も含めて数枚買っておくのがポイントです。なぜなら、帰りの乗り場の近くにキヨスクがあるとは限らないからです。 で、自動販売機のほうですが、これにはちょっと文句を言わずにはいられません。チケットには、14コルナの10分券、18コルナの30分券の他に、1日券、2日券、3日券なんかもあります。3日券は210コルナです。けっこう高額です。それなのに、自動販売機はお札が使えないのです。使えるのはコインのみ。ちなみにコインは、0.5コルナ、1コルナ、2コルナ、5コルナ、10コルナの5種類で、20コルナ以上がお札です。つまり、3日券を自動販売機で買おうと思ったら、少なくとも21枚のコインをチマチマと投入しなければならないのです。めんどくさー! 次回は、ブラチスラバの旧市街散策をお届けします。